MBAのためのキャリア支援キャリアデザイン講座

アクシアムでは、これまで30年間にわたり約9,000人(海外MBA約7,100人、国内MBA約1,900人/2022年5月)のMBA人材を対象に、キャリアコンサルティングを提供しています。その中から数多くの方が、各方面のプロフェッショナル、マネジメントリーダー、そして経営者となっていきました。そのような方々へのキャリア開発支援、キャリア紹介を通じて得られたエッセンスを、MBAキャリアデザインの基礎知識としてお伝えいたします。 この内容は、現在海外MBA留学中の方を対象にしたものになっていますが、将来MBA取得を考えている方や、既に国内外のビジネススクールを卒業したMBA保有者の皆さんにも参考にしていただけます。 MBA留学という投資が、卒業時の就職や転職のためだけではなく、世界の激変に流されない〈Sustainable Career Development〉すなわち人生の長きに渡り持続可能なキャリア開発となるよう、戦略やデザインを一緒に考え、ご提案させていただきます。 With/after COVID-19、SDGs時代を乗り越えるために、個々人のキャリアにおいてもっとも大切なことは、戦略やデザインを持つことはもちろん、加えてMBA留学前・留学後・PostMBAを通じて、ご自身の人生の意味=Aspirationに気づき、その答えや解決策を生み出せる人となることです。これは今後の社会のリーダーにとって重要な資質の一つです。また、それぞれの人生においてオーナーシップをもって「危機を乗り越えられるキャリア」を歩むことにつながると考えます。

最新求人市場動向

日本の産業社会における組織の課題はいくつかありますが、成長戦略を実現するために必要なものは、以前から指摘されている点から変わりありません。
  1. マネジメントリーダーの不足
  2. グローバル人材の不足
  3. 若手人材育成の重要性の拡大
上記の3点です。グローバルに活躍できる若手MBAの必要性や重要性が高まっているにもかかわらず、企業派遣生も私費留学生も減少傾向にあるのが現状です。 MBA留学を短期的な求人市場ニーズだけでとらえず、長期のキャリアプランを考えることがより重要になってきました。長期のプランを考えるためにも、今のニーズ・現実的な機会がどのようなものなのかをしっかり理解しておく必要があります。以下より2022年から2023年卒のMBAの方を対象とした最新の市場動向をお伝えしますが、卒業時の就職活動のためだけではなく、人生をthriveさせたい人、人生でoverachieveしたい人に、このコンテンツが参考なれば幸いです。
求人市場の変化
2021年卒までの就職状況をレビューし、いくつかの重要な変化のポイントをお伝えします。単なるMBA卒業時の就職、各業界の求人動向を知るだけではなく、「MBA卒業後の中長期的キャリア」をキャリア形成、キャリアのデザインという視点でしっかりと考えることが重要です。そのために、MBA卒業時とポストMBAの求人市場を包括的に、かつ市場の変化と合わせてお伝えします。
対象別アドバイス
1年生、2年生、企業派遣などの対象別に、皆さんから良く受けるご質問を踏まえつつアドバイスします。

求人市場の変化

海外MBA留学生に対する求人ニーズは、2020年までは増加傾向にありましたが、2021年、遂にCOVID-19の影響で減少に転じました。企業派遣・官庁派遣・私費留学とも、海外ビジネススクールへの出願者にも減少傾向が見られました。しかしながら、2022年は留学生数が増加に転じている可能性が出てきました(毎年、弊社で年末に取り纏めて公表している「海外MBA留学生数調査」を待たないと断言できませんが)。 COVID-19に対する収束宣言が出せない中、さらにロシアのウクライナ侵攻が始まり、この2つの問題が世界経済に深刻な影響を与えていることだけは明白です。各国の中央銀行や国際金融機関などから発表される経済予想は、ますます厳しいものになっています。世界中で不確実性が高まる中、海外留学を決めた2022年の渡航組を含む海外MBA留学生の皆さんを、心から尊敬し応援したいと思います。 これまでMBA留学とその後のキャリア構築を40年近くサポートしてきましたが、過去にもMBA市場に対する打撃は、90年代後半の日本的経済構造の崩壊から始まり、ネットバブル崩壊、アンダーセン破綻、リーマンショックなど数々ありました。しかし、今回のパンデミックや戦火は、それらとは比較にならないほど、資本主義や民主主義の根底にまでかかわる大きな変化や大転換の契機となりそうです。 持続可能な社会を生み出すためにも、MBA留学後の皆さんのキャリアを持続可能なものにするためにも、キャリアデザインの方法、キャリアの見つけ方、長期的なキャリア開発や人生設計などについてお伝えしていきたいと思います。過去にも、不況や大転換期にあっても、MBA留学を決行し大きな成功や幸福を勝ちとった方々が多くいらっしゃいました。失敗から学び、修正し、次の挑戦を見つけられるのが、海外MBA人材の優位性・強さなのだと思います。 MBAのキャリア形成で大切なことは、需要の増減に一喜一憂することなく、世界経済の潮流や枠組みの中で、Post MBA市場の動向を大局的にとらえ、同時に己心(こしん)に従ったビジョンを見つけ出し創造していくことです。留学の目的は単なる『就職』や会社を移る『転職』ではなく『キャリア・デベロップメント』。すなわち『展望を備えたキャリアの開発』です。 アクシアムでは創業以来、すでに9,000名を超えるMBAの方々の一人一人の展望について相談を行ってきました。相談者の多くは現在、経営者あるいはプロフェッショナルとしてご活躍されています。これこそが、アクシアムが提唱する『展職』であり、私たちが皆さんにご支援できることです。 では、これから卒業にむけ本格的な活動を始める皆さんに、MBA求人のハイライトをご説明します。
  1. SDGs/ESG 持続可能社会 VS 不確性社会 VUCA/COVID-19/WAR。
  2. コロナ禍で求人が止まった業界もあれば、積極採用の業界や企業も あり採用意欲に明白な違いがある。ロシアのウクライナ侵攻は、金融のみならず産業全体に大きな影響。ただ、求人市場には今後影響が及ぶ可能性大。
  3. 需要が拡大している業界は「プロフェッショナルファーム(コンサル・VC・PE)」、「イノベーション関連」。
  4. 起業家、経営者、事業継承者 の圧倒的不足。アントレプレナーシップ、リーダーシップ、新世代経営者の時代へ。
  5. 一般募集(公開)求人は完全売手市場が続いており、機密性の高い(非公開)スカウト市場の求人は増加中。
  6. 「サービスに関わる産業」:「財に関わる産業」= 9:1。
  7. MBA卒業時に、留学先の国で就労先を見つける人が増加していたが、2020年からはコロナ直撃で 激減、難易度が高まる。VISAスポンサーができずオファーが直前で取り消しとなるケースもあるので注意。
  8. 30~50歳までの求人が増大する一方で、50代以上の求人の激減。
  9. 事業承継、事業再生、ガバナンスの変化、進むDX。ローカルビジネス/地方経済のダメージ、社会起業家の活躍 。リモートワークにより、地方移住しながら外資系企業でも日系企業でもグローバルな仕事ができる時代。
業界別の最新の市場動向などについては、ぜひ、アクシアムのキャリアコンサルタントに随時お尋ねください(新規にMBA採用を開始する企業もあります。)。

対象別アドバイス

全体的な助言 ~MBAの価値とは?~

MBAの価値について考察してみると、まず第一に、海外MBAを採用対象としている企業は、以下の5つを期待していることがわかります。
  1. 知識、スキル、ビジネスフレーム(企業財務、マーケティング、何百というケーススタディの知見などのハードスキル)
  2. コミュニケーション能力や見識(英語によるビジネス遂行力)
  3. 共通概念・価値観・キャリアに対する考え方(これからの社会と産業と自分のキャリアの関係性)
  4. 人的ネットワーク(世界から集まる優秀な教授陣や多彩な経験をもつ学生達)
  5. 将来の経営陣やビジネスリーダと成りえる、リーダーシップとポテンシャル
この中で、もっとも重要な採否を決定する要件は、(3)の共通概念・価値観・キャリアに対する考え方です。なぜMBA留学し、なぜその会社に応募し、なぜその仕事がしたいのか。また、将来何をしたいのか。こうした質問に、説得力をもった回答をできる人が採用されます。 その際、願望や希望の大きさをいくら熱心に説明しても、「報酬が高いから」「学べるから」「成長できるから」「社会に貢献したいから」などと言った自分の利益だけを述べるだけでは採用されません。もっと具体的に、「MBA留学を経て、自分は何をしたいと思いそのためどんな努力したのか。」「その結果、何ができるようになったか。」「何をするためにその会社のその仕事を希望するのか。」などについてしっかり語れることが望まれます。 そのためには、深く考え、悩み抜いた上で自分なりの応えにたどり着いておくことが大事です。付け焼刃なインタビュー対策では、まったく刃が立ちません。薄学も見抜かれてしまいますので、しっかり学ぶことも大事です。また、冗談のような話ですが、海外MBAの方が英語でインタビューを受けて、英語力不足を理由に落ちるということが実際起こるので、英語でのビジネスコミュニケーションもしっかりできるようにしておいてください。 教授や卒業生からは、キャリア機会の提供が行われます。チャンスとなるドアがたくさん開かれていることが、最も大きな留学の価値かもしれません。これはトップスクールでは想像に難くないと思いますが、中堅ビジネススクールでも、MBA前とはまったく異なる、想像以上にわくわくするような機会に恵まれることがあります。 ただし受動的なMBA留学ではなく、能動的なMBA留学であることが前提条件です。2000年以前のように「何かいい事が約束されているからMBA留学をする」という人ではなく、これからのSDGs時代にはMBA留学を経て「自ら社会にとっていい事を生み出す」という能動的な留学をする人材が求められます。 課題やリスクは明確に考えながらも、デザイン化、パターン化、先人に設計されてしまったコモディティ的なキャリアの道を歩まず、新たな人類の課題やゴールの達成を目標にし、自分の人生の軸=Aspirationに気づき、過去に例をみない先駆的ながらも個性的なキャリアを歩み始めている挑戦的なMBA人材が見受けられる時代になりました。短期的なことではなく長期的なゴールとして、MBA卒業時、5年後、10年後、さらには人生をかけて目指すべきゴールについてじっくり考えられることも、MBA留学の価値と言えるでしょう。 結論として、「MBAの持つ価値」とは前述の5点に以下の2点を加えた7つであるといえます。
  1. 能動性を持てば、過去のキャリアの延長線にはないキャリア機会に恵まれること
  2. 内側に閉ざされた世界(日本国内だけの議論)ではなく、開かれた環境下で新しい世界の秩序、変化への回答を探せること
以上、「MBAの価値」について述べましたが、つぎに「MBA人材がマーケット情報を見る際の注意点」をお伝えします。
  1. COVID-19が与える人類への影響(経済・政治・科学・生活)を考慮し、MBAの価値の再構築が必要
  2. 求人数が過去最多からの急激に反転する「変化の時代」に有効なキャリアデザインとは? ⇒『リスク回避』から『リスクマネジメント』へ ※留学時点と卒業時点での時間差を意識 ※転職後5年もたたず想定外のリスクに見舞われる人もいれば、20年後に恵まれる人も
  3. Post MBA の5年間/およそ38歳までに『ユニーク×大きな実績』を見える化した人は、経営人材となることが多い
  4. 時代と年齢のデザイン、リデザインの連続
  5. 今やりたいことと、将来やってくれと言われることの相違
MBAで学ぶ大きな意味のひとつは、不確かな世界の中ながら定まりつつある新しい秩序、経営者やリーダーの在り方などについて、議論できる環境と時間があることだと思います。コロナ禍にあっては海外渡航そのものが難しくなったり、感染防止のためにクラスのオンライン化が始まったりしています。あるいはMBA不要論やビジネススクールそのものの在り方が問われることも多くなってきました。 しかし、それらのことを差し引いたとしても、世界の産業をみるとグローバルであれローカルであれ、破壊と創造が起きているわけですから、おのずとこれからの社会では、年齢にかかわらず、20代、30代、40代でも経営者や起業家、企業家になれるMBA人材が増えていくことでしょう。年功序列に与しない、50歳までかからずともマネジメントリーダーとなれる時代になりました。ですからMBA人材である皆さんには、ぜひ社会をけん引するリーダーとして自らの道を発見いただきたいです。

就職に苦労している方、苦労しそうな方への助言

以前に比べ、願望だけの留学生が減り、現実的なチャンスをつかもうとする人、大きな挑戦を目標にする人など留学の動機も多様化しています。その中で、i)市場の求人ニーズをつかんで有利にキャリア開発につなげている人と、ii)ニーズをつかまず勘違いの方向ばかり身勝手に見ている人の二極化が進んでしまいました。 就職が難しいのは、
  1. 職歴なし
  2. 35歳以上で留学
  3. キャリアに関連しない分野で留学
といったタイプの人です。就職先を見つけるにはかなり努力を強いられると思いますので、他の人とは違うアプローチが不可欠であると覚えておいてください。 まず、求人の傾向をしっかりと把握しておきましょう。 外資系、日系を問わず事業会社での財務会計・事業開発・マーケティング・セールス・オペレーションの求人には、一定のMBA人材ニーズがあります。マネジメントを目指せるポジションの求人も出てくるようになりました。また、コンサルティングや金融など、スキルや知識を高いレベルで要求する業界でもニーズはあります。 ただし、ベンチャーや新規事業開発、企業再生にからむ求人では、ポテンシャルではなく実践的なスキルがより求められるようになっています。さらに、大手企業とは異なり、学歴やスキル以上に「新しいことに挑戦したい」という志向性や価値観が求められます。言葉だけで「挑戦したい」というのでは不足で、実際にどんな挑戦をし、どんな苦労や失敗をしたか、それをどうやって乗り越えたかなどの質問に具体的に答えることができるかどうかがポイントとなります。夢ばかり語る人材よりも、実践派が望まれているのです。 こうしたいわゆるチャレンジ精神は、留学した人すべてに当てはまることではないと思われます。意外なことですが、日本から海外へ留学する人の中には、「異文化交流や挑戦をしたい」と言いつつ、本心では「安定優先で、挑戦やリスクなどは程々にしておきたい」という考えの人が多いのです。 安定を目指す人は、このような分野にはキャリアを方向付けないほうがよいといえますので、しっかり考えてみてください。採用側も、その点への理解が進んできていますので、軽い気持ちで応募してもあっさり見抜かれてしまいます。 留学経験だけで新たなキャリアが拓ける時代は遠い昔です。しっかりとした自分の展望、価値観を持ち、自身の経験と強みを理解し、そして就職をゴールでなくキャリア開発の一環とらえて活動を進めていきましょう。MBAや大学院留学後のキャリアを設計し、未来の展望、すなわちキャリアゴールの実現に向けて、人生の投資先を探すつもりで活動することが成功する秘訣です。

私費留学生の方への助言

企業派遣生に比べ、留学前からの活動によりジョブマーケット情報の蓄積があり、加えてキャリアプランが明快なので、より多くのチャンスに恵まれます。ただし自己資金で留学しているので報酬面を重視せざるを得ないため、ベンチャーへの就職は報酬面で難しい傾向がありました。ただ最近は堅実な、比較的高い報酬提示を行うベンチャーが増えていますし、ストックオプションやワラントなどでアップサイドが期待できる場合もでてきています。 ●注意:Post Pandemicは、留学前からの願望だけで業界を選ぶことや、具体性のないキャリアデザインは厳禁です。 ※アクシアムでは、弊社経由の紹介先企業ではなくても、オファーを受けるべきかどうかやベストなキャリアとなるかどうかなど、無償で相談しています。メール、電話、Web面談による相談、一時帰国中の対面相談も歓迎です。 定期採用している企業については、直接応募をお勧めすることもありますが、アクシアムにMBA新卒の紹介を依頼している企業のご紹介は可能ですし、他にもMBAを対象としている通常の求人案件もご紹介することができます。一度、ご希望や展望、キャリアデザインをしっかり相談いただければ、それに合致した案件を随時ご案内することができるようになります。担当コンサルタントまでご遠慮なくご質問・ご相談ください。

企業派遣生の方への助言

アクシアムでは基本的に、2019年頃まで、一旦会社に復職し「MBAで得た知識・スキルを活かせるか?」を判断するために、まずは卒業時の配属先でのキャリアを見極めることを推奨してきました。しかし2019年から、MBA在学中から転職を決意し、帰任前に転職する方が増加し始めました。 コロナ禍となった2021~2022年の企業派遣生における転職希望者は、さらに増加しました。在校中でも卒業後でも転職活動自体に大きな違いはありませんが、MBA新卒と見なしてもらえるのは卒業後半年ぐらい。それ以降になると既卒扱いとなることだけは知っておいてください。コロナ前に比べて大きく変わったと感じる点は「帰任後5年以上経過してから転職しようと思っても、以前のようには簡単に転職ができなくなってきた」ということです。
まだコンサルタントと個別相談していない方は、ご相談内容を明記の上 [mail@axiom.co.jp]までメールでご連絡いただくか、キャリアコンサルティング申請ページよりお申し込みください。