欧州金融危機やウォール街でのデモ、タイでの大洪水など、国際問題が多発している中でUSツアーを行いました。訪問先では、私が日本から来ていると分かると、ほぼ全てのタクシーの運転手さんやホテルのスタッフの方、大学関係者の方々から、震災後の状況について聞かれました。今回の震災のインパクトの大きさを改めて痛感しました。
そんな中今回のツアーでは、70名を超えるMBA、LLM、MA、Ph.D の方々にお目にかかることができました。
3年前の秋の訪問時には、ニューヨークの元リーマン・ブラザーズの本社ビルの看板がバークレイズ証券になったばかりでショックを受けましたが、今回も同じ場所を訪れ、今度は欧州の金融危機を背景に改めてリーマンショックを思い返してしまいました。
例年であれば、10月になると、金融機関などを中心に企業が積極的にビジネススクールを訪問しているはずなのに、今年はその活気がまったくないという違和感のある状況でした。9.11やエンロン事件の後でもビジネススクールにリクルーターを送り込んでいた投資銀行やファンドなどが、2012年採用に向けては全くもって消極的という状態です。翻って、事業会社については例年どおりの見込みですし、戦略コンサルティングなどの採用では昨年よりも積極的な展開が予想されます。
金融機関の多くは、リーマンショックの経験を踏まえ、この金融危機の状況下ではまだ来年の採用の計画を決められずにいるところが多いのだと思われます。
さて、そのような中でMBAを2012年卒業予定の方々は、すでにインターンシップを受けた金融機関、コンサルティング業界、事業会社などから、卒業後の採用のオファーを書面や口頭でもらい、現時点ですでに承諾を出している方も数多くみられました。これは過去には全くなかったことで、極めて早い対応です。
このような異例の早い動きが生まれているのは、回答を引き延ばしてもたもたしていると、世情の変化から、オファーを取り下げられてしまうかもしれないという危機感を強く感じているからだと思われます。実際、採用側企業側の事情として、「インターンシップ経由でのオファーは出せるが、今後10月以降、新しくインタビューからオファーするかどうかは予定がたっていない。」「予算枠が未定だ」という話が多く出てきています。この声は、採用したいがためのトークやブラフ等ではなく、本音です。
この一連の現象は、今年のMBA就職戦線に大きな影響を及ぼすことになると思われます。
今年は、応募のタイミング、オファーを承諾するタイミングが極めて難しくなるでしょう。人生で一度きりのMBA卒業なのでしっかりと見極めたいところですが、オファーの有効期限について侮っているとオファーが消えてしまうという、機会損失のリスクもある難しい年となりそうです。
売り手市場であるにもかかわらず、入社先が決まっている人も、あるいはほぼ決めている人も、万が一のことを想定した活動をされているのも今年の特徴といえます。
また、私がもっとも驚いた点は、数年前から懸念されていた日本人MBAの減少傾向が、上位校の私費留学生の激減という形で、現実のものとなってしまったという点です。一部のビジネススクールでは、10名を超える日本人合格者が出ていたといわれていましたが、実際に入学したのは数名という話も聞き、その点はまだ定かではありません。しかし、今回の訪問で、上位校の私費留学生が激減しているというのは、明らかな事実となりました。
今回のツアーで判明した上位7校の日本人数は表1の通りです。そのほかのアメリカ、欧州など全地域のMBAについては、例年の日本人数調査(11月に予定)の結果を以てまたお知らせします。
表1
|
2011卒(既卒) |
2012卒(2年生) |
2013卒(1年生) |
| 全体 |
社費 |
私費 |
全体 |
社費 |
私費 |
全体 |
社費 |
私費 |
| Kellogg |
12 |
6 |
6 |
8 |
4 |
4 |
11 |
9 |
2 |
| Chicago |
8 |
3 |
5 |
7 |
1 |
6 |
2 |
2 |
0 |
| MIT |
9 |
6 |
3 |
10 |
9 |
1 |
12 |
9 |
3 |
| Harvard |
10 |
3 |
7 |
12 |
8 |
4 |
7 |
6 |
1 |
| Wharton |
20 |
11 |
9 |
7 |
5 |
2 |
4 |
3 |
1 |
| NYU |
4 |
3 |
1 |
3 |
3 |
0 |
3 |
2 |
1 |
| Columbia |
6 |
5 |
1 |
5 |
1 |
4 |
1 |
1 |
0 |
| Total |
69 |
37 |
32 |
52 |
31 |
21 |
40 |
32 |
8 |
7校の合計数が、2011年卒は69名であったものが、2013年卒は40%以上も減少し、40名となってしまっています。さらに特筆すべき点は、社費留学生が5名程度しか減少していないのに対し、私費留学生については24名も減少し8名となってしまったことです。
ビジネススクールが日本人枠を減らしたのではなく、アジア人枠が設定されており、メインチャイナ、インドなどからの応募者が増加し、合格者、さらに入学者も増加したことから、日本人が相対的に減少してしまったということが主な原因のように思われます。
日本人留学生の増加にむけた具体的な活動が必要だと痛感したツアーとなりました。