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2013年12月

世界のエリートはなぜ、「この基本」を大事にするのか?
戸塚 隆将(著)

最近、グーグルやGEなど、若者が憧れる企業に勤務していた方が著書を執筆される事が多いのですが、今回は、ゴールドマン・サックス、マッキンゼー、ハーバードを経験した著者が、意外にも、高学歴者ではなくても大切にすべき仕事の基本を紐解き、語ってくれています。

正直なところ、ゴールドマン・サックス、マッキンゼー、ハーバードという3つの単語が本の表紙に飾られていなければ、手に取る人も少ない極めて地味なタイトルです。しかしながら、この書は世界に飛び出していきたい人、特に若者には大変価値があるビジネス書といえます。日本企業に勤める年配者には、タイトルを読んだだけで反感を思える人もいることでしょう。「外資かぶれだ」「日本企業でもエリートなら当然実践している」という批判が聞こえてきそうです。戸塚さんも著書の中で、48の基本は欧米に特有のものではなく、日本のエリートも昔から大切にしてきた常識であると述べておられます。年配者がこの書を読むのであれば、素直に傾聴してみることが求められます。

もし若者がこの書を読むのであれば、単なるマニュアル本やノウハウ本としてではなく、「なぜこの48の基本が大事と言われているのか?」をしっかり考えて咀嚼し、実践で試してみる事をお勧めします。しっかり考えるというのは、「なぜそれが大事なのか」という問いの答えを自分のものにする工程です。

48の基本は以下の4つのポイントに整理され述べられていますが、著者の20代を彷彿させてくれる実体験に基づいた説明がされており、極めてわかりやすい内容で、概念論ではありませんし、もちろん精神論でもありません。

  1. 人との「つながり」を大切にする
  2. 「自分磨き」を一生継続する
  3. 「日々の成果だし」に強くこだわる
  4. 「世界的な視野」を常に意識する

48の基本がなぜそれぞれ大事なのか、それを読者に考えさせるのが本書の目論見だと思います。答えが書かれていると思うと大きな間違いです。

特に私が面白いと思った基本をナンバーと共に記しておきます。

【1】利害関係を越えた「つながり」信じる

【5】相手との時間を印象的に共有する

【10】正解のない問題を考えるクセをつける

【11】読んだら3倍考える、マッキンゼー流読書術

【13】斬新な「思いつき」よりも、骨太な「意見」を重視する

【14】ネットでカンニングせず、自分の頭で答えを出す(空→雨→傘の議論)

【32】ホウレンソウは仮説を入れて、念押し型でやる

【41】会議で発言しないのは「欠席」と同じ

【43】愛国心をパワーの源に変える

【44】英語は「ペラペラ」よりも論理コミュニケーション力

年配者も若い人も、この本を読んで面白いと感じる箇所は人それぞれ違うでしょう。 私が一番印象的だったのは、戸塚氏は、これまで彼が出会ってきた友人や上司、同僚、学友、家族、恩師といった人達を大事にしてきたからこそ、今の成功があるのだな、と読後に感じたことです。彼がまさに「人のつながりを大切にしてきた人」だと強く実感することができます。

シ―ネクスト・パートナーズという会社を経営している氏の活躍は、グローバルな事業を開発し、次世代の人材を育ててくれることにつながりそうで楽しみです。

世界のエリートはなぜ、「この基本」を大事にするのか? 出版社:朝日新聞出版
著者:戸塚 隆将(著)