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CAREER DESIGN SEMINAR in Euro 2008 (2008/04/23~05/01)2008.05.15

2008年4月23日(水)~5月1日(木)の期間、アクシアム代表・キャリアコンサルタントの渡邊光章が欧州をまわり、トップ・ビジネススクール5校を訪問。多くの日本人留学生の皆さん、そして、キャリアマネジメントオフィスの要職の方々にお目にかかり意見交換を行いました。

CAREER DESIGN SEMINAR in Euro 2008 (2008/04/23~05/01)

今回、セミナー/個別面談を実施したビジネススクール

イギリス

  • London Business School
  • University of Cambridge Judge Business School

フランス

  • HEC

スペイン

  • ESADE
  • IESE

欧州トップ・ビジネススクールを7年ぶりに訪問して・・・

欧州トップ・ビジネススクールを7年ぶりに訪問して… - CAREER DESIGN SEMINAR in Euro 2008 (2008/04/23~05/01)

1993年のEU発足以降、EU経済をリードするグローバルなビジネスフレームを備えた若手ビジネスマンの育成を目的として、新たなビジネススクールが誕生してきました。これらは欧州経済全体の合意として設立されていったのですが、欧州MBAのキャリア形成を取りまく最新事情を知ることが、今回の訪問の大きな目的でもありました。

結論から述べれば、プロフェショナルスクールとしてのビジネススクールは、その目的を十分果たしているように思います。各マスコミが発表する評価ランキングに、欧州系スクールが続々とランキング入りを果たしていることからも、それが伺えます。

IESE HALL - CAREER DESIGN SEMINAR in Euro 2008 (2008/04/23~05/01)また、CambridgeやHEC、ESADE、IESEなど、ビジネススクールとして新しい方針を打ち出している各校において、以下のような3つの点が際立っていました。ひとつは、世界数十ヵ国からグローバルに学生が集まっていること。2つめは、勉学する環境(校舎・インタビュールーム・チームスタディールーム・多目的ホール・ITインフラ等々の設備)に投資がされ、すべて新しく整備されているという点。学内の施設は昔ながらの黴臭い図書館風の雰囲気ではなく、建築物としてのデザイン面でも、新しい何かを生み出そうというメッセージに溢れていました。

3つめは、各大学ともまだ若い(歴史の浅い)プログラムであるために、かえって市場のニーズに合わせてプログラムのあり方を模索し、かつ差別化要因を生み出そうと常に改善されていたことです。世界のどこから学生が入学し、世界のどこにMBAの需要があるのか? それを模索しながらプログラムが開発されているようでした。このような取り組み方は、アメリカのビジネススクールのように、学生数が数百名単位になってしまうと難しいことなのかもしれません。振り返って日本のビジネススクールを思うと、まだまだ遅れていると言わざるをえません。

HEC 学生の方々と - CAREER DESIGN SEMINAR in Euro 2008 (2008/04/23~05/01)グローバルな目線で、いかに自校の卒業生を送り出していこうか…学校として良い意味での競争をしている雰囲気がひしひしと伝わってきました。残念ながら私はキャリアの観点でしか各学校を見ることができませんし、クラスの質や学際的な取り組み、学生のレベル等々については論じる立場にありませんが、訪問した先の学校は教授陣も意欲的に揃えていたと思います。このような大学側の積極的な経営方針が、世界市場を狙うリーディングカンパニーをビジネススクールに呼び込む源泉となり、その結果、欧州でMBAの需要と供給が急激に活発化しているのでしょう。

インドや中国に進出したいという欧州企業が増え、そのような地域からの学生もチャンスを掴むために欧州のビジネススクールに通っています。アジアからの留学生を国別学内比率で見れば、まだ欧州では日本人学生の方が多いものの、既にアメリカではアジア留学生に占める日本人比率が低くなりつつあります。今後、欧州のビジネススクールはどこも定員増を計画しており、増員後は欧州でも日本人比率が減少すると予想されます。

以下に、今回訪れた各学校の印象を述べていきたいと思います。実際には、訪問校以外のビジネススクールや大学院に通う学生とも多数面談をすることができましたが、ここではビジネススクールのキャリアマネジメントオフィスを訪問できた学校のみを取り上げることにします。

London Business School

London Business School - CAREER DESIGN SEMINAR in Euro 2008 (2008/04/23~05/01)金融機関出身の学生が多く、卒業後も投資銀行などの金融機関に勤める人が多い印象がある。事実、教授陣やクラスの内容ともに金融分野について充実しており、学生の満足度も高い。就職率も高い。しかしながら金融のみに特化しているわけではなく、学生の出身業界もコンサルティング、製造業など多岐にわたる。欧州の中で米国のビジネススクールと長く競ってきただけに、対米国を意識した取り組み、対抗意識といった文化を持っているように感じられた。

金融業界をはじめとして、既にマネジメント(経営者)となっている卒業生が多い。日本の金融界でもLBS出身者がトップとなっているケースが多々見受けられる。また長年にわたって好・不景気を乗り越えてきた経験が、学校経営にも生かされているようで、サブプライムの問題から金融機関の多くが冷え込んでいるにもかかわらず、学校側に焦りや落胆は感じられなかった。「2002年あたりの状況に比べれば金融業界からの求人もまだまだ健在で、金融業界を除いてはリクルーティングに来校する企業が減少しているということもない」と学校側は強気だった。

University of Cambridge Judge Business School

University of Cambridge Judge Business School - CAREER DESIGN SEMINAR in Euro 2008 (2008/04/23~05/01)キングスカレッジ、ダーウィンカレッジなど、ノーベル賞受賞者が学内キャンパスを歩いているのかと思うと、学問を志すものであれば自ずと襟を正したくなるような雰囲気がある。その中でも2000年に新たに設立されたビジネススクールは、EU統合を睨んだケンブリッジ大学の、まさに起業家精神溢れるプログラムといえる。

プログラムには3つのインターンシップが基本として組み込まれており、座学のみならず実践を通じて実力と価値観を磨くことができるよう設計されている。小規模のベンチャー企業、グローバル企業、そしてコンサルティングワークと、3種のインターンシップを通じて、自身の経験とは異なる業界・職種を知ることができる。また、異なる国籍や価値観を備えたメンバーと協業し、ビジネスとしての成果を出す経験を積むことができる。このような豊富なインターンシップの機会を学生へ提供できている理由は、「ケンブリッジ」というネームバリューからでは決してなく、大学側が学生とともに企業へアタックをかけて受け入れ先を開拓しているからだという話を聞き、その取り組みに強く感動した。

古い施設が建ち並ぶキャンパスの中で、異彩を放つカラフルな建物のビジネススクールは、元病院をリノベーションしたものだとか。他校にはない新たなビジネス教育・人材育成プログラムを生み出そうという学校側の意図は、斬新なカラーリング、リノベーションなど、その建築意匠にも明確に現れていた。また、ロンドンから列車で1時間程度というロケーションは、勉学と就職活動の両方に打ち込める絶好のコンディションであり、学生にとってアドバンテージのひとつであると感じた。

HEC

HEF - CAREER DESIGN SEMINAR in Euro 2008 (2008/04/23~05/01)パリから列車で1時間弱、ベルサイユ宮殿に程近い場所にあるHECは、ケンブリッジ同様に、勉強に専念しながらパリでの企業との面談に出かけられる地の利がある。同校は、以前はISAとも呼ばれた。1980年代・1990年代の卒業生には、政治学や法学などの大学院、工科学のポリテクニークなどと同様の公立大学院の一つとしての学校名「ISA」にプライドを持っている人が多いようだ。しかしながら、現在は学校も学生もHECとして統一されている。

老婆心ながら、日本のISA出身MBA諸氏も、日本において同校がHECとしてのブランドに統一されるよう取り組まれた方が、その発展に効果的だと思われる。採用者の間でもISAは有名だが、まだ現在の呼称:HECは浸透しきれていない印象だ。アメリカでも大学名とビジネススクールの名前が異なるケースや途中で変わるケースなどがあるが、ビジネススクールの価値は「卒業生がいかに社会に出てビジネスリーダーになるか」ということであり、その略歴に書かれた出身校名は極めて重要だといえる。その略歴をみて、次世代のリーダー候補者がビジネススクールを選ぶことになるからである。

HECのキャリアマネジメントオフィスは、学生の就職支援に積極的で、欧州企業との連携が強いように思われた。学校としての評価は上向きになってきており、日本人学生数も中期的には増加傾向にある。プログラムが1年半であることから、他のビジネススクールと就職活動や卒業のタイミングが異なるが、それが不利になることはないようだ。逆に今後は二年制のビジネススクールよりも就学期間が短く、中身は同質で、かつ一年制と比べると就学中にインターンシップを行うこともできるので、その有利性が出てくるだろう。

IESE

IESE - CAREER DESIGN SEMINAR in Euro 2008 (2008/04/23~05/01)経済誌「エコノミスト」の調査機関である「EIU:Economist Intelligence Unit」が発表した世界ビジネススクール・ランキング(Which MBA 2006 Rankings)で1位となったことからも分かるように、急激に評価が高まっている。今回訪問したビジネススクールの中でも、学校経営の観点でいえば、最も投資局面にある学校だった。

バルセロナの市街の高級住宅地が立ち並ぶ(著名サッカー選手などが住む)丘陵地域にあり、眼下に広がる市街地にはガウディのサグラダ・ファミリアが見える。校舎はどんどん建て増しされており、ホテルのような立派な施設が最新の建築デザインをもって作られていた。エグゼクティブMBAプログラム向けの校舎などは、数百名が入れる公演用のホール、レストラン並みの食堂を備えており、採用企業のパートナーレベルと学生10名程度が簡単にランチオンミーティングを持つことができそうだった。

IESE からの眺望 - CAREER DESIGN SEMINAR in Euro 2008 (2008/04/23~05/01)このような実践向きの細かい目的を想定した設備、その気配りは、学生の勉強への意欲や就職のチャンス、訪問する企業の満足度を高める装置となるだろう。学校側がどのようにして資金調達を行っているのか、どのような経営方針・マーケティング戦略を展開しているのか、私自身、極めて高い関心を持った。キャリアマネジメントセンターのディレクター、アシスタントディレクターの方に、学内のランチに招待していただいただけでなく、くまなく構内を案内、プログラム内容についても説明していただいた。はては日本人学生や日本で就労したい学生について、レジュメブックにマーキングして個別で売り込んでくださるなど、過去にどのビジネススクールでも経験したことがない対応をいただいた。まだまだアジアからの学生を多数受け入れていく方針で、日本人学生・日本企業からの求人を歓迎しているとのこと。今後も学生数が増加していくと思われる。

二年制のプログラムは、夏のインターンシップ先も充実しており、同校の卒業生はメジャーな戦略コンサルティングファームや投資銀行、大手事業会社へ就職している。約200名の卒業生の就職先比率は、約25%がコンサルティング業界、約30%が金融業界、約45%が事業会社となっている。

ESADE

photo:ESADE - CAREER DESIGN SEMINAR in Euro 2008 (2008/04/23~05/01)バルセロナの市街を見下ろす高級住宅地、IESEと同じ丘陵地域に位置し、IESEから歩いても5分程度という至近距離にある。同校も昨年「Wall Street Journal」が発表したInternational MBAランキングで1位となるなど、その評価を高めている。スペイン語圏の学生も在籍していてスペイン語でMBAを習得することができるが、海外からの学生を重視しており英語によるコースが拡大傾向にある。現状でも十分に立派な校舎だと思ったら、それは仮の建物で、2010年からは丘陵の反対側にさらに大きな新校舎を建築しているとのこと。スペインのビジネススクールは、あくまでも投資局面にあるようだった。

同校も独自の戦略を持っていた。国際的な学生構成・国際的な就職先に加えて、エクゼクティブコースのような色合いのプログラムを用意し、以下の2つの階層の学生を受け入れている。ひとつは職歴が4~5年程度のジュニア人材向けで、9月からプログラムが始まり翌年夏にインターンシップを受け、翌々年の4月に修了するという18ヵ月のもの。もうひとつは職歴が7~8年程度のシニア人材向けで、4月から始まりインターンシップなしで翌年の4月に履修が終わる。こちらは期間が12ヵ月間となる。

photo:ESADE校内にて - CAREER DESIGN SEMINAR in Euro 2008 (2008/04/23~05/01)どちらも4月卒業だが、コースが分かれているわけではなく、クラス内で学生は混在することになる。ケーススタディーなどでは、職歴に厚みのあるシニアは、まだ職歴の浅いジュニアにリーダーシップを発揮する機会が得られる。就学期間が短いうえに、そこで培われたリーダーシップ等の能力は採用企業でも評価されるだろう、という学校側の狙いである。一方ジュニアは、シニアとの交流を通じて他業種・他職種への理解を深めることができ、それらの見識は就職活動時のインタビューで活きてくる。このような相互のメリットを狙ったコース設計が興味深かった。

同校でも、企業とのコンタクトについてキャリアマネジメントオフィスが重要な役割を担っており「日本のサーチファームと積極的に意見交換を続けたい」「毎年訪問に来て欲しい」との要請を受けた。学生の就職状況の掌握に意欲的で、弊社を通じて就労できた人がいたら積極的に教えて欲しいとの要請もあったほど。

日本人学生については、アジア地域担当という方がおり、日本人のリーダーシップを非常に高く評価してくださっていた。外資系企業出身のある在校生が、国籍・国境を越え、考え方の違いなどを非常に明確に伝える能力に長け、他の欧州出身者やアジア出身者の信頼を得て彼らを取り纏めているとのこと。日本人ビジネスマンのリーダーシップ不足、将来の経営者としてリーダーシップの重要性が問われている昨今、たった一人でもこのような日本人MBAがいれば、日本人MBA全体に対する期待が高まる効果がある。ESADEにおいて、欧米型とは異なるリーダーシップを発揮している日本人MBAの存在を知ることができ、感慨深かった。

少人数の欧州ビジネススクールならではのことなのかも知れないが、このようなきめ細かい学生の状況掌握は素晴らしいと感じた。このあたりの姿勢・取り組みが、近年の高い評価につながっているのだろう。

CAREER DESIGN SEMINAR in Euro 2008 (2008/04/23~05/01)

今回、以上の5校を訪問することができましたが、LBS以外はすべて初めての訪問であり、私自身にとっても非常に有意義で新鮮なツアーとなりました。(残念ながら当初予定していた、トップスクールのひとつであるINSEADは、時期が合わず既に春休みとなっており、学生諸子にも学校関係者にもお会いできませんでした。)

今後、欧州MBAを目指す人が、単に“一年制で時間と費用が少なく済むから”という理由で欧州を選ぶとすれば、これらのトップスクールには、もはや合格できないでしょう。学生数の増加は、もちろん競争を生み出し、大学側も合格者の質をどんどん厳選していくからです。

「business school is business」と昔からよく言われますが、まさにその言葉に象徴されるような、欧州トップスクールの努力と勢いを感じることができました。今後、アクシアムとしても、欧州トップスクールMBAの方々のキャリア開発に少しでも助力できるよう、卒業時のみならず、その先も、末永く応援していきたいと思います。各学校のキャリアマネジメントオフィスを見習い、常に新たなMBA需要も開拓していきたいと強く感じました。

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株式会社アクシアム イベント事務局
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