転職コラムコンサルティングの現場から

メールマガジンに連載させていただいたコラムのバックナンバーです。
転職市場、そしてキャリアコンサルティングの現場で起こる日々の出来事から、成功へのヒントを感じていただければ幸いです。

コンサルティングの現場から 第45回 
2006.08.24

やってくれ、という声

夏の高校野球全国大会『甲子園』(第88回全国高校野球選手権大会)の決勝戦。すごかったですね。引き分け再試合となった20日の試合も、そして21日の試合も、言葉にできない興奮と感動があり、自然と「私もまた頑張ろう!」という気持ちがこみ上げてきました。

さて、本題です。

転職を考え、そして決心をするときのお話になりますが、多くの場合「やりたい」と思う強い気持ち、「やれる」と思う確かな自信、「やってくれ」といううれしい期待のいずれかが決め手になります。

三つの要素がすべて揃うととてもスムーズに決心できるのですが、必ずしもそのような理想的な状態であるとは限らず、しばしば最後の決断のときに悩んだり躊躇してしまったりするものです。

特に、「やってくれ」と言われたものの「やりたい」あるいは「やれる」という思いを持てないときに躊躇してしまうケースが多く見受けられます。逆に、「やりたい」あるいは「やれる」という思いが強い場合、他の二つの要素がなくても意思決定できることは多いようです。

少し話はそれます。

起業をされた方などの話を聞くとよく分かるのですが、ほとんどの場合「やれるかどうかはわからないが、とにかく私はこれがやりたい!」とか「ここには大きなビジネスチャンスがある。そして私はそこで成功できると思う!」というある面、盲目的ともいえる考えだけでスタートをしています。

「やってくれ」といわれたから起業しましたという方は、ほとんどいないように思います。そして、こうした「やりたい」というパッションや「やれる」という自信が、成功のポイントであるのも確かです。

ところが、転職の場合は起業とは少し違い、よくよく展職(転職)に成功している方のケースを見ていると、実は「やってくれ」という声を受けて決心したという方が意外に多いのです。

例えば、金融業界でセールスの経験を積んできた方が、まったく異なるIT業界からスカウトされたとします。

「やって欲しい(来て欲しい)」と言う側は、当然IT業界に詳しく、その人の経験と今までの仕事で培ったノウハウや知識がどのように生かされるか具体的にイメージでき、「業界は違うが大丈夫」と思っているわけです。

一方、当人はIT業界に詳しくなく、果たして本当に通用するか不安である…さて、業界を知っている方の判断と、知らない当人の不安、どちらの妥当性が高いでしょうか?

こうした不安は、たいていの場合、「知らない」ということからくる漠然とした感情です。目隠しされて、「周りには何もないから思い切って走ってみて。絶対大丈夫だから」と言われても「何かあるかもしれない。」と妄想し、走れないのと似ています。

人間として当然の感情ですが、もし、その声を信用できるのなら、走ってみてもよいのではないでしょうか?

われわれキャリアコンサルタントの仕事は、求人側の「やってくれ」という声を皆様にお伝えすることでもあります。是非、「やりたいこと」や「やれること」だけで転職を考えてしまわず、「やってくれ」という声に耳を傾けていただきたいと思います。

蛇足になりますが、特に35歳以上の方々が対象となるようなスカウト型求人マーケットでは、「やってくれ」という声がないと転職が難しくなることもお忘れなく。