リーマンショック、世界不況を受けた後、ビジネススクールの入学審査がどのように変化したか、その変化が日本人MBA留学生数へどのように表れるのかが注目すべき点でしたが、前年と比べて多少の学生数の増減こそあるものの、総じて大きな影響は出なかったといえます。
海外MBA全校を対象とした完全調査が不可能なため、どうしても日本人学生数が不明な学校・年次が発生してしまいます。そこで本年度は、調査開始から継続的に日本人数が判明している学校から主な10校を対象に、2005年以降の推移を別表に抜き出して考察してみました。
特に、MBA求人が活発であった2005年から2007年あたりまでのアドミッションと、景気後退の起因となったサブプライム問題以降のアドミッションの結果が、日本人MBA数にどのように影響しているかに注目してみます。
日本人MBA需要の高かった時期2007年に審査が行われた2009年卒の総数104名に比べ、世界景気と日本経済がともに悪化した2009年に審査が行われ、今年入学した2011年卒は81名となり、20%も減少しています。これら10校は概ねトップスクールとして様々なランキングに登場する学校ですが、その中で日本人数が減少したということには注目しておくべきと思います。景気の悪かった2003年の審査、すなわち2005年卒ですら87名であったので、それ以上に減少したことも確認できました。
また、表2の中で、学校別の全体数、私費留学生数の割合についても考察した結果、Harvard, Columbia, Chicago においては、2005年以降の合計で私費が50%を超えていることが判明しました。1990年初頭までは企業派遣が主流で、私費が10%程度であったことを考えると隔世の感があります。その他の学校においても、全体数に対する私費学生の割合を調査し、その推移を考察できれば、個別の学校の方針も見えてくるものと思われます。
MBAに派遣するに際に上位校へ送り込みたい日本企業、それに対して、私費留学生の割合を伸ばしてきた上位校。結果的に、企業派遣生の留学先の学校は広がってきたという構図が、今回の調査でほんの少し滲み出てきたように思われます。
通常、ビジネススクールの学生を選ぶ側であるアドミッションと、採用企業に学生を売り込もうとするキャリアマネジメントの両者の思惑は、(それぞれの学校内でも一致していないこともあるものの)総じて「学校として優秀な学生に入学してもらい、卒業時にはしっかりと就職し、その後も活躍してもらう。その就職先が優良企業であればあるほど望ましい。」という点で一致します。それにより学校の評判は上がり、さらに学生の質・人数とも増加するからです。
そのため、どの学校も就職先については懸命に開拓しようとしていますが、昨年私がアメリカと欧州で学校関係者から聞いた話では、学校として「企業派遣生を入学させれば、卒業後復職するので就職率の確保になる。私費留学生は、不景気の時には就職率を下げるかもしれないので、できるだけ企業派遣生に入学してもらう。」という話でした。
また、「近年多くの中国人留学生に入学してもらったが、2009年卒は就職できない同学生が増えてしまい、就職率が低下してしまった。2011年生はBRICsからの留学生の採用には注意したい。」という意見などもありました。(今年は日本にいるためヒアリングできておりませんが、一年が経過し、これらのご意見はさらに変化しているかもしれません。)
これらの話が一部の学校の意見であったのか、全体を通じての意見であったのかは、残念ながら何とも申せません。中国からの留学生数の話もその推移を調べる必要があるため、この調査結果では結論付けることはできません。ただ、少なくとも上位校では、不景気になったからといって企業派遣生で就職率の確保を狙うということは考えておらず、逆に私費学生を増やそうとしているように思えます。
実際に、前述の10校の合計を年次別に見ると、私費学生の数は2005年の合計が36名から2011年の46名へと10名も増加しており、私費学生の割合で比べても、41%から57%に跳ね上がっています。
「今後、私費留学生の割合がどの程度まで拡大するのか。」
「景気が好転する来年の入学審査、2010年の就職事情がどうなるのか。」
今後の動向に注目したいと思います。