転職コラム注目企業インタビュー

オーマイグラス株式会社2013.06.14

[掲載日:2014/10/2]

オーマイグラス株式会社

渡邊

この度、オーマイグラス株式会社(以下OMG/敬称略)は、株式会社産業革新機構や既存投資家のニッセイ・キャピタル株式会社などを引受先として、総額10億7,500万円を調達されましたが、増資後のOMGが目指すビジョンや具体的な事業構想をお聞かせください。

オーマイグラス株式会社

清川氏

我々のビジネスのキーポイントが2つあります。1つ目は「日本のモノづくりで世界一を目指したい」というビジョンです。

最近の日本の大規模製造業が大変厳しい環境に置かれている中で、トップリーディングカンパニーと言う位置づけを維持している企業が少なくなってきています。数十年後には日本の人口が減少し生産性が低下してGDPランキングが7位、8位になる可能性があり、BRICS企業群にも追い上げられてしまうでしょう。そうした環境下でトップリーディングカンパニーを目指すには、改善活動や品質の良さを磨きあげてきた戦後の日本の製造業の良さを残しつつも、自動車や家電など大手製造業が築いてきたモデルではなく、もっとニッチマーケットを狙って、かつ世界市場を狙うべきと結論づけています。また、海外に留学したり勤務していると、トヨタ自動車など日の丸企業の製品が評価されていると、何かしら、日本のアイデンティティを感じたり誇らしく思えるものです。世界中にメガネのユーザーがいるわけですから、そのニッチマーケットで、小売業としてつくりだせる商品やサービス、日本の製品としてOMG:鯖江のメガネを認知、評価してもらえるようになりたいということです。

2つ目のビジョンは「小売業のオムニチャネルモデルにおいてリーディングカンパニーとして活躍していきたい」ということです。

インターネットの小売業界における役割を見てみると、やはりEコマースとなりますが、小売業界でインターネットが真の革命を起こしたとは言い切れないほど、まだまだ既存の百貨店やリアルな店舗がもっている市場やメーカーが持つ力は非常に大きく、インターネットが大きな変化を与えるには時間がかかると思っています。メガネの市場はまだまだ可能性があると考えており、これからオムニチャネルの流れが来る中で、OMGではリテール店舗の展開も検討しています。我々であれば、小売りの未来形であるオムニチャネルも追求できる素養がありますし、まさに今こそ、その時期が来たと思っています。

まずは渋谷で第一歩目となる店舗を試験的にオープンする予定ですが、将来はこうした店舗を世界の都市に展開したいと思っています。さらに「メガネ」のリテールは、非常に粗利が大きいビジネスであり、あっと言う間に、新しい企業が出て急拡大しますし、リーディンカンパニーが変遷していきます。店舗を持つことはお客様に対して非常に分かりやすさを提供する事ができ、企業側としてもお客様のニーズをダイレクトかつスピーディーに理解できるメリットがあります。またブランディング戦略の上でも非常に重要だと考えており、業界内でのプレゼンスも上げていけるのではないでしょうか。

オーマイグラス株式会社

また資金調達ができたことで、目先のキャッシュフローだけに追われることなく、長期的な視点で鯖江のメガネ、OMGのブランディングに経営資源を投入することができるようになりました。今後も成長の時期にあわせてピボットしていくと思います。

渡邊

創業時からのOMGのミッションである「鯖江を中心としたmade in Japanのメガネを世界に広げていきたい」とう思いの実現化まで、どのようなステップを考えておられますか?

清川氏

前述のとおり、OMG、鯖江のブランディングを日本に広げつつも、世界市場を目指しています。先日もシンガポールを見にいきましたが、プレイヤーは少なく、まだまだビジネスチャンスが広がっています。

まずはオムニチャネルモデルを軌道に乗せること。それと同時に、ブランディングが極めて重要な時期が来ていると思いますし、組織の発展・拡大のためにも人材採用を最優先しています。オペレーション的な課題が多い創業時期から成長の階段を何段かステップアップしてきましたし、今回はまとまった資金調達を行えたことで、今は成長のための人材採用が最も重要な時期となっています。

創業して3年で、独自のノウハウをかなり蓄積することができてきましたし、日本最大のメガネ(眼鏡)通販サイト、世界のブランド商品を扱う通販サイトになることができました。自社ブランドも持っています。今後は、これをさらに展開してユーザーを広げ、小売業の未来形であるオムニチャネルを追求し、最終的に「鯖江と言えばOMGブランド」と世界の人に認識してもらえるように、世界に広げたいと思います。

渡邊

アクシアム主催の2012年7月のトークライブでご講演いただき、その際には、起業の過程やキャリアのお考えをお聞かせいただきました。改めて、初めてOMGや清川さんのことを知る方のためにお聞かせいただきたいのですが、清川さんがStanford MBA 2011を卒業直後に起業された理由、夢を教えてください。

オーマイグラス株式会社

清川氏

就職と言うのは突き詰めて考えてみると「自分がやりたいこと」と「会社がやってほしい事」には違いが合っても、それに折合いをつけなければならない面が必ずあります。私の場合は、「自分がやりたいことが何か」が自らはっきりしていましたので、その実現に一番近い起業を選んだことになります。やりたいことを早く実現化、世の中への提供価値を常に自分で問いたいと思っていました。簡単にいえば、社会へ貢献したいということです。Stanfordで教えられたことからすれば、これほど傷んでいた日本の製造業や産業を何とかしたい、と痛切に感じたことがきっかけです。そして何よりも、楽しいかどうかを自問した時に、起業のほうが、苦労は多くても楽しいと感じました。また投資銀行やコンサルティング、PEなどで高報酬を得られることはわかっていますが、それよりも起業した経験、経営をした経験のほうが、中長期の視野で見ると市場としても価値があると直観したからです。その点は、自分で創業後は気にしたことはありませんが。そう信じたいです(笑)。

余談ですが、MBA卒業後、起業して良かったと今は思っていますが、MBAの人達にお伝えしたいのは、MBAのスキルが生きるのは会社経営全体を見ることができる、スタートアップやターンアラウンドだと思います。マーケティングや財務やM&Aだけの部分的な分野に特化したMBAなら別ですが、経営者、マネジメントリーダー、起業を考えているのであれば、MBA後すぐにスタートアップへの参画は経験からもお勧めです。

(アクシアム注:実際、アメリカで求人対象となる経験は、コンサル経験<大企業新規事業開発経験<起業経験になってきています。シリアルアントレプレナーやZERO to ONEと言われる領域でニーズが高いです。それは会社という単位で、修羅場といえるぐらいの実際の経験を積んでおくことが、机上の空論以上に経営者になった時に意味深いものだからです。)

渡邊

ベンチャー企業の経営者として、大切にしておられる考え方、言葉、揺らぐ事がない理念や信条があれば、教えてください。

清川氏

OMGを起業した時にビジョンは、考え抜いた上での決断、決心なので、どんなことが起きても自分のビジョンに対して、疑いも迷うこともありません。

ベンチャー経営は言い訳している暇はないし、ヒト、モノ、カネがすべて揃っていないところで、しかも「やることを前提」に考えなければならないことが多い。お金がないところ、人がいないところを乗り越える必要があります。そんな状況で焦っていても意味がないので、頻繁におとずれるピンチをチャンスだと捉えなおして乗り切る胆力が絶対に必要です。諦めないタフさが大事だと思いますが、ダウンサイドリスクや危機管理はもちろん重要だと思っていますし、そのリスクの種類は会社の成長とともに種類が大きく変化してきているので、それから逃れられることはありません。成長してリスクが去ったと思えば、次のリスクや課題が生じてきますので、どんどん対応を続けなくてはなりません。毎日が未知の領域の課題に遭遇することができます。

成功を信じているというよりも、自分が決めたビジョンの実現化にこれが一番、早い選択、行動を続けていると信じ続けていること、諦めないことが大事だと思います。

渡邊

OMGを成長させるためには、どんな能力、志、価値観、経験を持った人が求められますか?仲間にしたいと考えている人物像を教えてください。

清川氏

前述のように、諦めない人です。スタートアップは、ゼロワンですが、OMGはまだゼロからスタートして0.5です。1を目指して、まだまだ未知の領域を開拓しています。

会社としても成長しますので、OMGに参加するメンバーはおのずと課題山積ながらも個人の成長のチャンスも山のようにあります。

OMGのビジョンを共有してくれる人でないと、未体験領域への挑戦は楽しめないと思いますし、続けられないでしょうね。

渡邊

OMGで、入社後、活躍している人の特徴や、逆に合わない人の特徴を教えてください。能力やスキルセット以外の点で教えてください。

清川氏

オーマイグラス株式会社OMGの社員は、前職がコンサルや外資出身者も多いのですが、彼らは皆、「OMGは数字を詰める」と言っています。経験や感覚で議論しないで、徹底的に数字で議論する社風があります。外資に近いと思います。実際、私も外資金融機関勤務経験がありますが、それに近い気がします。ふわふわとした感覚で議論していたのでは議論が進展しません。

合理的な議論や数字で議論できる人や、活躍しやすい、仕事を進めやすいと思います。

逆に、言い訳が多く、原因他人論タイプの人は自分が苦しくなると思います。常に他人に問題を転化するので、自分側で問題解決ができないので、進展がなく、苦しくなってしまいます。せめて、周りの人を巻き込むような姿勢があれば、問題解決能力や、自己改革力がなくても、存在する問題は改善していく可能性があるのですが、他人のせいにして、問題を抱え込むだけでは、全く課題は放置されたままになってしまします。そんなタイプはOMGでは活躍できないとも思います。

繰り返しになりますが、まだまだ成長のために、未知の領域に挑戦している、OMGのこの時期には、なにより自発的で、意識の高い、成長意欲の強い方に参加してほしいです。

※当記事でご紹介している内容は、ご登場頂きました方の所属・役職を含め、掲載当時のものです。

Profile

清川 忠康 氏

代表取締役CEO

慶應義塾大学法学部卒業、インディアナ大学会計学修士、スタンフォード大学経営学修士(MBA Class of 2011)。 UBS証券投資銀行本部を経て、経営共創基盤に参画。経営共創基盤においては、流通・小売、広告・メディア、ヘルスケア等、幅広い業種に対して、事業再生や成長支援などをはじめとする様々なテーマのプロジェクトに従事。
スタンフォード大学在学中は、米中のスタートアップ企業の経営にも関わり、2年次在学中にミスタータディ(現:オーマイグラス)を創業し、代表取締役に就任。オーマイグラスは、福井県鯖江市のメガネを武器に日本最大級のメガネ通販サイトOh My Glassesを運営。
主な著書「スタンフォードの未来を創造する授業」(総合法令出版、2013年)
ファイナンシャルアドバイザリー、戦略コンサルティングなどの経験から、29歳で起業に至った経緯は鮮烈です。

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)