転職コラム転職市場の明日をよめ

四半期ごとにお届けする転職市場動向。アクシアム代表・キャリアコンサルタントの渡邊光章が、日々感じる潮流を独自の視点で分析しています。

2007年 10月~12月 
2007.10.08

MBAホルダー求人の変化

アクシアムには創業以来、MBAホルダーの求人が多数寄せられていますが、特に2005年頃から、新たな流れが出てきたのではないかと感じています。このコーナーでもマネジメントのプロフェッショナル、コンピテンスを備えた高度な専門家、アントレプレナー等の需要が拡大してきたことを述べてきましたが、今回はもう少しその中身を探ってみることにしました。

35歳までに何をすべきか?
35歳を越えてしまった。さあ、どうすべきか?

と考えている方の中で、

自分には専門性も自信もある。
はたして企業の経営を目指すべきか、目指せるのか、チャンスはあるのか?

とお考えの方はぜひお読みいただければと思います。

MBA求人には、ここ2年で特筆すべき変化が起きています。ひとつめは、MBA人材に若くして経営のチャンスが巡ってきているが、それをメンターとしてサポートしているのもMBAホルダーの経営層であること。

ふたつめは、MBAを取得した後(ビジネススクール卒業直後の、ポストMBAと呼ばれる数年間)のキャリア形成が、後々、経営者になれるかどうかについて影響しているのではないかということです。

まず前者については、MBAの価値を理解し、ビジネスの上でMBAホルダーの持つ力をうまく活用するのは、やはりMBAを保有する株主や経営者であることが多いからのようです。弊社の顧客の50%以上は、そのようなMBAを保有するプライベートエクイティ/ベンチャーキャピタルのパートナー、投資銀行家、大株主といった人たちです。彼らはMBAができること・できないことを過不足なく理解できていますし、MBAとしての共通の価値観がプラットフォームとなり、知識・スキル・ビジネスフレームの活用のみならず、良い関係性の維持、相互理解が可能なのだと見て取れます。

後者については、弊社が現在受託中のMBAホルダー求人約700件を対象に、その中身を調べてみた結果をご紹介したいと思います。最多の1位が「経営企画(その実数は約160件にも及びました)、2位は「財務」です。3位には「事業開発(特にM&Aにかかわる仕事が目立ちました)、4位は「戦略コンサルティング」、5位は「会計・経理」という結果でした。

  • 1位 経営企画(戦略企画、経営管理、上場準備等)
  • 2位 財務
  • 3位 事業開発(新規事業、M&A等)
  • 4位 戦略コンサルティング
  • 5位 会計/経理

ちなみに2位の「財務」に関しては、企業投資・事業計画・経営管理・株式公開・M&Aなど、EquityにせよDebtにせよ”企業財務”と呼ばれる領域の新しい知識やスキル、実践経験が求められるようになってきたと思います。

「経営企画」「財務」といったポジションがMBA人材に対する採用企業の期待であり、このようなキャリアを経て、経営者となる人材が生まれつつあると感じています。

以上のようなMBA求人の流れは、1985年9月のプラザ合意に始まり、1998年の金融改革、そして2001年9月の9.11事件というワールドワイドな社会・経済のターニングポイントを経て起こってきました。資本流動と人材流動が大きく連動するようになり、長期的にある業界に精通することのみでは対処できない新たな経営手法が求められています。社会の需要に圧倒的に追いついていないのが「高度な経営者」であり「雇用を離れて経営ができる人材」なのではないでしょうか。

株主利益・企業価値を高めるだけではなく、雇用開発と顧客ニーズをサスティナブルに満足させられる次世代経営者とはどのような力と経験をもつべきなのか。雇用契約を離れても経営責任を果たせる経営者とは何か。これからも人材市場の変化の中で、ビジネスリーダーのキャリア創造を支援する”Executive career Maker”として考えていきたいと思います。

ちなみに2位の「財務」に関しては、企業投資・事業計画・経営管理・株式公開・M&Aなど、EquityにせよDebtにせよ”企業財務”と呼ばれる領域の新しい知識やスキル、実践経験が求められるようになってきたと思います。

関連情報

コンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)