転職コラムコンサルティングの現場から

メールマガジンに連載させていただいたコラムのバックナンバーです。
転職市場、そしてキャリアコンサルティングの現場で起こる日々の出来事から、成功へのヒントを感じていただければ幸いです。

コンサルティングの現場から 第38回 
2006.06.29

日本人の労働意欲は世界最低水準? vol.1

しばらく前の話になりますが、3月31日の日経産業新聞に人事コンサルティング大手タワーズペリンによる、ある調査結果が掲載されていました。

2005年8月に世界16ヵ国で実施された調査で、それによると日本の従業員のうち、仕事に対して「非常に意欲的である」と感じているのは2%と、16ヵ国中最も低い数値であったそうです。また、「仕事に対して意欲がない」との回答は日本は41%にのぼり、インド(56%)に次いで2番目に低い水準であるとのこと…。

働く意欲が世界最低の水準とは、衝撃的です。一概に、この調査だけで「日本人の仕事意欲は世界一低い」と結論付けるのはどうかとも思いますが、高度経済成長期と比して、日本人の仕事意欲が全体的に低下しているだろうことは容易に推察できます。

タワーズペリンの分析では、日本人の仕事意欲の低さは、「年功序列型の報酬体系や企業の合理化、業界再編などさまざまな要因から生じている」とのことです。

今週発売の雑誌『プレジデント』(2006 7.17号 プレジデント社)には、同社のコンサルタントによる、この調査についての詳細のレポート・解説記事が掲載されています。非常に興味深い記事ですので、ご覧下さい。

この記事を見て、思い出したことがあります。もう随分前になりますが、2000年頃、多くの企業がリストラに取り組んでいた当時、某大手総合電器メーカー人事部門のTOPの方がこんなことをおっしゃっていました。

「われわれの若い頃は、会社のいうとおりに頑張っていれば、みんなが課長になれ、みんなが部長になれると思える時代だった。会社と共に自分も成長し、社会・生活はどんどん豊かになるので、やりがいを感じ易かった。しかし、時代は変わり『みんなが課長になれる』という幻想は今や誰も持っていないし、それどころか雇用の保証もなくなりつつあることに不安を募らせている。豊かになる感覚は持てず、会社の成長も止まり、やりがいは感じづらい…。」

このお話を聞いてからすでに6年以上経ち、企業は『平等から公平へ』というスローガンのもと、成果主義的人事制度を導入し、いまや終身雇用は事実上崩壊したといわれるようになりました。組織と個人の関係は大きく変わりましたが、個人側の「意識」はその変化に追いつけず、ギャップが生じているのでしょう。

ちなみに、この調査は、16ヵ国の86,000人を対象に、以下の4つの領域にわたって、どのような要因が仕事に対する意欲の向上をもたらすかを調べたものであるそうです。

  • 給料にかかわるもの
  • 給料以外の福利厚生
  • 学習と成長の機会
  • 職場環境(人間関係を含む)

これらの4つの領域(項目)は、以前も書きましたが、『仕事を選ぶ際にトータルで考えるべき要素』として、われわれアクシアムのキャリアコンサルタントも重要視しているものです。

とくに(4.)の職場環境(人間関係を含む)の要因は、(3.)の学習と成長の機会にも大きく影響するものであり、重要なものであることを強調しています。

どうやら、日本人の仕事意欲の低さは転職に対する意識にも関連があるようですので、次回、もうすこし転職や仕事選びの観点でこの話を掘り下げてみたいと思います。