転職コラムコンサルティングの現場から

メールマガジンに連載させていただいたコラムのバックナンバーです。
転職市場、そしてキャリアコンサルティングの現場で起こる日々の出来事から、成功へのヒントを感じていただければ幸いです。

コンサルティングの現場から 第30回 
2006.04.27

あなたの市場価値・適正年収を査定します!?

先週、『社長の年収 サラリーマンの年収』と題して、大卒ビジネスマンの年収と大企業の社長・経営者の年収について、平均的な金額や典型的な金額がどれくらいであるかを書きました。

しかし、現実に目を向けると、同じ業種の同じ職務・職責の仕事でも、平均値±20%ほどの範囲でばらつきがみられます。また、皆さんが転職活動をしたとして、結果的に複数のオファー(内定)を得たとしても、その条件面においては、かたや年収1000万円、かたや600万円などという大きな開きが出ることもあります。では、なぜそれほど大きな差が出るのでしょうか?

今回は、この点をもう少し掘り下げて、その差がどんな要素に起因するのか考えてみたいと思います。

まず、当たり前のことですが、年収(金銭報酬)は、株式市場における相場のような需要と供給のバランスだけで決定されるのではなく、もっと多くの複雑な要因によって決まっているということを念頭におく必要があります。

考えられる要因を列挙すると、『業界・業種』『資本系列(外資系か日系か)』『企業規模』『職種』『専門性・職務の難易度』『職責・階層』『人事(報酬)制度』『年齢』『ストックオプションなどの有無』『会社の業績や成長性』『経営者の価値観』などとなり、それぞれが微妙に絡み合い、影響しあっています。

ただ、大分することは可能で、おおむね三つに集約できるようです。

1)『業界・業種』による違い

    銀行や商社は高い、流通は低い、などといった違いです。大手企業や歴史のある業界などは、労働組合、業界連合のなどの影響で横並びになりがちです。職種や階層などを越えて影響します。ただし、経営者層は別で、業界の影響は小さくなる傾向にあります。

 

2)『職種』『専門性・職務の難易度』『職責・階層』による違い

    法務のプロ、コンサルタントなど専門性が高く、独立性があるような職種は当然高くなります。しかし、一番差が大きく出るのは、経営者層かラインマネージャー層か、あるいはスタッフ層かという職責・階層によるものです。同じ企業の同じ勤続年数の方でも、経営者層かラインマネージャーかによる差は歴然としています。

 

3)資本系列(外資系か日系か)、企業規模(大企業かベンチャーか)による違い

    単純そうで、実は一番複雑な要素です。本質的に、「短期的に成果や貢献を金銭的な報酬として報いる」という成果主義的要素が強い外資系、「雇用への長期コミットにより、組織全体の生産性向上を重視し、短期的な金銭報酬ではなく、長期の安定・右肩上がりの賃金で報いる」タイプの従来型の日系大手企業、そして「成果や貢献に、金銭報酬ではなく、短期的に新たな職務機会を与えることで報いるベンチャー」という、『人事システム』の違いや、人材戦略の違い、人と組織に対する考え方の違いが存在します。それがストックオプションやインセンティブなどといった制度面で現れているのです。

 

「金銭」と「安定(保証)」と「機会」がそれぞれトレードオフをしているともいえます。

よく、『あなたの市場価値・適正年収を査定』などというキャッチコピーを見かけますが、これの実態は『あなたが今、同業他社の同じ職種など、経験を最大限生かせるところに転職した場合、すなわち短期的に給与を最大しようとするとどれくらいの年収を得られるのか』ということであるといえます。

短期的な報酬を取るか、安定を取るか、あるいは機会を重視し経営者層に入るなどの長期的な報酬UPを考えるか……。

ぜひ、表面的なことだけではなく、本質も見据えて考えていただきたいと思います。