転職コラムコンサルティングの現場から

メールマガジンに連載させていただいたコラムのバックナンバーです。
転職市場、そしてキャリアコンサルティングの現場で起こる日々の出来事から、成功へのヒントを感じていただければ幸いです。

コンサルティングの現場から 第41回 
2006.07.20

修行

ある外資系企業の採用責任者の方とのお話ですが、「MBAホルダーのどこを評価されますか?」という質問に対して、「与えられた課題に対して、限られた時間内で調べ、考えて、結論を出す。あるいは、自分の考えを論理的にプレゼンテーションし、相手に理解させたり、異なる考え方を持つ人と議論し、よりよい考え方に導く。そういう訓練を積んできたという点を最も評価する」という答えが返ってきました。

なるほど、と思います。

実際、多くの採用の現場においてMBAで学ばれたであろう「知識」や「理論」が評価され、採用を決めることは非常に少ないように感じます。残念ながら、MBAでファイナンスを学んだからとか最新のマーケティングの理論を勉強したからといって、それだけでその関連ポジションに就けることは少ないのです。

かといってMBAが評価されないわけではなく、上記のように「ビジネス上とても重要な論理的思考やコミュニケーション、プレゼンテーションやディベートなどの基礎訓練をみっちりと行ってきた」という点は、共通して評価されているようです。

話は変わって、先日、あるベンチャー企業に30代の転職経験がない方をご紹介した時の話。

人柄や経験が評価されたということもありますが、採用側は「1社で10年以上しっかりと勤務してきていること」を思いのほか、大きなプラスに捉えていました。

3年ごとに会社を変わられる人も増えている中、下積み的な業務からしっかりと経験を積み重ね、仕事の幅を広げてきたことを評価されたのだと思います。

こうした「下積み」や「訓練」などという考え方、あるいは武道における「修行」などという言葉は、つらい反復練習や、単調なことの繰り返し作業のようなイメージがあり、今の時代にはあまり合わない『古い考え方』のように聞こえるかもしれません。

確かに、単調な作業の繰り返しだけではつまらないですし、力がついているという実感も持てないかもしれません。また、何の疑問も持たずにそれを繰り返しているだけでは進歩もないでしょう。

しかし、あらゆるスポーツ、武道、音楽などにも共通するように、同じくビジネスの現場においても、やはり「基礎」は重要なのです。システム構築におけるプログラミング、経理における仕訳、営業におけるアポイント取りなど、MBA取得と同様、重要な基礎であると思います。

ビジネスにおける「修行」ともいえる、これらの基礎訓練・反復練習をしてきた経験がある方は、どの分野でもその後、しっかりとしたキャリアを作られているように思います。スカウト型の求人ニーズにおいても、そうした方は評価されやすいのです。

蛇足になりますが、新卒採用でなくとも、35歳くらいまでの方の採用では、幼少時や学生時代からスポーツを続けてきた人、ピアノや武道など「お稽古事」を続けてきた経験のある人が、やはり評価されやすい傾向にあることをお伝えしておきたいと思います。

その理由の一つに、この「修行」ができる素地を見ているのは確かでしょう。