転職コラムコンサルティングの現場から

メールマガジンに連載させていただいたコラムのバックナンバーです。
転職市場、そしてキャリアコンサルティングの現場で起こる日々の出来事から、成功へのヒントを感じていただければ幸いです。

コンサルティングの現場から 第37回 
2006.06.22

職務経歴書の効能

前回・前々回の稿で、採用の面談・面接における第一印象の重要性について書きましたが、今回は、もう一つ企業の採用に大きな影響を持つ「職務経歴書」について書きたいと思います。

採用活動においては、面談時の第一印象と同等に「職務経歴書」が生み出す「認知」も重要な意味を持っていることは想像に難くないかと思います。

結論からいうと、職務経歴書は、単に「会ってみよう」と思ってもらうための書類というだけではなく、後の面談の時にも持ち込まれる「この人はきっとこんな人だろう」という推察・判断(認知)の元となる重要な書類であり、作成の際には十分な注意が必要であるということになります。

前回もご案内しましたが、「ある人を一度良い人だと判断してしまえば、後にその判断と矛盾することがあっても、自分の判断を覆すのは不愉快なので(認知的不協和が発生するので)、良い人だと思えるほかの証拠を集め、よい人であることを立証しようとする心理が働く。その逆も然り。」ということがあります。

よって、職務経歴書から作られる「認知」もその後の面談に大きく影響すると思っておいたほうがよいのです。

「会ってみよう」と思わせるのが最大の目的ですが、単に、「会ってみよう」と思われるだけでは不十分ということですね。

某社の採用責任者は、職務経歴書および書類選考について次のようなことを言っています。

『弊社での書類選考においては、

  1. ご本人が作成された書類から読み取れる人物像を評価
  2. 書類から判断できるご経験、スキルを評価
  3. スペックに対するその方のスキルを、年齢・年収等を加味して総合評価しています。

ご経験があっても書類で判断できなければ次のステップに進めようがなく、もしかしたら優秀な方が埋もれてしまっているかもしれません。ただし、書類選考が最初のステップとさせていただいております以上、候補者の方には、ご自身を存分にアピールできるように書類を作成していただくようお話いただけたらと思います・・・』

ここでも分かるのですが、採用側は単なる経験や持っているであろうスキルだけでなく、『作成された書類から人物像を読み取っている』という点です。

具体的に言うと、例えば書類にミス(誤字や文章のねじれなどの日本語がおかしいもの)が多いと、『仕事の正確性に欠ける』『論理性が低い』などの認知をされる可能性が高くなります。逆に読みやすい、相手にとって理解しやすい形式・内容になっていると『ドキュメント作成力に優れている』というだけでなく『細部にも気を配ることができる』とか『相手のことを思う力がある』という認知を持ってもらえる可能性が高まるのです。

また、一回の面談では伝えられないことを職務経歴書で説明しようとしてしまい、何枚にもおよぶ「自分史」のような書類になってしまうのも、実は読み手に「冗長な」とか「端的に説明できない」とか「言い訳がましい」などのネガティブな印象を与えてしまう可能性があります。

読み手が経営者やコンサルタントなど忙しい方であるほど、端的にまとめられた書類を好む傾向が強くなるので、この点も注意が必要です。

読み手を意識し、何を求められているかを踏まえて、的確かつ見やすい形で自身をアピールする書類。それが職務経歴書のあり方であると思います。