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2018年5月

虹色のチョーク ~働く幸せを実現した町工場の奇跡~
小松 成美 (著)

これまで何度かこの「キャリアに効く一冊」に書評を書かせていただきましたが、今回はこれまでとはだいぶ違った内容の本に取り組ませていただきました。

本のタイトルは、「虹色のチョーク ~働く幸せを実現した町工場の奇跡~」です。

こちらに登場する企業は、川崎市に本社を置く日本理化学工業株式会社。カンブリア宮殿ほか多くのメディアに取り上げられている企業ですので、ご存知の方もおられるかと思います。

ダストレスチョークという環境に優しいチョークが元々の主力製品ですが、現在は商品ラインナップが広がり、キットパスという、こちらも環境に優しい固形マーカーが話題になっています。他にもいくつもの製品を展開しています。

技術力のあるメーカーで、とても良い製品を作っているのですが、同社が特徴的なのは社員数85名のうち、知的障がい者が63名という点です。じつに社員全体の3/4が知的障がい者なのです。

同社の会社案内にある、代表取締役社長・大山隆久氏の「ごあいさつ」を一部抜粋しますと

ダストレスチョークを作り続けて81年、障がい者雇用を始めて59年。
今まで弊社、社員を支えてくださったすべての方々に感謝いたします。
ありがとうございます。
私たちは、社員全員の成長が会社の成長となり、社員全員の頑張りが多くの方の勇気につながり、社会に役立っていくことを信じて前進します。

とあります。

日本では昭和35年に「障害者の雇用の促進等に関する法律(通称:障害者雇用促進法)」が制定されましたが、実際に障がい者雇用が普及してきたのは随分あとのこと。その中で同社は、半世紀以上にわたって障がい者雇用を積極的に進めています。

同書の中で、印象に残った部分を抜粋します。

【第1章 「日本でいちばん大切にしたい会社と呼ばれて」より】

障害があっても、仕事をできる人であれば、労働とその目標、対価として与えられる賃金と日々の働く幸せを得てこそ、その人生が輝く。

人の幸せは働くことによって手に入れることができる。それは、健常者でも知的障がい者でも、少しの差異もない。

【第2章 「障がい者を持つ家族の思い」より】

採用するに当たって、日本理化学工業には四つの条件がある。
1.食事や排泄を含め、自分のことは自分でできること
2.簡単でもいいから意思表示ができること
3.一所懸命に仕事をすること
4.まわりに迷惑をかけないこと
(中略)
職業を持ち社会人として生きてほしいと息子を支えた両親、そして、懸命に働き糧を得たいと願った○○さん。そうした思いが実を結び、正社員への道が開けたのである。
(両親談)
「○○は自閉的傾向という障がいとともに生きていかなければならない。その子に、職場を与えてくれた。それだけでなく○○は、より良い製品を作るという生き甲斐を得ました。本当に嬉しく、ありがたく思っています。」

【第3章 「働く幸せの実現に向けて」より】

時代とともに、会社は変化を受け入れなければならないと思います。しかし、絶対に変えてはならないものもある。それは『働く幸せの実現』です。

「働く幸せの実現」は、事業の継続なしにはあり得ない。隆久さんは言う。「会社が立ちいかなくなれば、働く幸せを作る場所そのものを失う。私の代でそんな状況になれば、父の歩んできた道すら否定することになってしまう。あらゆる努力をして、さらなる事業の安定と働く幸せの実現を継続したいと思っています。

経営や利潤だけを追求すれば、何が正しくて何が間違っているか、常に選択を迫られていく。そして、経営者が正しい選択をしなければ、企業は負けていく。しかし、日本理化学工業は、資本主義のなかで会社を経営しながらも、他社にはない哲学を貫いていた。「うちの会社は、働くことをあきらめなければならなかった人たちにその機会を提供し、働くことが楽しく嬉しい、と真の喜びを知ってもらえる仕事を続けてきた。素直に、これ以上と尊いことがあるのだろうか、と思えていったのです」

日本理化学工業に入社した社員は、健常者よりはるかに多い障がい者と働く環境に置かれる。経験や年数にかかわらず、障がいのある社員を導き見守る立場になるのである。「しかし、そのことで健常者の社員から苦情を受けることはありません。皆どんな場合でも、その役割を感じ、実行してくれます。立場や役割がその人を動かす、作ると言いますが、我が社では毎日、社員のそうした気概や物事へ積極的に向かっていく気持ちに助けられています」

【第4章 「チョーク屋に生まれて」より】

ある方の法事のために訪れた禅寺の住職と、会食の席で隣り合わせになり、何か話さなければと口を衝いて出たのが、彼女たちの話でした。うちの工場では知的障がいのある社員が数名働いていて、彼女たちは毎日誰よりも早く来て、一生懸命仕事をしてくれます。でも、やはり普通の人とは違って単純なミスをするので、叱ることがあるわけです。それでも毎日来るのは、どうしてなのでしょうね。会社で大変な思いをして働くより、施設で大事に面倒を見てもらったほうがずっと幸せだと思うのに、と。するとその住職は『人としての幸せについてお教えしましょう』と言ってこう語り出しました。この四つが、人間の究極の幸せである、と。

曰く、物やお金をもらうことが人としての幸せではない。
人に愛されること
人に褒められること
人の役に立つこと
人から必要とされること

住職はこう付け加えました。『大山さん、人に愛されることは、施設にいても家にいても、感じることができるでしょう。けれど、人に褒められ、役に立ち、必要とされることは、働くことで得られるのですよ。つまり、その人たちは働くことによって、幸せを感じているのです。』
(中略)
その瞬間から、世の中の光景も映る色も変わって見えた。「私は、この先チョーク屋では大きな会社になれないのなら、一人でも多くの障がい者を雇う会社にしようと思いました」

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少子化の影響、チョークが学校で利用される機会の縮小の影響など、外的要因で赤字に陥ったこともあった同社ですが、障がい者雇用は止めず、新製品の開発で苦境を乗り越えてきた歴史があります。大山氏が障がい者雇用というものをいかに大きな使命として持っていたか、その大きさを物語っています。

同書によると、障がい者の方は仕事に対してやりがいと責任をもち、純粋に仕事に打ち込みます。ただひたすらにより良い仕事ができるよう、自身のスキル・技術を高め、そしてスムーズな業務フローを編み出し、仕事に没頭しています。これが障がい者たちの仕事に対する姿勢なのです。きっと極めて純粋な思いで仕事に取り組んでいるのでしょう。

同書を読んでみて、私自身の仕事に対する姿勢や、自分にとって仕事は何なのかといったことを見つめ直してみようと思いました。皆様にとっても社会人として、仕事に関わる人間として、「自分にとって仕事とは?」と、原点に立ち返ってみる良いきっかけになる一冊です。今後のキャリアを考える際に、「社会的意義」「ひたむきに打ち込める仕事とは」というポイントも加えて見られるようになるのではと思います。

虹色のチョーク ~働く幸せを実現した町工場の奇跡~ 出版社:幻冬舎
小松 成美 (著)
若張 正道
株式会社アクシアム
 エグゼクティブ・コンサルタント/人材紹介事業推進マネジャー
若張 正道

大学卒業後、大手食品商社の営業部門からキャリアをスタート。人材サービスに関心があったことから、2001年、アクシアム入社。新規事業であるMBAをメインとしたネットリクルーティングサービスの立ち上げに参画。無事にローンチを果たし、その後は人材紹介事業推進マネジャー 兼 エグゼクティブ・コンサルタントとして、ハイエンド人材の展望ある転職=「展職」を支援している。

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