転職コラムキャリアに効く一冊

キャリア開発に役立つ書籍を毎月ご紹介しています。

2015年1月

人の気持ちがわかる人、わからない人 アドラー流 8つの感情整理術
和気 香子(著)

本書のタイトルにある「人」とは他人という意味だけではなく、自分という「人」、そして「人々」をも意味するのだと思いました。本書を読めば、人を嫌いになる必要もなければ、失敗を悔やむ必要もないことが理解できます。他人の気持ちがわからない人は、自分の気持ちもわかっていないし、多くの人の気持ちも理解できていないということです。もし、皆さんが未来を見つめたい時や、自分を見つめたい時には、お勧めの書です。

著者である和気香子さんのキャリアは、女優になりたいという夢から始まりました。東大、女優、MBA、ソフトバンク、コカ・コーラ、ベンチャーキャピタル、20年を経て、巡り合った天職がエクゼクティブ・コーチだったと書かれていますが、和気さんと旧知である私からしてみれば、ようやくご自身に巡り会ったのだなと読後に感じました。本書の中でも、スティーブ・ジョブズの有名な講演での一説「将来を見て点を結ぶことはできない。過去にやってきたこと、今やってきたことが将来のどこかでつながるのだと信じるしかない。」が引用されていますが、まさに、Connecting the dots、和気さんがおっしゃる人生は川のように流れてゆくという事なのだと思います。和気さんは巡り合ったコーチングの世界に本書を出発点として、船出しました。「人生は遠回りしても大丈夫。きっと人生で打ち込める、やりたいことに巡り合うことができる。」と和気さんは信じていらっしゃいます。そのことが何より人生を幸福にしてくれると私も思います。

私は和気さんがMBA留学準備をされている時から、当時はキャリアコンサルタントではなく、留学カウンセラーとして存じ上げていたのですが、Facebookのお蔭で、2年前に再会できました。再会するまで20年近くお会いしていなかったことになるのですが、その間の和気さんのキャリアは、今の私の仕事であるキャリアコンサルタントの観点から見ても、その展開力に驚くばかりです。そして、今、彼女が上梓した本書は、アドラー心理学の実践の書として読んでも面白いですし、キャリアや人生について考えている人や、人とのコミュニケーションに悩んでいる人にもお勧めできる書になっています。

少しだけ内容をご紹介しておきますと、第8章のポイントは、キャリアを考えている人のヒントにとてもなると思います。

ポイント1
 「やりたいこと」についての悩みは【1】「やりたいことはわかっているけれど、実現の仕方がわからない」、【2】「やりたいことが多すぎて選べない」、【3】「やりたいことがわからない」という大きく3つがあります。

ポイント2
 【1】については未来と過去へ視点を向けてからアクションプランを立てます。

ポイント3
 【2】については、未来に視点を向け、それぞれのオプションを選んだ場合の将来の気持ちを想像してみると、より明確になってきます。

ポイント4
 【3】については、「やりたいこと」についての悩みの中でも約半分を占めます。探し続け、「これだ!」と思ったらチャレンジして、違ったらまた探してチェレンジすると必ず見つかります!

いかがですか?

第4章の「人の気持ちがわかる人は、聞き上手」という章は、インタビューする側、あるいはインタビューを受ける側にも大変役立つと感じます。自分本位の質問ばかりで、”縁”を台無しにするインタビュアーの愚。自分本位の質問では相手の事は何もわからないと気づかされます。相手がつい話したくなる聞き方とは、丁寧語を使用し、対等な立場で、積極的に感情や、感謝の気持ちを言葉で伝えることであり、きっかけ、理由、背景こそが、相手のことを理解するために必要なポイントだと気づかされます。インタビューを受ける側も、相手の関心事にこそ関心を持つべきだという極めて重要な点が書かれています。

この辺りは、アドラー心理学の真骨頂だと思います。

「手にとってくださり、ありがとう。」という冒頭の言葉こそ、和気さんが読み手の皆さんに伝えたいことであり、決して一方通行ではなく、和気さんが読み手の皆さんに「コミュニケーションをとりたいです。」と伝えてきてくれているのです。

人の気持ちがわかる人、わからない人 アドラー流 8つの感情整理術 出版社:クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
著者:和気 香子(著)