転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第161回
2016.07.07

今後10年は昇進が望めない…転職して再出発すべきか?

社員数500名程度の部品メーカーで働く40歳です。アメリカの大学を卒業し、現在の会社に入社。入社時はまだ海外進出前だったのですが、2代目社長とともにアジア市場をゼロから開拓し、その後も海外事業を担当。同部署の統括をしてきました。現在の役職は海外統括部長で、年収は約1,100万円です。海外事業部門は好調で、経常利益ベースでみてもその多くを占めているのですが、初代社長時代の50代以上の役員が大半を占めており、昇給や昇進がなかなか望めません。このままでは本社の執行役員、あるいは海外子会社等の社長のポジションに就けないまま10年が過ぎてしまいそうです。もちろん社内での昇進・昇格だけが目的ではないと懸命に仕事をしてきましたが、人生の後半に向けて再設計が必要だとも思えてきました。転職をすれば、もっとやりがいのある人生設計ができるでしょうか?

Answer

現在40歳前後の方は、大学卒業時がおそらく1998年あたり。団塊の世代といわれる65歳前後のご両親を持ち、自らも団塊ジュニアと呼ばれ、人口ピラミッドが減少に転じる境目におられます。おっしゃるように上をみれば50代の方々が社内に居残っているように見えますが、下の年代からみれば、ご相談者のような40代の方が、ボリュームゾーンとして若い世代に覆いかぶさっているともいえます。また、就職観が大きく変わった葉境期に社会人になった世代で、戦後の産業を支えてきた上の世代、そんな過去のことを今更持ち出されても困る下の世代の、境目にいらっしゃるわけです。ちょうどインターネット就職が始まった黎明期の世代でもあります。

そのような世代である今回のご相談者は、上の世代のキャリアパターンを世襲してみても、同じようなキャリアの成功を望むことは難しいでしょう。下の世代から模範とみなされる先駆的な人材になるか、あるいは反面教師とされる古い世代の最後の生き残りとなるか、極めてシリアスな分岐的におられるといえます。かつ、同世代間での競争にもさらされています。あなたの会社の中で40歳前後の方がどのくらいいらっしゃるかはわかりませんが、一般的なキャリアマーケットの基準に照らすと、40代の人材が社外に出るには、それなりのハードスキル(ビジネスに関する知識やスキル)とソフトスキル(世渡り術やコミニケーション力)が求められます。それらに加え、どのような価値観で仕事をして人生を切り拓いていくのか、自らに問うて決心する力が必要になります。決められる人と、決められない人…何のために仕事をするのか、地に足をつけた考えを持っているか否かで、人生の後半は大きく変わってきます。

「転職をすれば、もっとやりがいのある人生設計ができるか?」というご質問への答えですが、とてもシンプル。「今よりやりがいのある人生設計やキャリアデザインを描けるのであれば、ぜひ転職しましょう」です。ただその際には、注意していただきたいことがあります。ご自身の「やりたいこと」「やれること」を整理して転職活動をするだけでは、過去の延長線上でしかキャリアプランを描けず、上の世代と同じ思考パターンになってしまう点です。具体的には、製品を海外で売っていた。だから会社を変わって違う製品を売る、というような転職など。じつはそれがこの変化の激しい時代にあって、最も変化に弱い、リスクが増加するキャリアパターンとなることが多いのです。

今一度、「やりたい」「やれる」ことだけではなく、ご自身にどのような「やってくれ」という採用側の声があるのか耳を傾けてみてください。求人サイトや一般の求人募集をご自分の関心だけで見ないことです。40代ともなれば、信頼できる友人、知人、メンター、あるいは長年付き合ってきたキャリアコンサルタントやサーチファームのコンサルタントなどをお持ちでしょう。それらの第三者に、ご自分の可能性を具体的に聞いてみることも解決法の一つです。思いもかけなかったような業界、職位、キャリアの描き方を提案してくれることがきっとあります。もし提案してもらえる案件がなければ何故ないのか、その理由を探ることが大事です。(案件の提案がなければ、この年代での転職はかなりシリアスです。)ご相談者の場合は、案件がないということは恐らくありません。外資、中堅企業、ベンチャー、あるいは現在より大きな規模の会社でもキャリアの可能性はあると思います。やりがいを持つことができ、ご自分と転職先の会社の両方が成長できるマッチアップは設計可能だと思いますので、ぜひお伝えした注意点を参考に、前向きに動き出してみてください。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)