転職コラム転職市場の明日をよめ

四半期ごとにお届けする転職市場動向。アクシアム代表・キャリアコンサルタントの渡邊光章が、日々感じる潮流を独自の視点で分析しています。

2004年 7月~9月 
2004.07.01

キャリアを選択できる時代。年収を選ぶ時代。

今夏の求人市場における採用側のニーズはより活発になってきたものの、個人の動きは、まだまだ景気回復には追いついていない状況です。

アクシアムでは今年5月辺りから、今までにないタイプの求人が増加してきています。外資系やベンチャー企業における求人だけではなく、これまでほとんどなかった日系大手企業からの求人が目立ってきています。まさに一部・二部上場企業からの求人ブームが始まったといえるかもしれません。

こういった背景には、リストラがようやく完了し、95年以降停滞していた若手の幹部候補採用の再開や、企業再生、MBO、事業領域の見直し、M&A、公開などの経営戦略や資本政策の大掛かりな変化の中で、本来社内で見つけることができないマネジメント人材やマネジャーなどのニーズが発生してきたことなどが挙げられます。また、これらの求人ニーズに見られる共通点は、どれも前向きなものであり、募集だけに限らず、スカウト型の求人が増加してきたことだといえるでしょう。

ただし、このような求人増加の傾向は、単に求人数と求職数の問題には止まりません。事実、最近の求人は以前と比較して、候補者により高いレベルのスキルや価値感などを求めています。いわば、質的に妥協をせず、たとえ年収を含むトータルでの採用コストが高くなっても、最後までベストな候補者を探そうとする傾向にあります。採用側にとって、長期に渡り応募者が多かった状況が続いたことが影響し、企業が『何時の日か、ベストな候補者がでてくるであろう』と考えがちになったからかもしれませんが、実際に採用のタイミングを失ったケースもちらほら出始めてきています。

アクシアムの特徴ともいえる、MBAホルダーを対象とした求人を見てみると、まさにこういった背景に合致している状況です。

新卒MBAの市場は2002年、2003年のように「求人がない」といった最悪の状況を脱したと宣言して良いかと思われます。それどころか、急激に状況が好転した2004年は、ほぼすべての業界で求人が復活しただけではなく、これまでになかった新たな分野での求人ニーズが発生しているため、総じて個人にとっては極めて有利な展開となっています。

しかし、採用する企業にとっては候補者が多くとも、必ずしもベストな人材が市場に大量にでているとは限りません。

自分のスキルや経験といったものを正確に把握せず、ただただ希望や願望だけを追い求めて求人を探すMBAホルダーは、求人が多数あるにもかかわらず、なかなかオファーをもらえない傾向にあります。これに対して、これらを理解している特定の優秀な35歳位の海外MBAホルダーの場合、600万円~2000万円のオファーまで様々なチョイスがでてくることになります。

これは単に市場価値が異なるのではなく、業界が違えば、全く異なる提示額が存在するということです。自分の現在価値を最大化するのか、それとも将来価値を最大化するのかで、全く異なる報酬制度が市場に存在するためです。

今後、しっかりと自分の価値感を定め、展望をどのように実現するかということで、キャリアを選択できる時代、年収を選ぶ時代になってきたといえます。

「日本企業か?外資か?」「大手か?ベンチャーか?」個人が自由に選択できる時代だからこそ、しっかりと自分自身を見失わないことが大切です。

関連情報

コンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)