転職コラム転職市場の明日をよめ

四半期ごとにお届けする転職市場動向。アクシアム代表・キャリアコンサルタントの渡邊光章が、日々感じる潮流を独自の視点で分析しています。

2005年 10月~12月 
2005.10.01

マネジメントリーダーを目指す人向けに、市場が変化

自ら応募する「募集型求人」と、ヘッドハンティングに代表される「スカウト型求人」のマーケットについて前回お話ししましたが、それぞれのマーケットで30代の動きが活発になっています。全体として30代を対象とする求人が増え、同時にマーケットインする30代の個人も増加しました。さらには「スカウト型求人」の質的変化がみられます。

「スカウト型求人」における質的変化とは、マネージャー・マネジメント層といわれるポジションのニーズが高まっていることです。

例えば……

「マネジメントパートナーを探したい社長」「創業社長を探して欲しい出資者」「MBO後の経営を任せたい現経営陣」からの依頼。「外資系コングロマリットの戦略新規事業開発ディレクター」「上場準備の経営企画室長(役員候補)」「世界市場に出て行く際の統括責任者」「海外支社の社長候補」といったポジションの求人など。

これらは実際に、今年アクシアムで扱った案件です。しかもすべてのポジションで「30代でもコアコンピテンスがあれば候補者として認める」というお話が採用側からありました。まさに、マネジメントリーダーを目指す人には、大きなチャンスが到来したといえます。

ただし、本当にマネージャー・マネジメントとして任せてもらえる“本物”の求人と、幹部とは名ばかりで権限を与えられず、力を発揮しきれない求人が存在することも事実。後悔のないキャリア形成のために、“本物”を見分けることが重要になっています。また、このようなチャンスのときに、しっかりとマネジメントへの道を掴む人、キャリアへの誤った認識でそれを活かしきれない人との差がはっきりと出てしまいました。

日系大手企業が10年ぶりに幹部候補の採用を開始し、総合職採用を再開しました。これらの企業は、優秀な20代後半から30代前半の人材を積極的に採用しています。しかし、この動きに対し、元々内部にいた一部の幹部候補、あるいは最近まで幹部と呼ばれていた35歳過ぎの人々から、「社内のリソースが適宣配置されていないのに、なぜ外から人材を採るのか?」「組織内部に幹部(候補)がいるのに、なぜ採用するのか?」といった疑問の声が挙がっているとか。

彼らのキャリアへの認識は、残念ながら誤ったものであるといわざるをえません。

勉強と経験を積み、会社員として過不足なく勤めれば、いつの日かマネジメント(本社は無理としても関連子会社のマネジメントぐらい)をできるのでは、と漠然と思い描いている人と、しっかり社内でのキャリアを描いている人では、まったく市場価値が異なってきます。

また、社内のニーズも社外のニーズも変わってきていることに気づいてはいるが、何も実行しないというのでは、気づいていないことと同じです。

だからといって、いきなり市場に出ろ、転職しろと言っているのではありません。具体的な自分のキャリアの機会が社内にはあるのか。社外ではどのような可能性があるのか。それを知り、機会がなければなぜ得られないのか、しっかり検討することが必要だといいたいのです。

社内の人事部・上司・先輩等は、社内のキャリア形成の機会については相談・提示してくれますが、社外の機会については提示してくれません。そこで、具体的な求人案件の依頼を受けているコンサルタント等と、キャリアについて相談する意義も出てきます。

余談になりますが、転職を前提にせずとも社外に機会があることを知って安心し、企業改革に乗り出し、成功された相談者も過去におられます。アクシアムは、そうして益々市場価値を高めた方を、さらに長期的に応援していきます。キャリアの相談に留まらず、現実的な可能性や機会の提示を行うことこそが、私たちの社会貢献だと考えているからです。

市場の変化を意識し、的確に捉えましょう。本当に自分の能力を発揮できる求人を見抜き、より多くの方がチャンスを掴まれることを願っています。

関連情報

コンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)