有効求人倍率は0.44倍となり、国が統計を取り始めた1963年以降で過去最低の水準となりました。
社会では景気底入れの報道もされつつありますが、求人マーケットにおいてはまだまだ求人の減少に歯止めがかかったという程度で、半年前の半数程度の求人に5倍の転職希望者が殺到するという状況が続いています。
この戦後最も厳しい労働市場の中で、日々多くの人々の困窮の声を聞いております。再就職支援の要請や相談は数百名を超えていて、メールのご返答さえも滞ってしまうようになりました。
従来までは、ご相談にいらっしゃる方にもっと案件のご提案や機会の提供ができていたのですが、この環境下ではご期待に十分にお応えできず、日々「ご案内できる案件がない」というご説明をしなくてはならないことにもどかしさを感じるばかりです。求人数は激減するも、中には大変魅力的なハイクラス求人も多数存在しているのですが、弊社が受託する求人の多くは非公開のものであり、候補となりうる方にしか情報をお伝えできないということもそのもどかしさの背景にあります。
この状況が続く中、日本の労働市場に構造的な変化が起きていると改めて感じています。
国立社会保障・人口問題研究所のサイトに掲載されている人口ピラミッドは、今後の日本の行方を視覚、知覚に訴えるものです。
少子・高齢化に加えこの景気後退とそれに伴う労働市場の悪化が急激に進んだことで、「働くことということについての新たなモデルを設計・構築すること」が急務となったといえます。
現状は、危機的状況を通り越し、「職から離れる人が新たな職につけない」という深刻な事態に陥っています。
1997年~1999年 の間の「職に就けない」という問題は、今とは異質なものでした。
揺るぎないものと信じられていた「大企業を中心とした日本的終身雇用」が突然崩れ始めたために、新たに社会に出てきた人(高校・大学の新卒生)と倒産などにより転職市場に投げ出された一部の人が困惑していた時代だったといえます。
裏を返すと、戦略コンサルタントや投資銀行、新たなベンチャー企業における「優秀な人材へのニーズ」は増加傾向にありました。
2002年~2004年の間もまた今とは違った状況でした。ネットバブルの崩壊など、ベンチャーに期待していたのにそれが崩れてしまったことに加え、世界的な企業統治、監査の方法見直しや投資基準の改定など新たなルール作りのために一時的に採用が凍結されていた時代だったといえます。同時に人材もそこまで転職市場に多く出てきたわけではなく、転職マーケットが全般的に冷え込んでいた時期でした。
しかし、現在の問題はこれまでとは大きく様相が異なります。
世界的な不況で求人が激減したことも問題なのですが、それ以上に、「大変優秀な人材が過去に例を見ないほど大量に市場に出てきて、行き場を失っている」ということ、「優秀で実績のある人材でさえ、次の就職先が決まらない」ということが重要なポイントとなっています。
中には、資本主義が生み出したあだ花のような職業と揶揄される仕事で、優秀とはいえ破格な報酬を得ていた人も多くいますが、それにしてもその年収や業界、職種を問わず、優秀で実績のあるマネジャーや経営経験者がこれほど一度に転職市場に出てきた事は過去なかったでしょう。
この状況は、日本の産業構造が「人」の面からみてもやはり脆弱であるということの表れかもしれません。
景気が悪くなればなるほど企業が外部から優秀なマネジャーやマネジメントを受け入れなくなり、そのため企業の変革や再生は進まず、結果的に組織はますます硬直化し企業業績や景気に悪影響を及ぼす。そんな悪循環を持つ社会構造であることがはっきり輪郭を現したのではないかと感じます。
いろいろなニュースが、少しずつ事態は好転していることを伝えていますが、それがおおきな流れになるのはまだ先になってしまいそうです。現在、就職先に困っている実績、実力のある人達は、次の活躍の場を見つけることができるのは少し先になってしまうと覚悟したほうがよいでしょう。
ただ、そんな中でポジティブな側面、光明が見出せることがあります。
ここ最近、ベンチャー創業や拡大に伴う経営陣強化に伴う、あるいは企業再生のフェーズでのマネジメント求人(経営者層の求人)は確実に増加傾向にあり、加えて同企業群では35歳以下のスタッフレベルからライン・マネジャー層の求人も増えているのです。限定的ではありますが、若手人材へのチャンスが増えているといえます。
過酷な経済環境、経営環境の中で、創業やなど再生チャレンジングな使命を担うビジネスリーダー/経営者の人材ニーズと合わせ、彼らとともにビジョンを共有でき、また果敢にリスクをとって高い目標に向かってまい進してゆくことができる若手人材へのニーズは明らかに高まっています。
そのような若手人材へのニーズは、すなわち彼らにとっての最良の機会となります。
「リスクを取るということとは何か」、「経営判断とは何か」を間近に体験できることは、次世代のマネジャー、マネジメントを目指す人材にとってこの上ないチャンスです。
これは、今後の日本を担う経営人材の育成という面でも社会にプラスになると思います。
こうした求人は、ハードワークであるにもかかわらず決して条件が良いとは言えない傾向にあるため敬遠されがちなのですが、実はこうした「通常できない貴重な経験」こそが、将来経営を担う際に重要となる意思決定力や判断力の源泉となるのです。蛇足ながら、若手の皆さんにはぜひこうしたチャレンジをしていただきたいと思います。
いずれにせよ、資本市場の整備と新たなルール作りが一刻も早く進むことを期待します。
そして、資本家や経営陣が正しい投資を再開すること、一日も早く経済が健康な状態に戻ることを願うばかりです。
優秀な人材や経営人材の流動を通じその一助となるべく、弊社も全力で臨みます。