転職コラム転職市場の明日をよめ

四半期ごとにお届けする転職市場動向。アクシアム代表・キャリアコンサルタントの渡邊光章が、日々感じる潮流を独自の視点で分析しています。

2008年 1月~3月 
2008.01.17

KKKK(感じる・考える・行動する・結果を出す)

「空気が読めない」の略語「KY」が巷で流行語の一つとなった昨年。英語のabbreviation(略語)のように使われ、最初、何を意味しているのかまったく分からずに戸惑ってしまいましたが、それは筆者だけではなかったのでは? ならば最近考えていることに、この「KY」式の言葉の記号化を当てはめてみようと、今回のタイトルを「KKKK(感じる・考える・行動する・結果を出す)」としました。

「考え、行動し、結果を出す」という成功へのステップ/パターンは、これまでも当たり前に耳にしてきたことですが、2007年半ばから「感」という文字を経営者のご講演、小説のタイトル、その他メディアなどでも見たり聞いたりすることが多くなりました。共感型採用、共感型マーケティング、共感型経営、鈍感力…等々。そこで「考え、行動し、結果を出す」の前の最初のアクションとして「感じる」という項目を入れてみました。

経済・経営などに関わる仕事をし、キャリアアップを狙う人たちの価値観について、一般的には「トップになってやろう」「お金儲けをしたい」など極めて世俗的な目的がその共通項のように思われているかもしれません。それは半分は当たっています。

しかしながら、長年キャリアコンサルタントという仕事に携わっていて思うのは、経営者・起業家・プロフェッショナルといわれる方で成功されている方々については、文化であるだの趣味であるだの、教養というものが高いレベルで備わっており、それらが滲み出た価値観を持つ人物が意外と多いということです。(逆に、学歴・職業経歴が立派でも、このような観点ではレベルが低いと見える方もおられます。)

最近、このような文化・教養なるもの=滲み出る価値観が、転職の場においても極めて重要なポイントになっているように思います。インタビュー(採用面談)の結果、スキル・年収・職責・知識・経験などがすべて合致しているにもかかわらず、「カルチュラルフィットネス:文化的な合致が見いだせませんでした」として合意に至らないことも往々にしてあるからです。

ところが採用の審査段階では、このような点を客観的に計ることは非常に難しいといえます。その判断軸はまだまだアナログ的な要素が多く、デジタル化されていません。それらはペーパーテストになったとたん陳腐なものになってしまい、スクリーニングの意味をなしませんし、面談の場では、それこそインタビュアーの個人的価値観に左右されてしまいます。候補者/採用側、双方の「感じる」というポイントの合致が、キモになっているように思います。

上記で述べた点も含め、「感じる」ということが、最近特に気になっています。

A社とB社、ふたつのオファーがある。頭で考えればA社がベストだが、自分の心に聞いてみるとB社に惹かれる。悩んでB社を選択した結果、思うようなキャリア展開をすることができ、満足できる現在の自分がいる…という方。組織の一員として手がけていた仕事を「さらに、こうしたい」と直感的に思い、その思いを実現化するために会社を創業して活躍されている方…など。

考えに考えて行動しても結果が出ず、「感じる」ことが先行してはじめて、成功につながる人がいます。また、考えても人生の先が見えない方が多い中、「感じる」だけで行動に移すことができ、成功をつかむ人が存在します。いったい何故なのか。キャリアコンサルタントとして、探るべき今年のテーマにしたいと思っています。

今回のタイトルにつけた「KKKK(感じる・考える・行動する・結果を出す)」。結構、深い命題かもしれません。行動心理学や経営学に明るい方たちに、一度聞いてみようと思っていますので、乞うご期待を。もし、どなたかご意見があれば、ぜひご教示ください。

関連情報

コンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)