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2012年10月

グローバル・エリートの時代 -個人が国家を超え、日本の未来をつくる
倉本由香利 (著)

倉本氏は、東京大学物理学修士、マサチューセッツ工科大学のMBAで、戦略コンサルタントという才女だが、彼女の初の著書「グローバル・エリートの時代」は、これまでにあった、いわゆるビジネスエリートや有識者の書とは異なり、若々しく瑞々しい感性に溢れている。精緻な考察の書であり、今日の日本を考える上で重要な要素がたくさん詰っているように思う。読み物としては未熟かもしれないが、若い時分のピカソやマチスの作品もそうであったように、時代と経験を経てこれから更に洗練されていくのだろう。

倉本氏は、グローバル企業やグローバルNPO・NGOなど、多国籍の人材が集まるグローバルな組織で活躍できる人材を「グローバル・エリート」と定義している。それには、グローバルに活躍できるビジネスリーダー層、いわゆるグローバル・リーダーも含まれるが、リーダーであるか否かに関わらず、より広い意味で、グローバルな環境で仕事ができる人、活躍できる人を「グローバル・エリート」と呼ぶ。多様な文化的背景の人々を結びつける橋渡しの役割を果たす人や、グローバル・リーダーを補佐的な立場で支える人も「グローバル・エリート」なのだ。更に著者は「グローバル・エリート」こそが、グローバル化の第三の波(※1)に直面する今日の日本で必要とされる人材であると主張する。

また、ジャック・ウェルチのGE改革や、イメルトのリバース・イノベーション(※2)、サムスン電子の人材活用戦略、クレイトン・クリステンセン教授のイノベーションのジレンマなど、様々な事例に学びつつ、これからの日本企業と日本人は、自国や自分の利益のみならず、日本発の技術やサービスにより世界中の人々の暮らしが豊かになるグローバル化を目指すべきと主張する。日本の未来を想う著者の期待と願いが込められているように思う。

私自身を含む年配層は、著者とその主張について「若いなぁ。グローバルビジネスの修羅場など経験していないだろう。わからないだろう。」と批判したくなるかもしれない。しかし、事実、グローバル化に出遅れた日本に「グローバル・エリート」が必要であることは言うまでもなく、「リバース・イノベーション」に象徴される新しい視野や発想が、今日本に蔓延する閉塞感を突破するのに必要なのではないか。倉本氏のような若い世代の意見に耳を傾け、彼ら・彼女らの価値観や時代の見方について学ぶべきと思う。年配層にも、若い世代の人にも、今こそ読んでいただきたい書である。

最後に、倉本氏が提唱する「グローバル・エリートに必要なスキル」をご紹介する。

【グローバル・エリートに必要なスキル】

  1. 文化的背景や価値観の違いを感じる「感受性」
  2. 異なる価値観や行動への「理解力」
  3. 多様性を受け入れ、やり方を変えられる「柔軟性」
  4. 異質な環境で自分が貢献する「オーナーシップ」
  5. ゼロからトップダウンで作る「ゼロベースの構築力」
  6. 違いを乗り越えて問題解決を行う「問題解決型思考」
  7. 積極的かつ論理的な「説明力」
  8. しつこくコミュニケーションをする「粘り強さ」

※1 「グローバル化の第三の波」=経営や研究開発なども含む企業活動全体と組織のグローバル化 未来学者のアルヴィン・トフラーが、世界経済の基本要件が農業革命、産業革命、情報革命の三つによって変化したことをそれぞれ「第一の波」「第二の波」「第三の波」と呼んだのにならって、著者が日本のグローバル化の三つの段階をそれぞれ以下の通り名付けた。

  • 「グローバル化の第一の波」=営業やマーケティングなど、販売に関わる機能のグローバル化
  • 「グローバル化の第二の波」=生産など労働集約的な機能のグローバル化
  • 「グローバル化の第三の波」=経営や研究開発なども含む企業活動全体と組織のグローバル化
    (倉本 由香利『グローバル・エリートの時代』講談社、2012年、pp.30-33)

※2 リバース・イノベーション 新興国で生まれた機能がシンプルで低価格の製品・イノベーションを先進国に逆流させること。 (倉本 由香利『グローバル・エリートの時代』講談社、2012年、pp.61-62)

グローバル・エリートの時代 -個人が国家を超え、日本の未来をつくる 出版社:講談社
著者:倉本由香利 (著)