転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第212回
2021.02.08

【特別版】コロナ禍の人材マーケット情報 第二弾

今回は、いつものようにご相談者からの質問にお答えするのではなく、昨年6月に執筆した第206回に続く第二弾として「コロナ禍の人材マーケット情報」について、小生の所感を綴りたいと思います。

Answer

本稿を執筆している本日(1月24日)の産経新聞には、電通が新型コロナウイルス問題の影響で広告収入が低迷し、本社ビルの売却を検討しているというニュースが掲載されていました。本社ビルに勤務する約9000人の出社率は最近では2割程度にとどまり、余剰スペースが生じているのも一因とのこと。丸紅も今年5月に本社を移転し、社員用の座席数を3割減らす、とありました。

私自身、昨年2月から在宅ワークを開始しており、この生活が間もなく丸1年となります。その間、企業の方とも個人の方とも、直接対面ではお会いしていません。社内もミーティングを含めすべてリモートで完結しています。私だけでなく世の中の多くの企業において、この1年で仕事のやり方が大きく変わりました。

私の仕事であるコンサルタント業(人材紹介業務)は、平日はほぼ毎日、数名の方とお話をする機会があります。昨年6月以降、その個人の方とのご相談数はあまり変わっていません。不景気になると現在お勤めの企業の業績が悪くなり、転職せざるを得ないという方の割合が増えるものですが、現状はそのような傾向は感じられません。また、オファーが出たものの慎重になり、迷った末に現職に留まる、という選択をされる方も懸念したようにはまったく増えておらず、志望度の高い企業からオファーが出た場合、ほとんどの方が転職を果たしています。転職については、景気の先行きや社会情勢が不透明な中ながら、まずまず積極的(よい機会があれば転職も視野に入れている)にお考えの方が多い印象です。

求人数については、弊社の場合は実は大きくは減じてはいません。6月以降、微減もしくはほぼ横ばいという状況です。この1年間で求人が完全にストップした企業ももちろんありますが、逆に新規に契約を締結した企業、一度は全面ストップをしたが再開した企業も。これまでお付き合いのあったクライアント企業からも新しい求人案件をご依頼いただくことがしばしばあり、当初の予想を覆し、求人数の減り方は想像以上に踏みとどまっています。ただし、それには求人企業の属性が大きく影響しているはずで、外食、観光、交通、エンタメ業界などの転職支援を主に手掛けるエージェント(人材紹介会社)では、求人数に大きな影響があるものと思われます。

では弊社アクシアムにおいて、コロナ禍がどのような影響を及ぼしているかというと、“選考における難易度”の点です。具体的な数値の開示は控えますが、以前に比べて選考の難易度が上がったことを実感します。以前であれば高確率で書類選考を通過できたご経歴の方が通らない、あるいは面接で微細な部分をマイナス評価され見送りとなることが実際の選考で起こっています。また、ご依頼いただいている求人の要件が途中で厳しくなるということも起こっています。

昨年後半には、最終面接をパスしたにも関わらず、業績の見通しが良くないので四半期が終わったタイミングで状況を見てオファーを提示するかどうか判断したい、つまり「選考は合格だがオファーは保留」となったケースもありました。現場は採用したいと言っているのですが、経営サイドから待ったがかかってしまったのです。コロナ禍を象徴する出来事だと思います。

上記は極端な例ですが、全体的には景気動向を意識して求人企業側が採用に慎重になっており、選考の目線が上がったり、オファーの出す/出さないの最終判断が厳しくなったりしていることはほぼ間違いありません。(とはいえ、この状況下でむしろ戦略的に採用を積極化している企業もありますが。)

コロナ禍前は全般的に売り手市場の色が強かったのですが、コロナ禍になってからは、要件が厳しめかつ採用意欲の高い一部の求人では売り手市場でありつつも、全体的には買い手市場の色が随分入ってきたような印象があります。

読者の皆さんにはオファーを獲得する難易度が上がったとご認識いただき、応募書類の推敲、面接対策、応募企業の研究、志望動機の練り上げなど、以前よりもしっかりと準備を行っていただくことをお勧めします。この状況に合わせた質問が出てくることも想定できますので、ご自身であれば入社後にどのようなことを考えアクションをするか、現状に沿ってリアリティのある回答をする必要もあると思います。応募や面接の準備にあたってご不明な点があれば、お気軽にご連絡ください。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

若張 正道

株式会社アクシアム 
取締役/エグゼクティブ・コンサルタント/人材紹介事業推進マネジャー

若張 正道

大学卒業後、大手食品商社の営業部門からキャリアをスタート。人材サービスに関心があったことから、2001年、アクシアム入社。新規事業であるMBAをメインとしたネットリクルーティングサービスの立ち上げに参画。無事にローンチを果たし、その後は人材紹介事業推進マネジャー 兼 エグゼクティブ・コンサルタントとして、ハイエンド人材の展望ある転職=「展職」を支援している。