転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第43回
2008.06.26

経理・財務職10年。管理会計などへ職域を広げるには転職すべきか?

大学卒業後、ある日系の事業会社に就職し、最初の2年程は営業をしていました。その後、経理・財務部門に配属され、決算や税務申告、監査法人への対応、資金繰りなどを約6年経験しました。 現在はスタッフから同部門のアシスタントマネージャーになり、上記の業務に加えて予実管理制度の整備や、子会社の吸収合併に伴う業務を行って約2年が経っています。

今後も経理財務の分野でキャリアを積んでいきたいのですが、現在の会社では年功序列の風土も根強く、もっと予算の計画や管理会計の仕事などを手がけたいと思うものの、なかなか職域が広けられずにいます。将来的にはコントローラーやCFOを目指したいのですが、希望を叶えるにはやはり転職という手段をとるべきでしょうか?

現在32歳。いまの会社に待遇面などで大きな不満もなかったため、転職経験はありません。もし決断すべきだとすれば、そのタイミング・キャリアの可能性等についてアドバイスいただければと思います。

Answer

ご相談者は「コントローラーの役割」「CFOの役割」とは、どのようなものだとお考えですか? それぞれの責任と求められる経験・実績・見識等について、ぜひ考えてみてください。これまでコントローラーやCFOに求められていた役割が、最近になって大きく変化しつつあります。このような変化にもお気づきですか? それらを踏まえた上で「管理会計などへ職域を広げ、コントローラーやCFOを本当に目指す」という展望を、まず改めて自己確認されることをお勧めします。

現在、企業においてコントローラーやCFOに求められているのは、単純な会計の知識や経験・スキルでもなく、単なる金融機関対応や資金調達の能力でもありません。「企業経営の観点から、株主・社員・顧客らへ説明を行い、結果責任を負う」ことが求められています。広い職責と権限が与えられ、企業価値を高めることが期待されます。また、大きな責任とやりがいがある一方で、必ずしも非雇用者としての立場が保障されないのが、コントローラーやCFOというポジションです。

ご相談者のこれまでのご経験からすれば、これから先は、財務・会計・監査・管理会計・資本政策・経営企画・事業企画・投資・経営管理・経営等に関する業務をさまざま手がけ、ご自身を磨いていかれれば良いわけですが、その際に望ましいと思われる社会全体(ビジネスの世界)のスピード感と、所属企業内部のスピード感とが合致していないことが問題ということでしょう。

現在どのようなサイズの会社で、どんな業界におられるかは分かりませんが、一部(外資系企業と日系のベンチャー企業等)を除き、年功序列的風土は日系企業のほぼすべてで見られる傾向です。年功序列的な組織は、必ずそうというわけではありませんが、キャリア形成のスピード感に欠けてしまうことがよくあります。ご自身の望む成長スピードとシンクロする会社を見極め、今後のご自身に必要となる仕事をできることが確認できれば、リスクをとって転職をされても、将来大きなキャリア資産となる職歴を獲得することができます。

しかしながら、単に「32歳になったから、今やりたい仕事ができる会社に転職したい」という程度の考えでは、転職は危険です。たとえ年功序列的でない(実力主義の)会社に移れたとしても、転職時の職種・職位のままで40歳をむかえてしまい、かえって実力主義の会社の怖さを思い知ることになってしまうかもしれません。年功序列の方が、オートマチックにタイトルや年収は微増します。実力主義の会社では、入社後2-3年の間に自らしっかりと責任範囲や職域を広げなければ、年齢に関係なく、どんどん追い抜かれていきます。そのあたりの実情も理解した上で、なおチャレンジしようと決意できるかが、考えるべきポイントといえます。

自分がこれから何になりたいのか、それがしっかりイメージできているのか…本当のキャリア展望が、管理会計を経験していった先の「コントローラー・CFO」なのかを考えてください。他にあるかもしれません。財務や会計の領域で、コンサルティングファームや監査法人に転身する道もあるでしょう。しかしながら、冒頭から申し上げているキャリア展望(キャリアゴール)が定まらなければ、「事業会社か、コンサルか」あるいは「事業会社Aか、Bか」という条件の比較のみに陥ってしまいます。転職やキャリアチェンジを行ったところで、次の新たな課題に直面し、「やっぱり、あちらがよかったかも」と後悔することになります。

もっと社会の流れの変化やスピード感を敏感に感じ取りつつ、ご自身のキャリア展望について考え抜いてから、具体的な転職活動に入られることをお勧めします。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。