転職コラムコンサルティングの現場から

メールマガジンに連載させていただいたコラムのバックナンバーです。
転職市場、そしてキャリアコンサルティングの現場で起こる日々の出来事から、成功へのヒントを感じていただければ幸いです。

コンサルティングの現場から 第35回 
2006.06.08

最初の30秒 vol.1

先日、ある採用面談に同席しました。
企業側の取締役陣数名と候補者の方との2時間程度の面談だったのですが、面談後に取締役のお一人がおっしゃるには、「職務経歴書を見ておりましたが、実際に会ってみてすぐにOKと判断しました」とのこと。ほとんど第一印象で決まっていたようです。

セールスを経験されたことのある方は良くご存知かと思いますが、「第一印象」というのは想像以上に重要な意味を持ちます。一般的には最初の30秒から2分程度で「第一印象」が決まってしまうといわれ、そしてその「第一印象」が、その後の人間関係や対人評価などにたいへん大きな影響を与えるのです。

心理学においては、対人認知における「認知的不協和理論」や「原因帰属理論」などというものから説明されるのですが、少し分かりやすくお伝えしましょう。

「ある人を一度良い人だと判断してしまえば、後にその判断と矛盾することがあっても、自分の判断を覆すのは不愉快なので(認知的不協和が発生するので)、良い人だと思えるほかの証拠を集め、よい人であることを立証しようとする心理が働く。その逆も然り。」

「例えば知人と道端ですれ違い挨拶をしたのに、相手がそのまま通りすぎたケースで、相手を良い人だと思っていれば、気がつかなかったのかな等と考える(原因帰属する)が、嫌なやつだと思っていればオレを無視した等と考える(原因帰属する)。」

これは、採用における面談・面接でも同じであり、例えば1時間の面談が行われたとしても、実は最初の30秒程度で結果の大部分が決まってしまっているということが起こりうるのです。つまり、あとの59分はその第一印象を立証することに使われているということになります。

裏を返せば、第一印象でマイナスの印象を与えてしまうと、それを覆すのはかなりの労力と時間が必要となるということになります。

特に採用の面談・面接というのは一発勝負であることがほとんどで、何回も会って(時間をかけて)信頼関係を作るとか、日ごろの付き合いの中で人間性を理解してもらうということは難しいので、より第一印象の重要性が高くなりますね。

(採用では、第一印象以外に「職務経歴書」が生み出す「認知」も第一印象と同様に重要な意味を持ってきますが、これについてはまた別の機会に書きたいと思います。)

通常、第一印象は「外見」「態度・行動」「話し方」で決まってくるといわれています。「話の内容」という本来重要視されるべき点にたどり着く前に判断をされてしまうかと思うとたいへん怖いですね。

われわれプロであれば、この第一印象の影響は十分理解しているので、第一印象だけで判断せず、ある程度それを差し引いて「話の内容」で判断するように意識できます。しかし、採用の意思決定をする人が必ずしも人を見るプロであるとは限らないので(あるいは人を見るプロであっても敢えて第一印象を重視して)判断されることがあることを面談・面接を受ける側も知っておく必要があります。

次回、第一印象を作り出す要素の「外見」「態度・行動」「話し方」について、具体的な例を交え、もう少し詳しく書きたいと思います。