転職コラムキャリアに効く一冊

キャリア開発に役立つ書籍を毎月ご紹介しています。

2011年7月

グローバルキャリア ユニークな自分のみつけ方
石倉洋子(著)

震災後の2011年4月21日に発行されたばかりの本書は、20代、30代の若者の覚醒のために書かれた書と言ってよい。また、本書を読むまでは、これはきっとグローバル市場で活躍できる人材になるための書だと推察していたが、読後は、グローバル化だけを筆者が願っていることではないと考えを改めた。

本書では、「オープン化」「ORをANDにする」「ユニークさ」という3つのキーワードを軸にして、キャリアビジョンを実現していく方法が示唆されている。

著者自身のキャリアの軌跡に照らしてみたり、あるいは戦略的なシフトに成功している具体的な7名のキャリアを紹介したりと、「ユニークな自分の見つけ方」をきわめて平易な言葉でわかりやすく伝える工夫がされている。

しかしそれ以上に、著者がこの7名のような挑戦者が日本でもっと増えることを願っているのだと強く感じた。海外で活躍したい人であってもそうでなくても、よりユニークな力や考え方を自分のものとしておかないと、安定が崩れてしまうことを痛感させられる。平均的な力や常識的な考えが人生を安定させてきた時代は終わったのだ。

また、きっとキャリアデザインや戦略をこうすれば成功するというノウハウが書かれているのだと期待すると裏切られてしまう。思ったキャリアプランどおりにならないことが起こっても、その時どのような選択を行うのかが重要であり、そこに示唆がある。これが読者のキャリアに効くと思う。

特に244ページから後、筆者自身の経験からの助言は明解だ。

「新しいことにチャレンジできるという点ではとても楽しく、やりがいのあるものでした。」「数年前に私は、本当はプロデューサーになりたかった」と述べている。

本当に、魅力的で戦略的な先生だ。

氏は1980年にバージニア・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)、85年ハーバード・ビジネス・スクールにて経営学博士(DBA)取得している。30年前にMBAを取得され、今では教える側におられるのだが、見方によっては今でも、MBAを目指している人やMBAを取得した人以上に未来への期待、新しいことへの興味をもっておられ、新鮮さをまったく失っていない。

過去の学歴や実績に権威的にならず、固執もせず、未来への期待や新鮮さをもつこと、それこそが氏が実践されてきたキャリアであり、本書の意味なのだと思う。

これだけ戦略的で魅力的な先生が日本のビジネススクールにはおられるわけだから、日本のビジネススクールのMBA諸氏にも大いに期待したいところである。

グローバルキャリア ユニークな自分のみつけ方 出版社:東洋経済新報社
著者:石倉洋子(著)