転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第154回
2015.12.03

キャリアプランは持つべきですか?

海外の大学で物理学を専攻し、卒業後は銀行に就職。総合職として5年間勤務してきました。支店勤務から本店の法人金融部に移り、それなりに評価されています。同僚の中に海外のビジネススクールへ留学を予定している者がおり、私も留学について検討しているのですが、MBAを取得することとその後のキャリアプランがいまひとつ自分の中でつながりません。「とりあえずMBAに留学して考える」という同僚の意見もわかるのですが…。

というのも、このまま金融業界でキャリアを続けるべきかどうかも含め、自問自答するようになってしまったのです。ひとまず5年程度勤務をすれば、自分でもはっきりした人生のプランが見えてくるかと思いやってきましたが、このまま続けて何になるのか見えなくなり、今後どう進んでいけばいいのかわからなくなりました。MBAを取得して投資銀行やPE、ヘッジファンドなどに入り、金融のプロフェッショナルとして大成するという目的を持って留学した友人が羨ましいくらいです。やはり留学云々という前に、きちんとキャリアプランを描くべきでしょうか?

Answer

ぜひ人生に“展望”を持ちましょう。キャリアプランというと、30歳、35歳、40歳、45歳、50歳、55歳、60歳…それぞれの年齢になったとき、何をしているかという人生の設計図をイメージされるかもしれません。しかし、キャリアプランとはそのようなものではなく、5年あるいは長くても10年くらい先の将来像について考え、現実的な選択について前向きに検討することです。アップサイドとダウンサイド、好景気と不景気の場合を想定しつつ、時代がどうなるか、会社がどうなるか、ご自身がどうなるかを一度考えてみてください。もちろん不確定要素ばかりなのですが、唯一“自分のこと”すなわち“自分がどうしたいか”はご自身に委ねられており、自ら決定することができます。その決定に基づいた近い未来像を考えることこそが、現実的なキャリアプランを作ることなのです。

ただ、いつも申し上げていることですが、それらは無理に作ろうとしても意味はありません。「○○歳までに○○をしておくべき」など一般論で語られた事柄に基づき、耳学問で組み立てたプランは、ほとんど有効でないからです。かといって、とりあえず何かに没頭すれば何かが見えてくるほど、人生は簡単ではないでしょう。

いただいたご質問内容から、わからないことが5つほどあります。私がわからないということは、まだご自身も把握していらっしゃらないのかもしれません。それらをはっきりさせることができれば、今後のキャリアを考える際にきっと役立つと思います。展望を持つということは“自分自身に気付く”こと。以下の5つの質問について回答を出し、展望の糸口を見つけていきましょう。

  1. 自分は何になりたいのか?
  2. 自分は何にわくわくするのか?
  3. 銀行業務を5年間続けることができた理由は?
  4. 何か行動を起こしたり選択をしたりするとき、理由が欲しいタイプか?あるいは直感的に飛び込んでいけるタイプか?
  5. 海外の大学で物理を学んだ後、なぜ日本の銀行のキャリアを選んだのか?

現時点で銀行を辞めて転職をする場合、同業他社へはそれなりの条件で転職できると思います。ただ、それ以外の企業には売り込めるアピールポイントが少なく、将来の展望を持てていないのが懸念点です。やはり、展望を持てない人を採用する企業は少ないからです。また、このまま銀行を辞めずにいた場合、ある程度は続けられますが、銀行の中でもご自分の強みや展望を描けないままではリストラされる危険性もあります。リストラされるのは、何も成績の悪い人だけではありません。会社へのコミットが少ない人も、リストラ対象になりやすいのです。

MBA留学そのものの価値については、色々なところで述べていますので割愛させていただきますが、銀行で5年かけても将来像が見えなかったのに、MBA留学をすれば2年後にたちまち将来像が浮かび上がってくるとは思えません。MBA留学をすれば、とりあえず卒業後のキャリアのオファーは得られるでしょう。しかしそのキャリアが、本当にあなたにとって望ましいものなのかは分かりません。いますべきは、答えの先送りを止めること。自分自身を知るところから始め、ひとつひとつ、ステップをのぼりましょう。

MBA留学をして金融のプロとしてどこまでやれるか自分に挑戦するプランだってありますし、現職で自分が本当に納得できる仕事ができるまで粘る道もあります。少し未来のゴールを決められれば、現職にいる間に、その実現にむけて必要な知識・スキル・資格を得るという方法もあります。また、報酬をギブアップしてでもやりたいことができるベンチャーに行くことも、創業準備をすることもプランのひとつ。なりたいと思うなら、エンジニアになることだってできます。

選択肢が沢山あっても、自分が本当にそれを望まなければ、キャリアプランは机上の空論。まずは5年程度先のキャリアの展望をしっかり決めること、その展望を実現化するためにどうすれば良いかを考えることを実行してください。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)