転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第166回
2016.12.01

青年海外協力隊での活動後、MBA留学。この先のキャリアの可能性は?

大学卒業後、ある日系のITメーカーに就職し、法人営業として3年間勤めていました。仕事はそれなりに面白く営業成績も良かったのですが、大学時代からの研究テーマである新興国支援に携わりたい気持ちが強くなり退職。それからは青年海外協力隊とNPOに参加し、法人営業の経験を活かしつつ、各プロジェクトを進める支援をしてきました。ただ28歳になったとき、今後のキャリアのためには、やはり実際のビジネスの視点や知識がもっと必要ではないかと考え、ビジネススクールに入学。現在はMBAの取得にむけ留学中の身です。このような経歴を持つ私には、卒業後、どのようなキャリアの可能性があるのでしょうか?

Answer

新興国支援を経てMBA留学をされていますが、卒業後はキャリアチェンジをしたいと考えておられるのでしょうか? 今回は、そうご希望されていることを前提に回答させていただきます。

まず、今後のキャリアの方向性を考えることからスタートされることをお勧めします。
キャリアの方向性を考えるために、以下3点を整理してみましょう。

  1. 「やりたいこと」
  2. 「やれること」
  3. 「やってくれという声を探すこと」

1. 「やりたいこと」

もしあなたが具体的な展望をお持ちであれば、その「展望=やりたいこと」にチャレンジしてみることです。

ただ、やみくもに「やりたい」という思いだけでチャレンジするのではなく、その業界、企業、職種について情報を集めて研究し、理解を深めましょう。今はインターネットで検索するだけでも、様々な情報を得ることができます。また、その業界、職種に就いている友人、先輩、MBAの卒業生を探し、まわりにそのような方がいなければ、その仕事に就いている人を紹介してもらって話を聞いてみること。仕事内容だけではなくポジティブな面、ネガティブな面など様々な情報をインプットしたうえで、それが「本当にやりたいことか」と考えてみてください。

28歳でMBA留学をされたので、卒業のタイミングでは29~30歳。業界、職種によってはまだポテンシャルを考慮してもらえる年齢です。いわゆるMBA新卒で、フレッシュであることも味方になるでしょう。とはいえ、若さとMBA新卒だけでポテンシャルを見てくれる企業はそれほど多くありませんので、あなたの「できること」と「やりたいこと」の「接点」を見つけることが必要です。実務経験がなくても(弱くても)MBAで学んだ知識やサマーインターンで得た経験も有効です。

まだやりたいことがみえていない、漠然としている、あれもこれもやってみたい…ということでしたら、ご興味がある分野や領域で仕事をしている方(していた方)に話を聞き、調べてみるなど、同様にその分野について理解することから始めてはいかがでしょうか。前述のように、未経験の領域であればサマーインターンでトライしてみるという方法もあります。

大事なのは、「やりたいこと」はなにか、ご自分と真剣に向き合い考えることです。採用側の期待値が高く、ポテンシャルを見てくれる“MBA新卒”という立場は1度きり。卒業後に新たにスタートを切る職務によって、今後のキャリアの方向が決まっていきますので、卒業時のキャリア選択は特に大切にしたいものです。

2. 「やれること」

つまり、これまでやってきたことや得意な領域から、強みを活かせる業界/職種を探すという方法です。

あなたの場合はITメーカーでの法人営業のご経験と実績、ノンプロフィットでのご経験と成果をお持ちですので、それらを棚卸ししてみると良いですね。例えば法人営業としての実績(売上実績含む)、業界知識と経験など。また、それらのみならず「どう考え、動いてきたのか」「1人で成し遂げたこととチームや人を巻き込んでリーダーシップを発揮したこと」など、どうやって実績を創ったのかというプロセスも大事です。

ノンプロフィット時代についてもどのような(支援)業務を実施し、どのような結果につながったのか。それを具体的に棚卸ししてみると「できること/強み」が見えてきます。ご自分でも意外な気付きがあるかもしれません。

では少し具体的に、あなたの「できること/強み」を活かす方向の一例を下記に述べます。(実際のキャリアコンサルティングをお受けいただいた場合には、もっと詳しくご経歴等をお伺いし、可能性を探ることができます。以下はあくまで今回のご相談内容から推察した一例とお考えください。)

◆「やれること」・・・事業会社の「海外営業」「新興国進出事業開発(営業)」
・IT企業での法人営業力や海外(新興国)での就業経験を活かせると考えます。
・事業会社でも最近新興国への進出(現地での事業立上げなど)の求人が見られます。ただし、現地での事業立上げの実務経験が求められますので、それらがない場合は難しいでしょう。

◆「やれること」・・・コンサルティングファーム、シンクタンク
・コンサルティングファーム、シンクタンクでは「海外展開を目指す企業の支援」や「新興国へ進出する企業の支援/新興国での成長戦略支援」などをテーマにしたプロジェクトが活発に動いており、MBAへの求人需要は高いといえます。
・特に、「新興国支援」は生活経験や現地の方の価値観、考え方、商慣習への理解が必要不可欠になりますので、現地で支援したご経験は活かせるのではないでしょうか。
・コンサルタントとしてのご経験がなくても、新興国進出支援に携わったご経験があればポテンシャルをみてくれます。ただし、あなたが「新興国支援」で何をしたか、何ができるのかという「接点」は少なからず必要です。
・コンサルタントとしての素養は必ず見られますので、チャレンジする際にはしっかりと対策をとりましょう。

他にも、ベンチャー企業の国内外事業開発部門で販路開拓を行うなど、強みを活かせるところからスタートし、経営者のそばで経営実務を間近でみながら一緒に手足を動かし、その後、海外拠点の立上げや運営などに領域を広げた方もいらっしゃいます。

3. 「やってくれという声を探すこと」

求人は社会の変化や企業のニーズにより発生します。一方、求職者はどのような企業がどのような職種に募集をかけているのか、公募求人以外は自分で探すことができません。一般市場には公開されない、いわゆる「スカウト求人」が存在するからです。

「自社内にその仕事を任せられる人がいないため、外部から採用したい」「リプレイスのため社内にも極秘で採用を進めたい」などなど、様々な理由がありますが、このような求人は即戦力となる方を求めるため、公募ではなく「スカウト求人」としてエージェント(人材紹介会社、サーチファーム等)に依頼がされることがばしばあります。そのような企業のニーズや市場の動向を知るには、私たちのようなエージェントの活用も有効です。エージェントに相談することで予期せぬキャリア機会の提案があるかもしれません。

また、友人、知人、先輩、上司など身近にいらっしゃる方からお声がかかるケースもありますので、近況報告などでそれらの人脈に常にコンタクトしておくことも有効です。

繰り返しになりますが、卒業までに「やりたいことは何か」をじっくり考えてみることが、今後のキャリア構築を成功させるために一番大事なことです。MBA新卒という立場は1回きりです。次のキャリアはあなたの今後のキャリア形成の大事な礎になります。悔いのないよう、まずは「やりたいこと」をしっかり考えてみましょう。さらに「自分では気付かない可能性」を知るためにも、エージェントと相談を開始されることもお勧めします。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

大石 順子

株式会社アクシアム 
エグゼクティブ・コンサルタント

大石 順子

大学卒業後、日系消費財メーカーに14年間在籍。その後、マーケティング・コンサルティングファーム、人材育成コンサルティング会社にて、顧客視点のマーケティング(リサーチ&商品開発)、新規事業戦略立案や新商品開発、CS調査・課題解決に携わる。2005年、アクシアムに参画。自らの展望を叶え、現職へ「展職」を果たした。“転々とする転職ではなく展望ある転職=「展職」を”という理念のもと、約10年間、キャリアコンサルタントとしてハイエンド人材のキャリア形成をサポート。キャンディデートひとりひとりの展望を実現すべく、その思いに寄り添った丁寧かつ的確なコンサルティングを提供中。