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2018年11月

慮る力 ~できる人には顧客の心をつかむ「慮る力」がある~
岡本 呻也(著)

できる人には、顧客(人)の心をつかむ「慮(おもんばか)る力」があります。

「慮る」は、「よくよく考える。考えはかる。おもいめぐらす(広辞苑:岩波書店)」という意味です。「相手のことをよくよく考え、相手のためになる仕事をする」、言い換えれば、相手の心の機敏を読み取り、応え、相手が本当に満足する「良い仕事」をすることといえます。

今回ご紹介する一冊『慮る力』は、その「良い仕事」をするための当たり前の心構えについて述べています。初版は2001年。随分前に刊行されたものですし、読み進めても目新しいことはないかもしれません。しかし、当たり前のことを当たり前に行う難しさに気づかされ、そしてそれができていないから「相手に本当に満足してもらう仕事」ができないことに気づかされるでしょう。

私はキャリアコンサルティングのプロフェッショナルとして仕事をし、多くの方をご支援していますので、「慮る」ことは日々意識しているつもりです。ですがその奥深さは果てしなく、ご相談者とのやりとりの中で独りよがりになってはいないか、本当にご相談者を理解して「その方のためになる仕事」ができているかと多々迷うこともあります。

「慮る力」とはどういうことなのか、そして「自分にしかできない付加価値の高い仕事」をするにはどういう心構えが必要なのか、原点に返るべく久々に同書を手に取りました。

同書は二部構成になっており、第一部は「慮る力」の構造について、第二部は様々な業種・業界のプロフェッショナルの方々24名のインタビューを通し、その方の「仕事の現場」における心構え、気配り・目配り等の実際に迫っています。ホテル、葬儀社、クラブ、ゴルフ場、自動車セールス、コンピュータのカスタマーサポート、さらに裏千家家元などその職業は様々です。その道のプロフェッショナルの方々の「慮り方」は大変わかりやすく参考になると思います。

私は今回、原点回帰として、第一部で取り上げられている「構造と心構え」に特にフォーカスして再読しました。自分なりに理解し整理した、その「構造と心構え」を下記にご紹介します。本文を引用しながらも自分の言葉に置き換えた個所もありますこと、ご了承いただけると幸いです。

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「慮る力」は下記の4つの項目が関係しあう構造で、4つの能力が揃って初めて相手を満足させる仕事ができます。
(1)自己認識:自分の心の扉を開く。心に壁を作らない。
(2)対人理解:相手の心を感じ取る。
(3)セルフ・マネジメント:自分の心をオープンにしつつも、コントロールする。
   相手を認める広い心を持つ。
(4)社会的スキル:行動を起こし相手との心と心が触れ合った関係を作る。

まず、「慮る力」を発揮するには、「自分の仕事は何なのか(自己認識)」をはっきりさせるところからスタートして、「相手が何を望んでいるのか(対人理解)」「自分の行動を意識的にきちんとコントロールできるか(セルフ・マネジメント)」の2つが同時に働いて相手に影響を与え、「人間関係を作る行動や仕事ができる(社会的スキル)」というステップを踏みます。

もう少し具体的に説明すると、(1)の「自己認識」のためには、自分で責任の持てる仕事の範囲と限界を自覚し、常に新しい領域にチャレンジしていく姿勢が必須です。そして様々な相手と応対し、一人一人の気持ちを知るために、自分自身も成長し続ける姿勢が必要です。

つぎに(2)の「対人理解」=「相手の心の中を知る」には、どうすればよいのでしょうか。

会話から得られる情報は2つあります。1つは「言葉からの情報」、2つめは反応や雰囲気から推察する「心の声」です。情報量全体に対する言葉からの情報は7%、声のトーンや調子からが38%、55%はボディランゲージから伝わると言われています(メラビアンの法則)。

相手が「自分に求めている目的は何か」をはっきりと聞きだし、相手の態度や話しぶり、こちらが投げかけたことに対する反応、会話から得た情報、さらに目つき、表情、しぐさ、行動、持ち物など相手をとことん観察することで心の声を読み解くサインにつながります。そしてそれらを総合し、「相手はこういうタイプ」とイメージを持つことで先手を打つことができます。

相手のニーズを先読みし「相手が何かをして欲しい」と思う前に先回りして行動することで、相手は「自分を理解してもらえた」と感じるものです。いわば相手は常に、こちらの能力や誠実性を試しているといえます。

では(3)の「セルフ・マネジメント」についてはどうでしょうか。相手と向き合うときには、まず自分の心を開くことが第一歩ですが、自分をオープンにしつつも、それをコントロールすることが必要です。

自信を持って仕事をしながらも常にその結果が相手の求めるものであるか確認し、外れている部分があれば軌道修正をすること。人の嗜好は常に変化するもの、また相手はそれぞれ違う個性を持っています。一人一人に対応したパーソナルサービスをする覚悟がなければ相手は満足しません。自分ができる「相手の為になること」を徹底的に追求し、さらにその先まで考えることが求められるのです。

自分を無にする、つまり固定観念を捨て、真っ白な心持ちで相手に向かうと解決策を見つけられ、今まで見えなかった新しいことを発見できることがあります。例えば怒りは自分の感情を爆発させているだけですから、怒りではなく、自分の心を抑えて目的達成のために一番合理的な行動をとるべきです。

このように、相手を尊重し自分のできることをわきまえたうえで、且つ、自分の心をうまく舵取りして仕事をこなす態度がとれれば、次は相手をじっくり観察し相手のニーズを探り当てて「本物の満足をもたらす仕事」ができるのです。すなわち、「自分にしかできない付加価値の高い仕事」の土台ができあがるのです。

(4)の「社会的スキル」は、相手の心に働きかけるプロの仕事をするということです。そのためには以下の2つを意識することが大事です。

「相手の心を開かせるにはまず自分の心を開く。自分の心に壁を作らない」
相手に気を配る、相手がリクエストしやすい雰囲気や関係性を創る、相手の気持ちを思いやったやり取りをすること。単に連絡を伝えるだけではだめです。気持ちが通じると相手の心に響き、表情が変わります。さらに相手のニーズを引き出すキーワードを見つけること。今求められている本質は何かを常に考える必要があります。

「その時々で変化していく相手の気分や感情に、どう対処するべきか」常に意識する
なぜ相手がそう言っているのか、相手の気持ち、置かれている立場、環境などすべてに考えをめぐらすことです。相手になりきって深く考えることも大切でしょう。しかし同時に、無用な警戒心を抱かせてしまわないよう細心の注意を払って行動する必要もあります。

相手のことを思いやりつつ、プロとして、自分の持つノウハウを駆使し、相手の信頼、相手の心、相手のニーズにフォーカスした働きかけをする。相手と自分の心と心の触れ合いを作り出していくことで、心に届く仕事になるのです。
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改めて、「慮る力」とは、「人と関わる時の心の有様が根本であり、その上で相手の心の声に耳を傾け、相手のためになることに取り組むこと」であると私は思います。こうまとめてみると一見ごく当たり前の心構えに思えますが、これらは忙しさや煩雑な日々の中で漏れてしまいがちなものであり、このような意識を持ち続けることの大切さを感じました。

「慮る力」は、業界・業種・仕事内容に関わらず、日々仕事をしているすべての方に、時代に関わらず普遍的に必要とされる力であり、それが他の人と違う自分の価値を高めていく力になるのではないでしょうか。

AIに仕事が取って代わられるこれからの時代にこそ、皆さんにとって本書の内容が、自分にしかできない「相手のためになる仕事」すなわち「良い仕事」をし続けていくための一助になれば幸いです。

慮る力 ~できる人には顧客の心をつかむ「慮る力」がある~ 出版社:ダイヤモンド社
岡本 呻也(著)
大石 順子
株式会社アクシアム
 エグゼクティブ・コンサルタント
大石 順子

大学卒業後、日系消費財メーカーに14年間在籍。その後、マーケティング・コンサルティングファーム、人材育成コンサルティング会社にて、顧客視点のマーケティング(リサーチ&商品開発)、新規事業戦略立案や新商品開発、CS調査・課題解決に携わる。2005年、アクシアムに参画。自らの展望を叶え、現職へ「展職」を果たした。“転々とする転職ではなく展望ある転職=「展職」を”という理念のもと、約10年間、キャリアコンサルタントとしてハイエンド人材のキャリア形成をサポート。キャンディデートひとりひとりの展望を実現すべく、その思いに寄り添った丁寧かつ的確なコンサルティングを提供中。

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