イベントジョブフェア

海外大学院合格者 ジョブフェア2011 開催リポート2011.07.15

アクシアムでは、本年度、私費で海外の大学院にご留学される方々を対象とした「海外大学院合格者 ジョブフェア 2011」を開催いたしました。

当日は留学を目前に控えたMBA、MA、MS、LLMの合格者の皆様と、MBAをはじめとした海外留学生の採用をお考えの、外資系・日系著名企業16社が参加され、大変活気のあるイベントとなりました。

2011年 参加企業一覧

アマゾン ジャパン株式会社

イーソリューションズ株式会社

ウォルマート・ジャパン

J.P.モルガン

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社

株式会社 ドリームインキュベータ

日本イーライリリー株式会社

日本GE株式会社

日本マイクロソフト株式会社

バークレイズ・キャピタル証券株式会社

フィリップ モリス ジャパン株式会社

株式会社ボストン・コンサルティング・グループ

UBS証券株式会社

ユニリーバ・ジャパン株式会社

楽天株式会社

ロゼッタストーン・ジャパン 株式会社

※五十音順

開催のご挨拶

◆株式会社アクシアム/代表取締役・キャリアコンサルタント 渡邊光章

海外大学院合格者 ジョブフェア2011 開催リポート本日は、MBAやロースクールなど海外大学院に合格された方にお集まりいただきましたが、3.11の大震災があり、今年は留学する方が激減するのではないかという声もあった中、昨年以上に多くの方にご参加いただき、困難にめげずに留学に向かわれることを心から嬉しく思います。皆さんが、海外で多くを学び、今後の日本を担う人材となって戻ってこられることを切に願っております。

今年は、本ジョブフェアに参加申込みをいただいた方の内訳を見ると、米国への留学予定者の数を米国以外のアジアやヨーロッパへの留学予定者数が上回った初めての年となりました。

また、参画企業数については、2009年にリーマンショックで7社に減ってしまっていたのが今年は16社に急増するなど、昨年までとは状況が大きく変わってきたと言えます。

このほどの震災以降、求人がどう変わったか、あるいは変わっていくかなど、皆さんも気になるところかと思いますが、求人の数は全く減っていません。MBAホルダーを求めるニーズ、次世代リーダーを探す企業など、むしろ増えているかもしれません。1年先2年先もきっとこの傾向は続くと思われますので、皆さんもどうかアンテナを広く張って、いろいろな求人に耳を傾けていただければと思います。

この後、皆様の留学成功を祈念して、海外留学の先輩でもあるイーソリューションズ株式会社代表の佐々木 経世様からお話をいただきます。 佐々木さんは80年代にMITに留学されていますが、当時は珍しい私費による留学でした。佐々木さんは当時から今日まで、一貫して「社会のこの問題は本質的にどこがおかしいのか、それを考えて解決していきたい」とおっしゃっています。今年の3月、大地震の直前には、「ソーシャル・イノベーション」というテーマでの弊社主催のキャリアフォーラムでも講演いただきましたが、このほど、東日本大震災復興構想会議検討部会の専門委員に選ばれています。

皆さんも海外に留学されると、周囲から必ず日本の復興について聞かれることになると思います。そんな時は、本日の佐々木さんのお話も参考に、日本の復興やソーシャル・イノベーションについてしっかりと説明してあげてください。

MBAホルダーの方々がどんどん経営者として活躍される時代になってきましたが、海外留学は単なる就職やキャリアアップが目的ではなく、そもそもより豊かな人生を送るためのものだと思います。その、皆さんの人生をより豊かにするための新しい一歩を、ぜひ勇気を持って踏み出していただければと思います。

壮行特別講演

海外大学院合格者 ジョブフェア2011 開催リポート

皆さん、おめでとうございます。

この大変な時に海外留学に出るのは、素晴らしいことだと思います。

今、日本はすごく注目されています。そんな中、皆さんもいろんな思いを持って留学されると思うのですが、この時期、皆さんの気持ちは、普段より一層海外の人たちにも刺さっていくと思います。

私は、「技術屋の狭い考え方を変え、広い視野を持たなければいけない」と思って留学したので、ほんとうにいろんなことを貪欲に勉強しました。ファイナンスも経済学も知らなかったので懸命に学びましたが、「問題解決」ということについても、ずいぶん学びました。トータルでものを見ていくとか、総合的に考えるということなのですが、それが今の私に役立っています。

当時から社会の役に立ちたいなと思っていましたが、その思いがだんだん大きくなって、今の会社を作るに至っています。 問題の本質をとらえ、総合的に見て、社会との関係を考えながら解決していくということをやってきているのですが、本日は、そうした私がやってきたことを少しばかりご紹介したいと思います。

また、現在、国の震災復興構想会議検討部会の専門委員にも選んでいただいているので、そこでやっていることや考えていることも少しお話したいと思います。

1. チーム マイナス6%

  • 「クールビズ」に代表される二酸化炭素削減を目的とした国民運動
  • 従来の国民運動とは異なる運動で、現在3万5千社を超える法人、300万人を超える個人がチーム員となり、大きな成功を収めている。

この国民運動の「作戦」は、イーソリューションズが作りました。

従来の国民運動は、「目的が組織を作ることで終わってしまう」、「国が方針を発表するだけで企業・国民が自主的に動くと思っていた」、「年度が変わると運動に継続性・一貫性がなくなる」、「メッセージ・情報が多すぎるために国民にポイントが理解されにくい」など問題がありました。

この問題の全体像をとらえ、「国」、「企業」、「企業の個別啓発活動」、「国民」などがどう連関しているかを明らかにし、課題を整理しました。すると、 「(個別企業が発する)メッセージが多様でタイミングがバラバラ」、「だから、意識は高いが行動に至らない」などの関係性も見えてきました。

そこで、「実施本部」というものを作り、集中キャンペーンを実施して施策のタイミングを同期し、取り組みも6つに絞って展開しました。そして、それをフォローする企業がつながって連鎖反応を起こして行ったのです。

この運動は今も続いていて、名前は「チャレンジ25」に変わってきていますが、「クールビズ」として名前を覚えられ、当時、大企業81社のCEOにも自らクールビズを実践していただくなどで啓発活動を行い、連鎖反応を作りました。 そして現在、3万5千社が参加する国民運動と発展するまでになり、成功を収めたのです。

なお、今、この「クールビズ」の基盤があったために、この電力不足の解決、節電が可能になると言われています。

当時、28億円という大きな予算を使いましたが、広告効果や経済波及効果はそれ以上に大きいものでした。 これは海外からも注目され、クールビズをアジアから世界に広げようという動きにまで発展しました。「クールアジア2006」というイベントには、当時あまり仲の良くなかった中国や韓国の首脳も参加するなどしました。

このプロジェクトは、どうにかして仕掛けていきたいと思い、どうやったらうまくいくか国の人と作戦を練り、多くの人の共感を得ることができたので、成功したのだと思います。

2. フード・アクション・ニッポン

その後それ以外の国民運動のアドバイスも求められるようになり、新たに手伝ったうちの一つが、この”FOOD ACTION NIPPON”です。 日本の食料自給率低下は、様々問題やリスクを抱えています。国家安全保障の観点からもこれを何とかしなければいけないということで、その対応をしています。

  • “FOOD ACTION NIPPON” は、農林水産省が平成20年度より食料自給率向上に向けて推進している国民運動。平成21年度、イーソリューションズは運動全体の効果測定事業を受注し、実施。
  • 日本の食料自給率は先進国の中でもかなり低く、カロリーベースで41%となっている。輸入に依存する部分が大きすぎることは、安全保障上問題がある。
    (例)ロシア禁輸政策(干ばつ)による小麦の価格上昇、オーストラリアの洪水による小麦の質低下、残留農薬による困難な食糧確保、燃料高騰による生産(台湾漁船)への影響で魚が高騰、投機マネーによるカカオ豆の高騰、穀物運賃の急激な上昇など

ここでも、その問題点がどこにあるのかということを整理し、全体像をとらえ、課題のメカニズムを明らかにすることをしていきました。これは、留学して以降、ずっと繰り返しやってきていることです。

3. ビジネスジェット

ビジネスジェットが日本で普及していないことの何が問題かというと、実は、ビジネスジェット関連市場を逃しているということではなく、ビジネスジェットを利用している米国企業の経営者が日本を飛び越して中国にいってしまう、あるいはヨーロッパの企業の経営者が中国まで来るのに日本に来なくなってしまっているということです。

  • ビジネスジェットは、「移動時間短縮」、「発着時間自由」、「セキュリティ・プライバシーの確保」などの面から欧米では欠くことのできない必須のビジネスツールとして広く活用されている。
  • その経済効果は、[1]ビジネスジェット関連市場の拡大(1-8兆円) と[2]利用企業の売り上げ増加(S&P500社で、ビジネスジェットの保有の有無で成長率に大きな差) がある。ビジネス上重要な経営のスピードを上げる重要な役割を果たすものであり、単なるぜいたく品とは異なる。
  • 保有台数は米国:17,905機、欧州:3959機、中国:898機(5000機まで増やす計画)、日本:55機 であり、運航回数もNY:22万回、ロンドン:4.7万回、香港0.7万回、日本:0.4万回 となっていて、日本が極めて少ない。

この問題が日本の経済にじわじわ、そして大きく影響を与えていて問題となっています。

アジアの新興国ではビジネスジェットを国の成長戦略の重要インフラとし、その整備に力を入れているのです。

例えば、香港、シンガポールでは24時間いつでも発着、当日に予約でき、ターミナルから機体に乗るまで数分しかかからず、とても利便性が良いインフラと制度になっています。

ところが、日本では発着の許可にも7日かかるなどそのインフラや制度が整っておらず、世界各国のビジネスジェットを利用するCEOが、日本を超えてシンガポールに行ってしまう、あるいは中国まで来るが日本に足を延ばさないという現象が起きているのです。これがじわじわと日本経済の首を締め始めています。

そこで昨年、制度を改正すべくここに提言しました。現在、日本ももっとビジネスジェット発着陸がしやすくなるよう、世界標準に合わせるべく検討が行われ、改正が進められているところです。

4. 日本観光産業の振興

本日お話しているのは、あまり教科書には載っていないようなお話です。皆さんの問題意識に少しでも残ってくれたら、あるいは皆さんが問題を感じて、そして解決していこうという気になってくれたらいいなと思いお話しています。観光もその一つです。
観光産業が発達しているフランスでは、年間8000万人以上、スペインでもアメリカでも5-6000万人以上の観光客を招いているのに、日本には7-800万人くらいしか来ていないんですね。
これは、産業としての経済効果ということはもとより、日本を好きになってもらうことで国家安全保障につなげるということも重要なのですが、日本はそれができていないのです。

  • 日本は豊富な観光資源:観る・買う・食べる、交通、安心、文化・芸術 を有している
  • これだけ魅力のある国でありながら、観光のインフラが十分に整っていなく、海外からの観光客を取り込めていない。
  • 中国人観光客の増加は著しく、2010年から15年かけて5000万人から1億人/年に増えると言われているが、その観光客がもたらす経済効果は(一人10万円消費すると)10兆円単位になる。これをどれだけ取り込めるかはとても大きな課題となっている。
  • そのために、日本の魅力を伝えられていないという課題を解決していく必要がある。

こうした背景から、日本の観光産業の振興のための施策を考えました。

その一つとして、映画による観光地魅力の認知向上があり、効果をあげています。北海道を舞台とした中国の恋愛ドラマなのですが、これがとてもヒットし、北海道に観光客がどっと訪れたという例をご紹介します。

実際、世界一の観光国フランスでは、観光庁が有名映画監督を起用したストーリーのある動画(ショートムービー)を作成し、フランスの観光地・ライフスタイルを訴求するなどしていますが、日本はそれに比べると十分な施策ができていません。「直観的な魅力の訴求不足」、「映画等の影響力のあるコンテンツの活用不足」でなどの問題があるのです。

そこで、この問題を解決すべく、観光業の全体をどのように見ていくかを考え、課題のメカニズムを明らかにし、やはり全体最適な事業計画を策定し、観光庁に提言しています。

そしてさらには、日中友好映画週間を開催するなど、政治的な日中友好にも一役買っています。

これも同じく、全体像をとらえ、それをいろいろな人やチーム全体で共有しながら解決策を考えることで、これまでにない有効な施策がつくられていったのです。

5. 新型インフルエンザ(H5N1/強毒性)

もうひとつ、国家的課題というべき問題をご紹介します。新型インフルエンザについてですが、2年前に流行ったものとは違う、強毒性と呼ばれるものです。

  • 昨年流行した新型インフルエンザは弱毒生だったが、今後、強毒性の新型インフルエンザが流行する可能性がある。
  • 強毒性のインフルエンザが流行すると、かなり深刻な事態になると予測される。
  • アメリカでは、流行した際のシミュレーションもしっかり行われ、国家レベルで十分な対策が行われているが、日本では十分な対策がなされていない。
  • シミュレーションでは、(水際)対策をすることによって、感染を完全に抑えることはできないものの感染者数の若干の低減と感染ピークを遅らせることができ、一定の効果があると予測される。
  • そして、水際対策で流行のスピードを遅らせ、稼いだ時間でワクチンを作り感染者数を大幅に減らすという方策以外に有益な策はない。これは、世界中で、国家安全保障レベルの話として対策されている。

現状、日本ではこの水際対策レベルでしか対策がされておらず、国家レベルの話での対策という意識が希薄です。もっと(米国同様)しっかりと対策をする必要があると考え、提言しています。
具体的には、かなりワクチンの供給スピードを上げなくてはいけません。おおよそ6カ月かかると言われるこのスピードを上げなくてはいけないため、世界各国はその対策をしています。米国では、国内に大規模なワクチン製造工場を建設し、いざというときにはそれを軍が守ることにしているのです。

ところが日本は様々な問題によりそれが遅れています。
日本でも早急な対策が求められています。

6. 集合住宅における在宅高齢者サービス

  • 高齢者の中で、約600万人の方が「買い物難民・買物弱者」となっている。
  • 「買物難民・買物弱者」とは近隣の商店街が衰退したりスーパーが撤退などでなくなったりすることで、遠方まで歩いて買物に行かなくてはならない方々であり、この増加が社会問題になっている。

ここでも課題の全体像をとらえ、メカニズムを明らかにし、その解決策を考えました。
そこで対策として、共同プロジェクトとしてNTT東日本、セブン-イレブン・ジャパンが連携し、UR都市再生機構の在宅高齢者サービスを展開していきました。光ファイバーのインフラを使い、高齢者でも使える端末を開発し、体にいい食材を頼めるネットスーパーを作ったのです。

やればすぐできる話だとは思うのですが、通信(NTT)は総務省管轄、住宅(UR)は国土交通省管轄、流通(セブン-イレブン)は経済産業省や農水省と、管轄省庁が違うと横の連携が取りづらかったりします。

今回は、たまたま各企業のTOPの方々と「こういうことを解決しようじゃないか」と共感して展開したいところ、周りの方からも称賛・協力いただいて進めることができました。

世の中には、「××だから、そんなことできない」という話がたくさんあります。
しかし、それで諦めるのではなく、「どうやったらできるのか」をみんなで考えていけば、道は開けるものです。
そんなことを感じてもらえたらと思いご紹介した、一つの例です。

7.スマートシティプロジェクト

自己紹介として最初に話すべきしたが、私は「社会的責任」を常に思って、具体的には3つのことを考えながら今の仕事をやっています。

一つは、社会的な問題。つまり環境エネルギーや安全保障などの問題をどう解決すべきか。
二つ目は、それをどうやって拡大・継続させていくか。そのためのビジネスのフレームワークを作る。
三つ目に、未来をデザインする。

こんなことを考えながら会社をやっています。
実は、東京大学の前の総長であられる小宮山先生も同じようなことを考えられていて、(一般社団法人)フューチャーデザインセンターを設立されたのですが、私がそのセンター長をやることになりました。
これは、「日本の課題は世界の課題」として、日本が世界に先んじて直面している様々な課題について、その解決モデルを示していこうではないかという趣旨のもとに設立された組織です。
その中で我々が、まず最初に取り組もうと思ったプロジェクトが「スマート・グリッド」です。
自然エネルギーをどう活用しどう産業化していくかということが、フューチャーデザインセンターの設立、そして私がセンター長になると同時に考え始めているテーマです。

現在、世界各国で同様のプロジェクトが起こっていますので、おそらくMBAの授業などでも出てくることでしょう。

  • 世界のスマートシティ市場規模は今後の20年間累計で、3100兆円の規模に達する。
  • 日本は環境関連やエネルギーの技術は世界で見ても非常に高いレベルのものを持っている。(関連技術の特許出願数でも圧倒的シェア)
  • ところが、これまでの『技術だけ開発すれば大丈夫』というような考え方で、その後の売り方まで考えるということを怠ると、あっという間にマーケットシェアを奪われてしまう。(DRAMや携帯電話の例など)
  • その技術という宝をほかの国に持っていかれないよう、しっかりと日本で実用化し、セールスしていく必要がある。
  • そのために、スマートシティプロジェクトを立ち上げた。

世界で有名なスマートシティ構想を進めている中国の天津やアブダビのMasdar City は、国家戦略的に動いています。その戦略とは、莫大な資金と場所を提供し、プロジェクトプロセスの上位を抑え、先進国の技術を吸収し、自国企業中心の新しい産業を育て、世界に輸出していくというしたたかなものです。

現在の日本の従来型の(下請け的)アプローチでは、いくら技術を持っているとはいえ部分最適なソリューションでしかなく、全体像をおさえたところにノウハウを盗まれるだけです。これは何とかしなければなりません。

方法論ですが、携帯電話の事例を見ながらその課題を見ていくと、[1]世界への事業展開力不足 [2]事業化の困難さ(技術的検証中心で事業化や経済性の検討がされない) [3]イニシアティブが取れない日本企業 [4]部分最適による系統の悪影響 [5]事業が進まないコンソーシアム というような問題が見えてきます。

そこで、フューチャーデザインセンターで、それぞれの企業の強みを生かして、街全体を考えることをやってみようということで、全体最適を考える「スマートシティ」プロジェクトを進めています。

こうした全体像を抑えたアプローチで、全体最適化による「スマートシティ」を世界に展開できると考えています。 そこに今15社が集まり、1社1社の素晴らしいソリューションを終結させ、世界に売り込んでいこうとしているのです。 そしてこういう新たな取り組みは、NHKスペシャルで取り上げていただいたりしています。

最後に.復興会議の取り組み

最後に、復興会議の話を少しさせていただきます。

ところで、(社会には)いろいろな問題がありますが、皆さんには、どこに問題があるのかとか何が本質的な問題なのかなど、常に考えそして感じながら問題解決に向かっていただきたいと思います。そして、それをどうやって解決していったらよいかを考えるにあたっては、自分ひとりであるいは1社ではとうてい無理ということでも、「それはできない」と諦めるのではなく、「どうやったらできるのか」を常に思いながら取り組んでいくといいと思っています。

私がビジネススクールで学んだことには、「不断の努力」とか「不屈の精神」とかいうものも大きいと思っています。 「ビジネススクールでそんなことしか学ばなかったのか」と思うかもしれませんが、意外に「けっこうしぶとい人たち」の話を聞く機会が多くあり、そこに学んだことは大きいです。それが今に続いていて、「国家的な課題をいつか解決できるような人間になりたい」、「一人ではできないから多くの人の力を借りなくてはいけない」という思いをずっと持ち続け、「そのためにはどうしたら良いか」を考え続けてきました。

ですから、この話も、皆さんがそういうことを考える一つのきっかけになったらいいなと思っています。

さて、震災復興構想会議においては、3.11から今日までの間に私が思ったことをまずは話して欲しいということだったので、会議の中で発表しました。

ページ数にすると180Pを超える非常に長い話なのでここでは省略しますが、全編は内閣府のHPの中に掲載がありますので、興味のある方はそちらをご覧ください。
http://www.cas.go.jp/jp/fukkou/pdf/kentou3/sasaki.pdf(PDF/5.26MB)

ここで頭に留めておいて欲しいことは、「復興を考える」というフレームワークを持ちつつも、そもそも日本が抱える「現」課題も同時に複合的に考えていかなくてはならないということです。 そして、「未来の子供たちのために」ということをしっかりと思い、今の問題を後に残さずに解決しないといけません。

  • 過去約11年間に発生したマグニチュード7以上の地震のうち、約14%が日本で発生している。(他の国より圧倒的に多い、世界第一位)
  • 日本の人口密度は、342人/平方kmと世界平均の50人/平方km と比較して約7倍もあり、地震が発生した場合のリスクは高い。
  • その二つの掛け算を自身の脅威としてみると、日本の地震の脅威はインドの約4倍、中国の約14倍、米国の約45倍、EUの∞倍と圧倒的に高い。
  • そうした地震の脅威がある日本においては、都市の「分散化」を図り、地震の脅威を「分散」することが考えられる。
  • そして、一つ一つの都市が自立して、都市内に交通、医療、物資・食料等の機能を持つことが望ましい。
  • さらに、それがネットワークによって協調化することが望ましい。

例えばエネルギーの問題でも、今回、電気の周波数50Hz-60Hzの違いが問題となっていますが、こんな小さな国でこのような融通がきかない状況になっているのは、おかしな話です。

未来の子供たちのために、これを変えなくてはいけません。

地震/津波の多い国で生きること、つまり世界で最も「地震の脅威」がある日本で生きるためには、地震災害のリスクを「分散」、「自律」しながらも日頃から各々の都市に必要なレイヤーを連系させ、災害時には都市間で「協調」できる強い国を構築しなければならないと考えますが、多くの方がこの考え方に賛成されていて、同じようなことをおっしゃっています。

本日は、復興の具体的な話は致しませんので、関心のある方は内閣府のHPを見ていただきたいと思いますが、ここではあらためて、「日本の「現」課題は未解決のままであること」を踏まえて複合的に取り組んでいかなければならないということをお伝えしたいと思います。

  • 財政危機:長期債務残高比率(対GDP)は、財政危機といわれるギリシャ、ポルトガルなどと比較しても既に高い。
  • 日本では生産年齢人口の割合が先進諸国で最も早く低下していく。
  • 日本は「[1]人口減少」→「[2]経済低迷」→「[3]収入減少」→「[4]少子化」が連鎖する「ジャパンシンドローム」に陥っている。(戦争や大災害時並みの落ち込み)
  • 高齢化に伴い、様々な課題が見えてきている。(買物弱者等)
  • 世界への事業展開力不足(DRAM、液晶パネル、DVDプレイヤーなど初期に優位性を保持しつつも、世界企業にシェアを取られている)
  • 低いエネルギー自給率/低い食料自給率
  • 危機管理体制の不備/オンラインサービスの遅れ

これらの現問題を抱えながら、なおかつ震災による危機的状況にあるということです。

例えば電力不足についてみてみましょう。

  • 2011年4月3日時点で考慮されている対策を講じても、長期的に供給力は約5,500kWまでしか回復しない。
  • 過去7年間の東京電力の需要パターンでは、冷夏と猛暑で約1,000万kWの開きがある。
  • 供給力不足による需給の逼迫は、今年の夏だけでなく、今年の冬、来年の夏、さらには2013年の夏までも長期化する可能性があることが分かった。

これがわかったので、できることはすぐにやろうということで対策に動いています。 再生エネルギーの導入、特に太陽光発電の検討、住宅用ソーラーの導入、メガソーラーの検討などを始めています。 ただ、導入へ向けては課題も多く、一つ一つ解決していかなければなりません。

次に電力需要についてみてみると、次のことがわかっています。

  • 2011年夏の東京電力の需要推計において、ピーク付近での需要内訳は45%がオフィス、30%が家庭、25%が工場に起因する。
  • 夏期ピーク時の家庭用電力需要の50%はエアコンによるものである。

ここで、単純な節電ではなく、古いエアコンをエネルギー効率のよい新型のエアコンに買い替えたり、あるいは家電を丸ごと買い替えるなどすると、快適さを保ちながら節電できる可能性もあることがわかります。

このように、供給力をどう上げて、快適さを保ちつつも需要をどう減らすかということを考えています。

復興会議の中では、このように全体を眺めながら、「そもそも地震/津波の多い国で生きるということはどういうことか」や「日本がもともと抱える課題を頭においておく必要があること」、そして、「電力不足等の目の前の課題に取り組みながら復旧・復興に複合的に取り組んでいかなくてはいけないこと」を話しています。

皆さんも、これからいろんな課題にぶつかると思いますが、「私はこれだけをやっていればよい」とは考えず、全体を眺めながら何が大事かを見ていくようにして欲しいと思います。 日本の国は、世界の他の国に比べ、どうもこうした全体を見る訓練があまりできていないように思います。

世界のいろんな考え方を持つ人と接し、やり取りをすることになると思いますが、その中でいろんなものの見方をできるようになり、いろんな視野でものを見られるようになって欲しいと思います。 今後の世の中は何が起こるかわかりません。 その中では、自分で見て自分で感じて、そして自分で考えて判断し、行動を取れるようになっていかないと自分を守ることもできなくなるでしょう。

ですから、何かにつけてこういうことを思いながら、自分のやろうと思うことに向かって行って欲しいと思います。

長くなりましたが、最後までほんとうに真剣に聞いていただきありがとうございました。 また、あらためて、留学おめでとうございます。 今後の皆さんの活躍に期待します。

質疑応答(一部抜粋)

問題に気付くのには、どうしたら良いのか?

まず好奇心ですね。
ありとあらゆることに、「何かあるんじゃないか?」と関心を持つことです。
それと、魅力のある友達をたくさん持つことです。その人たちがそれなりの好奇心を持っていることやわくわくすることが、彼らの言葉を通じて私に入ってきて、それがまた私の好奇心につながります。
思えば、幼少時から、何事にも「何故なのかな?」「どうしてなのかな?」といつも思っていて、それが今に至るまで続いているように思います。
ですから、まずは何事にも好奇心を持つこと。

会社ではどのようなメンバーでやっているのか?海外ではどのようなプロジェクトがあるのか?

会社はそんなに大きいものではなく、4つ5つの事業部に分かれていて、総勢50名くらいです。
ただ、プロジェクトのチームは結構大きくなることもあり、例に挙げたスマートシティのプロジェクトでは、うち(イーソリューションズ)のメンバーが10名弱しかいないにもかかわらず、約20社の関係各社から数名ずつ参加いただいているので、常時40-50名の方とコンタクトしているような状況です。プロジェクトとして、ある意味ではバーチャルな組織となっていると言えます。
また、海外の関係では、日本のプロジェクトでありながら中国やインドの人達と進める案件もありますし、最近ではハワイのプロジェクトもあったりします。ほかにも、あるチームはアメリカでやっているグローバルなプロジェクトもあります。今日お話ししなかったものにも、ライフサイエンスの分野のプロジェクトで、脳梗塞を世界最先端のやり方で治療できるようにしようという案件もあります。日本が経営主体でありながら、研究や細胞培養のアウトソーシングなど、プロジェクトマネジメントはすべてアメリカで進めています。やはりバーチャルな組織で、総勢40―50名のプロジェクトです。
また、うちの会社の最大の特徴は、役員を除いて平均年齢が30歳ちょっとと若いということです。
僕のチャレンジは、「若者が世界で活躍する場を作る」ということです。この若者が超一流の会社の選び抜かれた人たちと仕事をしていくということで、そうした機会を作っていこうと思っています。

もし、MBA卒業後にイーソリューションズに入社したいと希望したら、どのような知識やスキルが求められますか?

一番重要視しているのは、その人の人柄や情熱です。学歴やスキルといったもの以上に、そこを見ます。
スキルだけ見るようになると、「これは利益が出るのですか?出ないのですか?」というのと同じような議論になってしまい、大事なことを忘れてしまいがちです。
もちろん、ビジネスでいえば利益を出して事業を継続していくことは重要ですが、それ以上に重要なのは、「ホントにやらなくてはいけないことは何か?」です。
僕の会社で考えた時に、それは「人を動かすこと」です。そして、人を動かすためには情熱とかエネルギーとか前向きな姿勢とかが重要になるのです。
その土台がしっかりしていて、その上に経験とか能力が乗ってくると、その人は力を発揮するんですね。
この仕事をしているとよくあるのですが、「あの人の言っていることは正しいのだけれど、あの人の言うとおりにやりたくはない」と言われるケースがあります。「どうしてですか?」と聞くと、「嫌いだから」という答えが返ってくるのです。
人を動かすということをできないと、(いいプランも実現できないので)ダメなんです。 僕の会社でやっていることは、まさにいろんな会社の人たちが集まって協力して初めて上手くいく、例えて言うなら音楽のオーケストラのような仕事です。みんなの共通の問題を解決する絵を描き、それぞれの力を引き出して上手くまとめていく指揮者のような力がいるのです。
だから、「人を動かす」ということができるような人、ということを重要視しています。

ジョブフェアに参加して~参加者の声~

  • いろいろな企業の方とコンタクトがとれて、とても良いきっかけになりました。
  • こういったジョブフェアに参加させていただくのは初めてでしたが、大変参考になりました。
  • ジョブマーケットのイメージについて、自分の思い込みと異なる部分があることが分かって有意義だった。
  • It was nice to see companies from multiple industries. I found out about companies which I would be interested in applying to, which I would never have thought of encountered otherwise.
  • プレゼンテーションはもう少し採用情報や実績にフォーカスして頂くとより良いと思います。ありがとうございました。
  • 一辺に色々な方の会社の話が聞けて非常にためになりました。
  • 各企業がどんな事をMBAに求めているのか理解出来て良かった。また、インターンの開始時期などを確認できてよかった。
  • 各企業のカルチャーに触れ、自分とのフィットを確認する機会になったと思います。ありがとうございました。
  • とても有意義でした。プレゼンテーションをする会社をもっと増やしていただきたい。
  • 各社の考えるMBAホルダーの必要性、将来プランが聞けて参考になった。日ごろ縁がない/興味を持たない会社の事が聞けて視野が広がった。
  • 企業の方と話が出来てよかったです。ありがとうございました。
  • 参加者数と企業数のバランスが良く訪問しやすかった。(それでも時間内に回るためには計画性が必要)
  • 初参加で大変勉強になりました。
  • 情報がバリエーションに富んでいて勉強になりました。
  • 新しいキャリアオポチュニティーを見い出せた。
  • 人事ご担当者と直接お話しができ、インターンシップ、渡航前の会社独自のイベントの情報も入手でき大変有意義でした。
  • 素晴らしい講演をして下さった佐々木先生に御礼申し上げます。
  • 短時間で多数の企業の話が聞けたので良かったです。
  • 非常に有意義に感じました。
  • 様々な企業の事業内容やMBA取得後のキャリアオポチュニティを総合して把握することができました。
  • 留学前のスタートアップとして、なかなか参考になるイベントだった。
  • 良い企画でした。時間もちょうどよい。

参加者の皆様から、来年参加される後輩へのメッセージ

  • ぜひ参加して下さい。留学前の情報収集に最適です。貪欲に行って下さい!
  • 是非参加して良い就職活動のスタートをとってください。
  • 早め早めの準備、そして自分の興味を明確にしていく努力が大切かと思います。
  • インターン・就職について考える初めてのイベントになると思うのでこの機会を活用すべきだと思います。
  • ネット等ではわからない、自分との「フィット」の確認に是非、活用して下さい。
  • 自分の視野、選択肢を広げるよい機会です。
  • 未知の業界にもアタックしてみて下さい。
  • 絶対参加すべき。企業との懇親も長い時間ゆっくり話が出来るので壮行会より濃密な時間を過ごせる。
  • 直接企業の担当者から生の声を聞ける有意義なセミナーだと思います。
  • どのように就活するのか、また各企業のプレゼンも色々聞けるので、一日で凝縮されていますし非常に効率的だと思います。

以前のジョブフェア参加者からのメッセージ~

  • 想定外の企業と出会い、インターンシップを受けることができました。その後フルタイムのインタビューを受け、結果としてその会社に入社することに決めました。留学は単なる夢ではなく、ビジネスの現実をしっかり理解し、自分の中の「価値観」を磨くことであると渡航前のタイミングで気付けたことが、ジョブフェアに参加した何よりの収穫だったと思います。
  • 外資系企業の求める人材、コンサルタント会社が求める人材がどのようなものなのか、しっかり留学前に知ることができて気合いが入りました。その「目線の高さ」を理解することができ、留学期間中の励みになったと思います。モチベーションを高く持ち続けられたこともあり、卒業後には志望していた外資系戦略コンサルティングファームでオファーを頂くことができました。ですが、入社がゴールではないので、常に「目線の高さ」を維持・向上できるようにしたいと思っています。
  • 多くの採用ご担当者は、金融であれ事業会社であれ、売り手市場となっても、やはり能力やスキルだけでは計れない、より優秀な人材を求めていることが良く分かりました。売り手市場と高をくくっていた自分の認識の甘さに気付かされました。就職活動・インタビューが本格的に始まる2年生の秋までに、真剣に自分の希望を理解しておくこと、そして自分なりのキャリアの考え・プランを持つ必要があることを知りました。MBAならどんな業界でも可能性があるという曖昧な話ではなく「この会社ならこんな人を求めている」という企業の本音を知ることが現実を知る第一歩だと思います。
  • もっと多数の企業の本音を知りたかったです。しかし、日本ではまだまだMBAらしいキャリアパスを提供可能な企業が少ないことを理解できました。このようなイベントが盛んになり、MBAを理解している企業の参加をもっと呼び掛けてほしいと後輩の方たちのためにも希望します。海外に留学してしまうと、どうしても日本の市場の変化を細かく知ることは難しく、現地に行く前に企業の生の声を聞けたことで、留学中の活動パターンを立てられたのは良かったです。
  • 自分以外のMBA合格者(つまり競争相手)が、どのような業界を希望しているのかを知ることができました。他の人と同じキャリアパターンを選択することは、逆に非常にリスキーだと考えており、採用企業の情報はもちろんのこと、同期のMBAたちの動向を自分の目で見られたのは有意義でした。

渡航前のお忙しい中、貴重な時間を割いてご参加いただきました皆様、本当にありがとうございました。 アンケートにご協力頂きました皆様のお声を大切にし、今後の運営に反映させていただきます。
今回のジョブフェアの内容が、これからの皆様の展望を実現させるために、少しでもお役にたちますよう願ってやみません。
皆様お一人おひとりの留学生活が充実したものとなりますよう、心よりお祈り申し上げます。

株式会社アクシアム スタッフ一同

講演者/パネリスト 略歴

イーソリューションズ株式会社 代表取締役社長
佐々木 経世(ささき けいしん)氏 プロフィール
佐々木 経世(ささき けいしん)氏1984年 慶應義塾大学大学院/計測工学修士課程 卒業
1989年 MIT Sloan School of Management/Master of Science in Management 卒業
日本鋼管(株)、ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン(株)を経て、ソフトバンク(株)事業企画室長(社長室兼務)に就任。
1999年1月、イーソリューションズ(株)を設立し、代表取締役社長に就任。その他、スマートシティ企画(株)代表取締役社長、社団法人フューチャーデザインセンターFDCセンター長、NCメディカルリサーチ(株)代表取締役社長など兼任。

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