転職コラムキャリアに効く一冊

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2013年6月

30代の働き方には、挑戦だけが問われる
小杉俊哉 (著)

小杉俊哉さんは、今も挑戦を続ける50代であり、自らのキャリアの経験則だけではなく、さまざまな識者や偉人の言葉を織り交ぜながら、次世代を担う人達に力強いメッセージを出している。「古い世代のように、どっぷり会社に浸かってしまいリスクを取らないままに30代を過ごしてしまってはならない時代が来ている。」という強い警告の書である。

飾ることなく、ご自身の20代、30代の当時を振り返りながら、読者の目線になって、自ら信じるところをメッセージにしている。MBAホルダー、戦略コンサルタント、独立を考えている人、自分を見つめたい人にお勧めの書である。

クランボルツ教授(John D. Krumboltz)の「計画された偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」は、小杉さんの本書のバックボーンとなっているが、小杉さんだけでなく、最近、HR関連の専門家が好きな理論付けである。わかりやすく言えば、成功者の多くは、“たまたま、偶然ある人から誘われて”とか“困っていたら、ひょんなご縁で”から出会いや発見、そして成功が導かれたという事である。本書でも説明されていることだが、予期せぬ出来事をチャンスとして活用するための5つのキーワードは【好奇心】【持続】【楽観】【リスクテイク】【柔軟性】であるという。小杉さんご自身のキャリアはまさにこれらのキーワードで満たされていると思えた。

小職は、小杉さんがMBA留学される前の20代から今に至るまで、30年間、いろいろなところでお付き合いをさせていただいた。まさに「この計画された偶然性」を実践してみせてくれた人生を送ってこられたのだと思う。

その小杉さんが採用者として、また人生の先輩として、今の30代に勧めている点を抜粋してみた。要約ではなく、私も強く同意できる点を抜粋として述べる。

  1. いい顔をしていること。人として、自己理解を深めてきた人間の顔は自信や意欲にあふれた顔立ちである。そして、保有能力や成果、あるいは成果に結びつく過程でみられる行動特性も評価されるものとして確立されているが、それ以上に重要なことは、「日ごろからどのような姿勢で仕事に、そして人生に向かい合っているか、つまり、その人の存在そのもの (being)だ。いい顔やその人となりは、その人の素を見ているということだ。30代までに己として確立していなさい。
  2. 学習する習慣
  3. 挑戦をしなければチャンスは広がらない。会社は20代を見守るが、30代に対しては仕事を作れる可能性を持つ人間か否かを試している。
  4. リスクをとらない選択が通じた時代は終わった。
  5. スペシャリストとゼネラリストを併せ持つバーサタイリスト(多能工)への回帰
  6. 市場価値は自分で決めるものではなく、あくまでも市場が見出すもの。市場価値はあげるものではなく、仕事で挑戦を続けていう中で、結果的にあがっているものなのだ。
  7. 30代の求人が管理職である限り、チームを束ね、実際にチームを動かして何かをなしたことが求められる。
  8. 挑戦することは、方向性を定め、ビジョンを持つための準備である。20代、無理に人生のビジョンを決めて、驀進する必要はない。
  9. 難題を最後までにこなすには、根拠のない自信をもつほど、メンタルな強さを持とう。
  10. 「人生は一生のうち逢うべき人には必ず逢える。しかも一瞬も早すぎず、一瞬も遅すぎない時に」森信三の言葉。

本書は小杉さんの人生の価値観が素直に述べるられているため、多くの人に共感をもっていただけると思う。非常に参考になると思うが、敢えて僭越ながら私の感想と言うか補足を2点だけ付け添えてみたいと思う。

  • 私や小杉さんが過ごした30代と、今の30代の違いを加味してほしかった。
    小杉さんが大きな会社を辞めてMBAに留学する事は今以上に珍しかったし、アップルから日本のオーナー企業ユニデンへの入社や、転職、独立というキャリアの選択は極めて珍しかったが、今の20代、30代は、それも珍しくなくなってしまっただけではなく、それに加えて、1998年以降に出てきた新世代のベンチャー、起業家やスピーディーな世界を目指しているようなベンチャー企業に在籍している30代リーダーや社員のことを想定した議論が欲しかった。更に言えば、小杉さんの助言は30代ではなく、20代の人達にも、いち早く気づいてもらったほうが良いぐらい、社会の変化やキャリアメイクの速度がスピードアップしていると思う。
  • 小杉さんとは共通の友人も多いが、改めて、小杉さんと“人生のメンター、出会うべき人の重要性”について、深く議論、検証してみたいと思った。この書に書かれた重要なメッセージがその点だと思った。

小杉さんと機会があれば、またもっと深い話しをしてみたくなった。皆さんもきっと、本書を読んだら、小杉さんから直接、話を聞きたいと思ったり、新しい事に挑戦したいと思うだろう。

30代の働き方には、挑戦だけが問われる 出版社:すばる舎
著者:小杉俊哉 (著)