転職コラムコンサルティングの現場から

メールマガジンに連載させていただいたコラムのバックナンバーです。
転職市場、そしてキャリアコンサルティングの現場で起こる日々の出来事から、成功へのヒントを感じていただければ幸いです。

コンサルティングの現場から 第20回 
2006.02.16

ウチの会社 vol.2

日経新聞にて、2/14から『会社とは何か』という連載記事がまた開始されました。全8部構成となる今回の連載は、『それぞれの舞台』という副題で多様化する会社と個人の関係や、新しい経営の潮流について語られるようです。

以前、『ウチの会社』というタイトルで、日本人が好み、重視してきた会社の“公”的要素について書きましたが、「働き手にとって会社とはなにか」について、同記事を読みつつ感じるところとともに、もう少し考えたいと思います。

しばしば「ウチの会社」という表現が使われるとおり、日本人にとって『会社』は「単なる労働の対価として賃金を得るところ」ではなく「“公”の要素を持った共同体」である側面が強いことは以前書きました。

2/14日付けの日経新聞のこの記事でも、同じようなニュアンスのことが書かれていましたが、では、われわれ働き手は“公”的要素を会社のどのような点に感じているのでしょうか?

キャリアコンサルティングの現場で日々感じる、個人の皆さんの転職理由、現在の会社への不満要素、あるいは多くの優秀な方が活気にあふれ活躍している会社(成長ベンチャーなど)の特徴から推察するに、われわれが会社に“公”的要素を感じる点は大きく次の3つに集約されると思います。

  • 会社のビジョンやミッションなどの組織の社会的意義・存在意義
  • 組織の風土や文化などに現れる、その組織の根底にある価値観
  • 物理的に時間を共有し、苦楽をともにしたという事実

社員の皆さんが生き生きと働き成長している企業においては、上記のうち少なくともいずれかが、社員の中でしっかりと共有されています。

中でも、2番目の「価値観」が会社の“公”度に与える影響は特に大きいようです。「若くて未経験でも責任のある仕事を任され、短期間で成長できる」、あるいは「成果に応じ、報酬も大きく変わる」「人を大事にし、育てる」、「失敗してもいいからチャレンジするということが奨励されている」などというのはその典型です。

一方、転職希望者のお話を聞いていると、一番目の「社会的意義」を重視する傾向も強くなってきていると感じます。年収が低くともNPO法人やNGOなどの「世の中のために働いている」と感じやすいところへ転職を希望するという方が増えていますし、また、「日本の流通を変える!」とか「環境問題を何とかしたい!」など、社会への問題意識を共有できる企業へ転職をされる方も多くいます。

すでに、「就社」の意識はなくなり、会社の将来性や安定性で仕事を選ぶ方は減っています。そして今、その職種・職務がやりたいものかどうかという点を考える「就職」の考え方だけでも不十分になってきました。

終身雇用の崩壊とともに、会社に“公”を感じることが難しくなりつつある今、あらためて個人と会社のあり方についてしっかりと考える必要があると強く感じます。