転職コラム注目企業インタビュー

楽天株式会社2012.03.14

楽天株式会社 執行役員経営企画室長 野田公一氏に、楽天の今後のグローバル戦略ならびに同社が求めるグローバルマネジメントリーダー候補についてお話を伺いました。 [掲載日:2012/7/26]

楽天株式会社

渡邊

楽天のグローバル展開については、海外企業買収や提携、海外子会社設立や、欧州・アジアの本社機能設置など、すでにメディアでも詳しく取り上げられていますが、改めて今後の構想や戦略について教えて下さい。

楽天株式会社

野田氏

楽天は、今後Eコマースの分野では27か国・地域を目標にグローバルな市場に挑戦していきます。すでに、米国、欧州をはじめブラジル、インドネシアなど、現在13か国・地域に広がっていますが、まだまだ広げていきます。この27か国・地域は、インターネット先進国のみならず、今後急激に拡大する新興国を含んでいます。規模や成長性などを精査して選定した地域です。また全てを日本の本社主導で行うのではなく、欧州、アジア、米の3拠点に地域本社を設置し、地域ごとにマネジメントをしていきます。現時点では楽天グループ全体のEC事業で国内対海外の取扱高比率が9対1ですが、これを将来的には海外比率を7割程度にもっていきたいと思っています。 現在楽天では、Eコマースにとどまらず、銀行、クレジット、トラベルなど、様々なサービスをワンストップで利用できるようになってきています。そして、楽天グループ内を還流する巨大な経済圏のことを「楽天経済圏」と呼んでいますが、この「楽天経済圏」を世界中に広げようというのが、楽天のグローバル戦略です。「楽天経済圏」のグローバルな拡大には、1)楽天の強みである、世界的にみてもユニークなビジネスモデル、2)ブランドコンセプトや成功のコンセプトなどの「楽天主義」、3)Empowerment が重要と考えます。

まず、楽天のB to B to Cビジネスモデルについてですが、創業時から今まで変わらず、独自性と競争優位性があります。出店企業様が中小零細企業であっても、楽天市場のプラットフォームを活用することで安く、早く、大企業に負けずに自社製品を販売提供することができます。さらにそれはエンドユーザー様にもショッピングの楽しさを提供し、安く、早く買えるという利便性にもつながります。このモデルが創業時から今までの成長を支えています。それはまた、楽天社員にとっても、会社が成長するというだけではなく、出店企業様やエンドユーザー様に喜んでもらえている実感が得られ、胸を張れる仕事ができるということにつながっています。出店企業様、エンドユーザー様、そして楽天にとってもWin & Winとなるビジネスモデルです。

つづいて、「楽天主義」について。楽天は、「ブランドコンセプト」や「成功のコンセプト」など楽天の経営理念や行動指針などをまとめた『楽天主義』といったものを大事にしていますが、これは楽天のグローバル化においても不可欠かつ極めて重要な指針です。海外の各地域では文化も商習慣も異なります。その中で、「楽天主義」を世界中の楽天グループ社員が共有することは極めて重要な意味を持ちます。世界中の楽天社員にこれを浸透させながら、各国・地域における現地顧客満足の最大化を目指します。

第三に、 “Empowerment=元気にする”という価値観です。創業時から変わらない考えであり、これは楽天がグローバル化しても不変です。楽天は創業時に、「インターネットで日本を元気にする」と決意していました。今後はさらに世界を元気にしたいと本気で思っています。「日本を元気に。世界を元気に。」それこそが楽天がもつ社会への使命であり、貢献です。前述のように、世界中の出店企業様、エンドユーザー様、そして楽天社員が元気になることが、企業として目指していることです。

渡邊

「楽天は既に大きな会社だからもうチャンスが少ない」とか、「退社する人が多い」とか、「体育会系企業で、オーナー会社だから統制がきつい」、「女性は活躍できない男性優先の会社だ」、というような声を聞くことがありますが、そのような噂に対しては、野田さんはどのように思われますか。実際はどのような会社なのでしょうか?

楽天株式会社

野田氏

楽天は常にベンチャー企業の気風を持ち、グローバル規模でもさらなる成長に挑戦しようとしています。これは今までの日本の製造業の国際化とはまったく違う試みが必要だと思います。インターネットビジネスは、進化系ビジネスです。今も世界中で凄まじい速度で進化が進み、新しいサービスや企業が生まれては消え、適者生存・自然選択が進んでいるといってもいいでしょう。その意味で大変厳しい競争が起きている市場です。楽天はベンチャーとしてリスクを取る企業です。それは「この競争に勝とう」、「危機感を常にもって、世界に出て行こう」という意思でもあります。組織として常に前進、改善を続け、競争に勝たなければなりませんから、確かにチームで行うスポーツ競技と似ているところはあるかもしれません。

楽天株式会社

ただ、世界で戦っているトップ企業のほとんどは、楽天の成功の5つのコンセプトと同じような原則を持っていると思います。それが体育会系ということであれば、楽天のみならず世界のトップ企業の多くは体育会系と言えると思います。

ただ、世界で戦っているトップ企業のほとんどは、楽天の成功の5つのコンセプトと同じような原則を持っていると思います。それが体育会系ということであれば、楽天のみならず世界のトップ企業の多くは体育会系と言えると思います。

しかし、決して官僚的でもなければ、軍隊的なマスゲームを行っているというようなこともありません。まったく逆で、個性を尊重しています。厳密なドレスコードもありません。唯一のドレスコードは左胸につける社員証だけです。社員全員が同じ行動を取ることを求めている訳ではなく、自律や個性を大事にしている会社です。前述したように、楽天は常に前進、改善しています。仮説、実行、検証、そして仕組み化を重視していますので、変化している会社であり、硬直することはありません。

三木谷自身が常に進化していますので、組織、社員も進化が求められています。楽天は変化に強い会社として、経営環境の変化に強い、進化できる人を求めているとも言えるでしょう。

楽天はすでに楽天市場だけで流通総額1兆円、従業員およびスタッフの数も国内外含めグループ全体で1万人超の規模になっています。オーナーが全て決めることなどできません。だからこそ、楽天の社員は、幹部も一般社員も、年齢や国籍、性別にかかわることなく、等しく「楽天主義」というものを明確に理解し、自立していることが求められます。

また、女性のキャリアについては、三木谷と女性の役員がイニチアチブをとり、女性のキャリア開発の課題解決への取り組みを始めています。能力次第で、キャリアのチャンスは沢山あります。年功序列など日本式な仕組みもありません。実力次第で、年齢、国籍、性別などにかかわらず、キャリア採用でも新卒採用でもチャンスがある人事制度になっています。

MBA保有者の方など、経営者、マネジメントリーダーになることを目指す覚悟がある方は大歓迎です。楽天グループにはすでに沢山の会社・事業があり、それぞれに社長、役員がいます。三木谷は楽天グループの大株主であると共に、グループ内に多数いる社長を束ねる社長と言えます。そして楽天グループの拡大と挑戦のためには、経営者を目指すようなビジネスリーダー、マネジメントリーダーがまだまだ必要なのです。

グローバル化を進める楽天では、英語力、コミュニケーション力、そして覚悟がない方や、変化に弱い方は受け入れられませんし、仮に入社されても、早晩退社することになりかねません。そこは入社前にしっかり自問自答しておいていただきたい部分です。

渡邊

楽天が求める人材、グローバル化に向けたマネジメント・ポテンシャル、ビジネスリーダー候補とはどのような方でしょうか? 以前、三木谷社長は、海外MBA留学生に期待している点として、「ビジネスフレームをしっかりもっていること」を挙げておられましたが、そのあたりをより具体的に伺えますか?併せて、楽天の中でのキャリアパスの可能性についてもお聞かせください。

楽天株式会社

野田氏

英語力、コミュニケーション力、そして覚悟、変化に強いことは挙げましたが、マネジメントを目指すには、さらに、知識、スキル、マインドの3つが重要です。

会社の経営は沢山の変数がからんでいますし、ビジネス上の判断を行うには、考えるべきことが沢山あるでしょう。MBAで単語レベルや知識レベルだけで経営を学んでも、実践的な経験がなければ、経営上何を取捨選択すべきか、どのように決断すべきか、分かるものではありません。経験も含め、ビジネスを構造的に考えることが大事です。そしてさらに言えば、経験するだけでも決断力はつかず、3つめの「マインド」というのが最も大事になってきます。「実践、実行段階にあっては、何が起きても、覚悟を決めたらやり遂げる」という胆を据えるというような意味です。世界を元気にするための使命感、コミットメント、精神力、意志の強さというものが、リーダーには不可欠です。楽天の選考では、そのような資質をもっているかどうかを見ます。

楽天入社後には、チャレンジングなタスク、環境、課題、目標は、いくらでも与えられます。それを乗り越え、成果を挙げようとすれば、おのずとリーダーシップが磨かれることになります。経営者になりたいなら、まずはどんな部署、役割からでも、覚悟をもってやってみることです。マーケティングでも、財務会計でも、例え国内業務からでも、経営の資質がある人材は、必ず短時間で成果を出してきます。キャリアを積み、リーダーシップを磨いていく人材を多数見てきました。
楽天株式会社私自身もMBA保有者ですが、楽天入社後、マーケティング、子会社経営、人事、海外事業開発、M&A、PMI、経営企画など、様々な未経験の分野、課題に挑戦してきました。そして、経験を積むたびに、自分にとって新しい可能性が引き出されていると感じます。新しい未経験の課題を不遇だとか、やりたくないとか感じるのではなく、常に、自分の使命だと思い取り組んできました。それを使命と感じるかどうかは、「楽天主義を共有できているかどうか」だと思っています。「世界を元気にできる、胸を張れる仕事ができている実感が持てるかどうか」が何よりも大事だと思います。

他にも、MBAを持っていて活躍している人も多数いますが、MBAを持っていなくても、同様の知識、スキル、マインドを持っている人、「楽天主義」をしっかり理解している人は、キャリアアップを果たしています。戦略コンサルティングから転職し、不採算部門の建て直しで見事に成果を出して、複数企業の経営を任されている人や、国内で実績を上げ海外での経営を任されるようになった人など、楽天でキャリアを広げている人は多数います。マネジメントを目指す人、自分で仕事を創れる人は楽天で成功すると思います。

最後に、もうひとつ。 楽天のグローバル化には、「楽天主義」を共有することが大切なのはお話しした通りです。それはグローバル企業においては、Integrityと呼ばれる大事なコンセプトにも通じるものですが、さらに、「楽天がもつ価値観と現地の個性のバランスをとること」も大切になってきています。

コンシューマビジネスでもある楽天ビジネスでは、やはり進出先のエンドユーザー様やクライアントのニーズにあわせた判断をすることも大事です。現地法人の社長やマネジメント層は、本社と現地市場の間で大変な苦労をしています。「楽天主義」を共有しているからこそ、徹底的な議論、対話、十二分なコミュニケーションをとりながら物事を決定しているということもお伝えしておきたいと思います。

グローバル化においては、海外グループ企業の経営者の苦労は多く、覚悟が必要です。しかも、競争に打ち勝つためのスピードが求められています。楽天の進化に追いつける人ではなく、進化をリードできる人材が求められています。

楽天は、グローバル化への覚悟をもった方を歓迎します。


大尾嘉氏へのインタビュー

楽天株式会社

楽天株式会社 執行役員 大尾嘉宏人氏に、楽天の今後のグローバル戦略についてお話を伺いました。海外事業の一翼を担い活躍されている氏に、実際の仕事やご自身の楽天への転職経緯、入社されてからのキャリアついてお話しいただきました。

渡邊

楽天様のグローバル展開については、すでにメディアでも詳しく取り上げられていますが、実際に海外で活躍されている大尾嘉さんから、楽天のグローバル化、マネジメントについてお話を聞かせてください。

大尾嘉氏

楽天の最初の海外進出は、米国のアフィリエイト広告会社のLinkShare買収によるものでした。EC事業においては、タイのインターネット・ショッピングモール大手TARAD Dot Com Co., Ltd. 、米国有数の EC 事業者 Buy.com Inc. 、フランスNo.1のEC事業者PriceMinister S.A.(現PRICEMINISTER S.A.S.)、ブラジルの有力ECプラットフォーム提供者Ikeda Internet Software LTDA. 、ドイツの大手EC事業者 Tradoria GmbH、そして英国の大手EC事業者 Play Holdings Limitedなど、積極的に海外のEC事業会社の買収と子会社化を進めてきました。

また、台湾では現地小売流通大手の統一超商股分有限公司との合弁で『台湾楽天市場』を運営、インドネシアでは現地の大手複合メディア企業PT Global Mediacom Tbkとの合弁でインターネット・ショッピングモール『Rakuten Belanja Online』のサービスを展開しています。そして最近はマレーシアには自ら子会社を設立しました。さらにEC事業以外にも、ソーシャル・ネットワーキング・サービスを展開するPinterestへの出資しているほか、スペインの動画配信サービス事業者Wuaki.TVやカナダに拠点を置く世界有数の電子書籍事業者のKobo社を買収しています。

楽天株式会社

楽天のグローバル戦略とは、楽天市場型のEC事業を主軸としながらも、LinkShare、 FreeCauseやKoboなどの事業をEC事業の周辺事業として取り込み、EC事業を活性化させ、シナジーを生み出すことです。日本で拡大してきた「楽天経済圏(Rakuten Eco-System)」を海外においても構築していくということです。また、各ローカルは、それぞれがビジネスとして完結しながらも、国境を越えてEコマースでつながっていきます。これは単に流通だけの話ではなく、楽天のグローバル・ビジネスの上で重要な戦略です。

また、楽天のグローバル展開においては、「楽天主義」と言われるブランドコンセプト、成功のコンセプトといったものを各国に導入し浸透させていくことが大事だと考えています。

■ブランドコンセプト

  • 大義名分:【Empowerment】
  • 品性高潔:【気高く誇りを持つ】
  • 用意周到:【プロフェッショナル】
  • 信念不抜:【GET THINGS DONE】
  • 一致団結:【チームとして成功を掴む】

■成功のコンセプト

  • 常に改善、常に前進
  • Professionalismの徹底
  • 仮説→実行→検証→仕組化
  • 顧客満足の最大化
  • スピード!!スピード!!スピード!!

(参照サイトはこちら

当然、国が違えば文化も商習慣も異なります。それを超えてグローバル化していくには、英語によるコミュニケーションが必要なのはもちろん、ビジョン、ミッションを共有し、楽天流マネジメント手法を共有していくことが不可欠です。楽天の企業としての確固たる信念、つまり「人と社会をエンパワーメントし、自らの成功を通じて社会を変革し豊かにする」というミッションを共有することが重要になってきます。

楽天株式会社

また、ブランドコンセプトや成功のコンセプトのすべてが、実践において意味を持ちます。 例えば、成功のコンセプトの3つ目に、「仮説→実行→検証→仕組化」がありますが、これは買収先企業のPMI(買収後の業務統合、改善)には欠かせないものです。単に、精神論だけ掲げていても、誰が何をしているかまったくわからず、統合は進みません。 特に海外では、宗教的な慣習の違いもありますし、日本と比べ個人主義的で自己主張が強く、各人が権利を主張することが普通です。そのような中で成果だけ評価していては、大事なチームワークが育ちません。 従い、業務を可視化(見える化」して、他の人達が何をどのように仕事をしているか浮き彫りにすることが重要です。その上で、成果を厳しく採点するだけではなく、途中のプロセスについても共有し、評価できるようにするのです。

そして、「何故望む結果がでなかったのか」、「何故そのような判断をしたのか」、「どうすれば次回はよくなるのか」を再検証することも重要です。任されているからとか、分かっているからという慢心はビジネスを弱くしてしまいます。

そういった意味で、社員との対話は欠かせません。仮説は大事ですが、海外ではこの仮説やお互いの認識が、相互に事実確認を怠った結果、もとより合致していなかったということがよくありますので、十分なコミュニケーションをとってすり合わせる必要があります。

「楽天主義」の素晴らしいところの一つに、グループ内で、良い事例、成果があれば、それをベストプラクティスとして共有することがあげられます。これは楽天が成長してきた基盤です。 徹底的な実証主義。データを分析し、そこから導かれる方法を実践してみて、機能すれば仕組化させ、いっそうスピーディーに加速させる。ダメならやめる。他に良いやり方があれば、また検証の上で試してみる。これをひたすらやり続けています。

ただ、ここまでお話ししただけでは、「グローバル化したアメリカの会社でも同じだ」と言う方もいるかもしれません。しかし楽天には、楽天主義に加えてさらに「行動規範8ヶ条」というものがあります。朝礼、名札、挨拶などです。

この行動規範が重要であることも説明しておきます。

海外では、この8つの行動規範をいきなりやれといっても、意味が理解できない人が沢山います。 しかし、楽天のようなサービス業では、挨拶が極めて重要な意味を持ちます。「毎日顔をあわせて挨拶することや週一回でも朝礼で会社や業務の情報を共有することで生産性が高まる」ということが実証されていることを説明し、理解してもらって試しにやってみる。すると、実際に生産性が上がるのです。

こうしたことに否定的な人もゼロではありませんが、「コンセプトは理解し、概念的には共感しながらも行動に落ちていなかった人」でも、体験的にやってみることでチームワークが生まれるなどの効果が実感できるのです。

私は、そのような経験を何度もしてきています。海外のグループ化した企業の経営改善やインテグレーションを行う上で、8つの行動規範の効果を実感しています。

さらには、この楽天主義が浸透した時の外国人やチームの馬力には、目を見張るものがあります。 楽天主義は、学びながら成長する組織の基礎となるものであり、個々の人やチームが成長をすることができる、きわめて実践的な方法です。結果的に業績があがるということが、何よりの証です。

そして、今、楽天に入って良かったと言ってくれる社員が海外でも増えています。

渡邊

「楽天は既に大きな会社だからもうチャンスが少ない」とか、「退社する人が多い」とか、「体育会系企業で、オーナー会社だから統制がきつい」、「女性は活躍できない男性優先の会社だ」、というような声を聞くことがありますが、そのような噂に対しては、大尾嘉さんはどのように思われますか。実際はどのような会社なのでしょうか?

大尾嘉氏

確かに楽天を退社した方もいます。その理由には何かあるのかもしれませんが、多くのキャリア採用で入社した人は、楽天の中でLifetime Valueが高まると考え、まだまだ挑戦を続けています。 前述のとおり、楽天主義はチームとして勝とうということですが、そのチームの成長と同時に自分の成長が感じられることが、彼らが楽天で働き続ける一番の理由だと言えます。

また、「人は変われる」ということが楽天で5年間働いてきて一番実感することです。 特に海外で仕事をすると、よくわかります。 私は、国内のビジネスで楽天主義をしっかり身につけた上で、海外の事業に就任することができました。これはとてもラッキーでした。

海外では、もとより男女の差も年齢も関係ないですし、三木谷というオーナーがどんな人かもあまり重要視されないように思われます。 それよりも、楽天という会社が創業来掲げてきたミッション、ビジョン、コンセプトが重要であり、楽天がここまで成長し大きくなったそのノウハウを学びたいという人のほうが多いように感じます。

また、楽天は既に大きくなってしまった会社というよりも、日本からアメリカ、そしてさらに世界市場に挑戦する、まだ大きくなる成長途中の面白い企業と受け止められることの方が多いように思います。

楽天は、海外ではまだまだ知名度の低い会社です。 この楽天ブランドを世界中の顧客やユーザに広げること、顧客満足を最大化するためにチャレンジすることには非常にやりがいを感じます。楽天は、まだまだこれからだと思っています。

また、そこでは、あたかも子会社に指導しに行くのだという管理者は求められていません。 「楽天の新しい仲間と世界を元気にするための挑戦をしている」という考えを持っていることが求められます。そういう考え方ができることが、楽天におけるグローバルリーダーの条件だと言っても良いように思います。

渡邊

楽天が求める人材、グローバル化に向けたマネジメント・ポテンシャル、ビジネスリーダー候補とはどのような方でしょうか? 大尾嘉さんご自身、35歳で楽天に転職されて5年間で本社執行役員に就任されたわけですが、これから楽天に転職しようと考えている20代、30代の方、あるいはMBA取得後のキャリアとして楽天を考えている方々に向け、楽天でのキャリアパスの可能性についてお話ください。

大尾嘉氏

凸版印刷でビットウェイのスピンオフを担当し、その会社の設立・増資、財務・経理、経営企画・事業管理、人事など、業績改善にむけて全力投球しました。仲間と一から会社をつくり、軌道に乗せることができたのです。その時35歳だったのですが、ふと将来のことを考えるゆとりができ、節目のようなものを感じていました。

そこで、複数の人に相談したところ、いわゆるオペレーションの経験をいかしてグローバル化やマネジメントにも挑戦できるということで楽天を紹介してもらい、興味を持ちました。 実際、インタビューしたらそのとおりで、「これなら貢献できる」「やりたい」と思い、楽天に転職することにしました。凸版でそのまま安定的にキャリアを積んでいくこともできたと思いますし、楽天に入社したらその後、キャリアパスがどうなるかわからないという一抹の不安はありましたが、性分としてチャレンジしたい気持ちが勝ったということだと思います。

ビットウェイでは部長職にありましたので、私が楽天にいわゆるノンタイトルで転職することには、反対される方もいました。 ある方には、「一般常識からすると、役職名を下げて転職するのは避けるべきことであり、レジメを汚すことになるから止めた方がよい」とまで言われました。ただ、私は逆にそれにこだわったら何も成長ができないと思ったので、職種やタイトルにはあまりこだわらず、楽天に入る意思決定ができました。

現職で部長だから次も部長か執行役員クラスでないと転職しないと言って、なかなか転職が実現しない方、あるいは意思決定できない方もいらっしゃるかもしれません。 しかし、私はタイトルや役職以上に、何ができるか、どんな成長ができるかのほうが大事だと思います。また、報酬はタイトルに対して支払われるものではなく、成果や責任に対して支払われるものと思っています。

楽天には、それが反映された制度があり、報酬が必ずしもタイトルに連動しません。

ちなみに、私はいまKobo社にいますが、ここではノンタイトルです。ポジション、バッチで人を動かそうと考えていたら、海外のベンチャーでは通じません。 「大尾嘉が言うんだから、そうしよう。大尾嘉が言うんだから信用してみよう。」と言われるようになる必要があるというのが、私のもともとの考えですが、この考えは、楽天に入社後にさらに強まりました。

私の上司にあたる、そして大きく影響を受けた楽天マネジメントリーダーから私が言われ続けていることでもありますが、海外に来てもそのような考え方で仕事ができたからこそ上手くやれたところがあると思います。

タイトルで人を動かそうとしていたら、人も組織も成長しないと思います。人は、思想や行動に共感し、自ら動いてくれるものです。

今も、親身になって社員と接し対話するように心がけています。私自身、三木谷の朝礼での言葉や、役員から直接激を飛ばされたことほど、良く覚えているものです。 「安定を求めちゃいかん」、「頭がちぎれるほど考えろ」、「ビジネスをちゃんと因数分解しろ」など沢山の言葉をかけてもらい、考え方を学んで成長することができました。

今年、私は40歳になりましたが、楽天では、これからも成長できるし自分を変えられる気がします。私にもエゴや葛藤がありますので、大事な判断で迷う時や、人生の節目でいろいろ考えてしまうこともあります。そんな時には、いつもこんな生の声を思い出し、「そうだ、そうだ。」と自分で気持ちを引き締めたり、励まされたりして前に進んでいます。

※当記事でご紹介している内容は、ご登場頂きました方の所属・役職を含め、掲載当時のものです。

Profile

野田 公一

執行役員経営企画室長

早稲田大学政治経済学部卒。東京三菱銀行出身、ハーバードビジネススクール(HBS MBA)1998年修了。日系ベンチャー企業の経営企画/事業開発部長を経て、2004年楽天に入社。楽天市場の出店営業からはじめ、マーケティング、事業部経営職(楽天GORA、楽天オークションの経営や、シグニチャージャパンの副社長等)などを兼任。2006年から楽天が大きく国際化、組織拡大の方向にシフトアップしたことを機に、組織強化に専念。

大尾嘉 宏人

執行役員/Rakuten USA シニアバイスプレジデント

慶応義塾大学経済学部卒。東証一部上場企業(凸版印刷)の出身。ロチェスター大学 ウィリアムE サイモン経営管理学大学院(MBA)首席卒業
凸版印刷にて米国、日本で事業企画、事業開発を担当、デジタルコンテンツの新会社の設立に貢献。2007年、グローバルかつスピーディーなマネジメントにチャレンジしたいと考え、楽天に転職。国内事業からスタートし、2009年から米国にてグループ会社のPMI・事業管理を担当。2012年楽天株式会社の執行役員に昇格。さらに楽天のグローバル展開を推進するリーダーとして、現在カナダトロントで活躍中。