転職コラムキャリアに効く一冊

キャリア開発に役立つ書籍を毎月ご紹介しています。

2018年8月

1分で話せ ~世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術~
伊藤 羊一(著)

はじめにこのタイトルを見た際、私は「わかりやすい話し方とは?」や「自分の意図を理解してもらうにはどうしたらいいのか?」などといった内容を説明してある本だと思っていました。キャリアコンサルティングの現場、あるいはクライアント企業に対してのインタビューの場面などで必要な技術ですので、自身の話し方を振り返り、改めて確認するためにも手に取ってみました。

実際にそういった内容ももちろん書かれていますし、それらにまつわるテクニックも紹介されています。ただ、私が無意識に持っていた“前提”が違っていました。「伝える(プレゼンする)」とは、「理解してもらうだけではなく、相手が動く(相手を動かす)」ことが究極の目的であり、「そのために、できることをすべてやりきる」という点です。読み進めるにつれ、納得感が非常に増した一冊でした。

「結論から話して下さい」
社会人になったばかりの頃に、よく私が先輩や上司から言われた言葉です。また、現在の職務においても面接時の留意点を伝える際に、この言葉はよく出てきます。

「なぜそう思ったの?」
これもまた、よく言われた言葉です。きちんと伝えきれていないゆえに発せられるとは理解しつつも、「ちゃんと考えているの?」と詰問されているようで、正直、あまりこの問いかけは好きではありませんでした(笑)。ただ、自分の考えや意見を伝える上で、「なぜそう思ったのか?」という理由や根拠が必要不可欠であることは、今なら深く理解できます。

「イメージがしづらいんだけど」
これもよく言われました。当時の私の提案が、きっと具体性のないものだったのでしょう。

クライアントへの提案、上司への報告、社内への共有等々。皆さんも日々、大なり小なりプレゼンテーションを実施する機会があるでしょう。得意な方もいれば、苦手な方もいると思います。

本書では、そもそも聞き手が話をしっかりと聞いているとは限らないことから「1分で話せるように話を組み立て、伝える」ことを基本に「1分でまとまらない話は何時間かけてもまとまらない」「どんな話でも1分で伝えることはできる」とその秘訣が紹介されています。さらに、話す内容は「結論→根拠→具体例」という順番で構成し、不要な言葉をできるだけ削ってすっきりと、かつ中学生でもわかる平易な言葉を使って簡潔に伝えること、聞き手にイメージを描いてもらい、自分に当てはめて考えられるようビジュアルや具体例を示すこと、なども挙げられています。一見どれも基本的なことのように思いますが、なかなか実行できていないのではないでしょうか?

また上記にとどまらず、いかに相手の立場に立って話すか、伝え方のパターンも記載されていますので、参考にしていただけることが非常に多いと思います。

きれいなプレゼンテーションをするだけでよければ、ロジカルに組み立て、わかりやすい言葉を使ってシンプルに伝えればいいのかもしれません。キャリアコンサルタントという仕事においても、これができるのとできないのとでは大きく結果が変わってきます。ただ、冒頭でも触れたように、現実的なビジネスの場ではそれだけでは何も動かないことも多いのではないでしょうか。

「理解してもらうだけではなく、相手に動いてもらうためにすべてやりきる」。この本ではゴール(目的)を見据えつつ伝えることの重要性が繰り返し主張され、そのためには根回しやアフターフォローも積極的にやるべしと書かれています。日々の業務はもちろん、私のように人の人生を預かる仕事であればなおさらです。結果を出すために、また皆さんのキャリアの展望を叶えるために、“できることは何でもやる”という姿勢を持ち続け、伝える技術を磨き続けたいと思います。

1分で話せ ~世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術~ 出版社:SBクリエイティブ
著者:伊藤 羊一(著)

コンサルタント

伊藤 嘉浩

株式会社アクシアム 
取締役/エグゼクティブ・コンサルタント

伊藤 嘉浩

2008年、アクシアムに参画。エグゼクティブ・コンサルタントとして、経営者やプロフェッショナル人材、MBA、若手・次世代ビジネスリーダーまで、幅広い年齢層へのコンサルティング、キャリア開発、紹介実績あり。アクシアム参画前は、商社にてアパレルブランドの輸入販売や海外事業開発を手掛け、新規事業の立ち上げと事業の黒字化を達成。事業計画策定、商品企画、マーケティング、リテールマネジメント、組織開発、生産管理などの経験を持つ。海外事業開発をはじめとする“実業経験を持つキャリアコンサルタント”として、個人のグローバルなキャリア、イノベーティブなキャリアの実現を使命とする。

日本キャリア開発協会認定 キャリアディベロップメントアドバイザー(CDA)