転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第211回
2020.12.03

採用面接の場で、どのように「転職理由」を語ればいいのかわからない

大学卒業後、ITコンサルティングファームで6年間勤務してきました。案件によっては、プロジェクトマネージャーを任されることもあります。現職の先輩が最近事業会社に転職したこともあり、自分も事業会社でのキャリアを考えてみたいと思うようになりました。転職サイトに登録したところ、幸いなことに多数のエージェントからお声がけをいただき、色々と話を伺っているうちに、やはりこのタイミングで事業会社にチャレンジしてみようと考えがかたまりました。

ただ、28歳という年齢から転職するのであれば早い方がいいと思う一方で、もともとは積極的に転職をしたいと思っていなかったことから、面接の場で「転職理由」を聞かれた際に、どのように答えていいかわかりません。アドバイスをお願いします。

Answer

今回のご相談の内容、じつは多くのキャンディデイトの皆さんからいただきます。

今回のご相談者の場合は「現職の先輩が事業会社に転職し、自分も事業会社でのキャリアを考えてみたくなった」ことがそもそもの始まりとのこと。先輩だけでなく上司や同期、学生時代の友人などが転職をしたという話を聞くと、気になりますよね。お気持ちは非常にわかります。

とはいえ、転職はご自身のことです。転職をするためには“現職を辞める”必要がありますが、ご自身は本当に現職を辞めたいですか? 辞めたくないとしたら、転職を考えなくてもいいかもしれませんね。では、転職先でどのようなことが実現できれば、退職しようと思えるでしょうか?

「年収」で考えても、もちろん大丈夫です。ご自身の「やりたいこと」が見つかっている方は、そのようなポジションを探せばいいですね。あるいは、「現職で不満に思っていることが解消できるか」という観点から転職をお考えになる方もいらっしゃいます。

「転職理由」にはポジティブなものだけでなくネガティブなものがあることは自明ですが、ただし、面接の場ではそれらをそのままお伝えにはならないでください。

面接官が採用面接の際に「転職理由」を聞くのには、2つの事情があります。一つはその候補者が自社で“活躍してくれそうか”という点を確認したいからであり、もう一つは“長く活躍してくれそうか(すぐに辞めたりしないか)”という点を確かめたいからです。面接官は、候補者が語る「転職理由」を自社に当てはめて質問しています。ポジティブな理由であれば、それが自社で実現できることなのか、ネガティブな理由であれば、それが自社で起こりえないかなどです。採用側の目線に立ってみてください。「この人、すぐに辞めそうだな」と不安を与える人材は、採用したくないですよね?

特にネガティブととられるような理由を伝える場合に気を付けていただきたいのは、“それを改善するような行動をとったか”という点です。どの組織にも欠点はありますし、応募先企業にも多かれ少なかれ問題があると思った方が健全です。ですから、現職企業への不平不満だけを「転職理由」として述べてしまうと、その欠点を自ら補おうという自覚を持っていないのか? 欠点があればすぐに辞めてしまうのか? と面接官に不安を与えてしまいます。

特にコロナ禍のような状況の場合、新規事業開発への投資や、新たな人員採用の余裕がなくなり、突然事業方針の転換に迫られる企業も出てきます。入社後、自分の思ったようなキャリアにならないこともあり得ます。ですからなおさら“長く活躍してくれそうか(すぐに辞めたりしないか)”という点は、しっかり見極められているとお考えください。

では、どのように伝えたらいいでしょうか?

1.嘘は言わない
採用側も何かしらの理由があることはわかっていますし、それがネガティブな理由かもしれないと思っています。ネガティブな内容を伝えたくないばかりに嘘の理由を伝えてしまうと、入社後に同じことが起きたら、また転職を考えなければいけなくなりませんか? それではご自身にも、企業側にも、良くない結果を生みます。

2.具体的に伝える+改善しようとしたことを伝える
例えば、現職での激務が転職の理由のひとつだったとしましょう。それを漠然と「ワークライフバランスが取れなかった」と伝えられても、面接官は判断ができません。例えば「月に●●時間以上の残業が恒常化していた」、「ここ半年間で休日が●●日だった」など、客観的に状況を理解してもらえるように伝えましょう。また、合わせて必ず、そのような状況を自分なりに改善しようと行動を起こしたことを伝えてください。

3.今後のキャリアプランとつながりがある理由が、説得力をもつ
ネガティブな理由にせよポジティブな理由にせよ、その「転職理由」はご自身が考えるキャリアプランにつながっていますか? 【転職理由⇒志望動機⇒キャリアプラン】、これらが一つのストーリーになっている必要があります。そこがしっかりとつながっていれば、ネガティブな面がある転職理由も自然にポジティブなものに転換されているはずですし、また、説得力を持つ内容になっているはずです。「やれること(これまで)」に「やらなければいけないこと(現在、これから)」を足して「やりたいこと(将来)」につなげていきましょう。

採用面接の場で「転職理由」を伝える際のポイント、注意点をご理解いだだけましたか? 「このような相談で申し訳ありませんが」とおっしゃる方も多いのですが、もし「このような転職理由で大丈夫だろうか…」と思われましたら、お気になさらずに、ぜひ担当キャリアコンサルタントまでご相談ください。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

伊藤 嘉浩

株式会社アクシアム 
取締役/エグゼクティブ・コンサルタント

伊藤 嘉浩

2008年、アクシアムに参画。エグゼクティブ・コンサルタントとして、経営者やプロフェッショナル人材、MBA、若手・次世代ビジネスリーダーまで、幅広い年齢層へのコンサルティング、キャリア開発、紹介実績あり。アクシアム参画前は、商社にてアパレルブランドの輸入販売や海外事業開発を手掛け、新規事業の立ち上げと事業の黒字化を達成。事業計画策定、商品企画、マーケティング、リテールマネジメント、組織開発、生産管理などの経験を持つ。海外事業開発をはじめとする“実業経験を持つキャリアコンサルタント”として、個人のグローバルなキャリア、イノベーティブなキャリアの実現を使命とする。

日本キャリア開発協会認定 キャリアディベロップメントアドバイザー(CDA)