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四半期ごとにお届けする転職市場動向。アクシアム代表・キャリアコンサルタントの渡邊光章が、日々感じる潮流を独自の視点で分析しています。

2017年7月~9月 
Published:2017-07-27

シリコンバレーの空の下より

現在、弊社では過去にないほどの多くの求人を受託しています。特に外資系コンサルティング、ヘルスケア、Eコマースなどの業界の求人需要が旺盛です。それに比べると、ブランドやメーカーなどの企業では若手求人やセールス関連の求人はあるものの、ミドル以上の求人やその他の職種の求人は少ないように感じます。

また、弊社にご依頼がある求人は、「MBA」「グローバル」「イノベーション」といったテーマのものが中心になるのですが、それらの各テーマにおいて、ベンチャー企業からの求人が増加しています。今年のベンチャー投資額、そして上場企業数は過去最多となる見込みだといわれていますが、実際の求人の現場でも、そのエネルギーの高まりをひしひしと感じます。なかでもIPO直前のCFO求人が圧倒的に増えました。海外の機関投資家から出資を受けるケースや、IPO後も海外展開を行うケースが多くあるため、ベンチャーのCFOといえど英語が必須という案件が多いのが特徴。ひとつご紹介が成立しても、続々とまた別の新しいベンチャー起業家、あるいはベンチャーキャピタルから、CFO求人のご相談がある状況です。

日系大手や中堅企業からの求人、企業再建に関する求人もありますが、これらの領域では管理系、生産系、セールス系など、依頼がある職種は様々。特徴としては、大手でも中堅でも「M&A」をコアとする人材の外部登用が活発になっています。そのほとんどが海外でのM&Aに関する業務の担い手を探すものであり、海外投資を推進するための事業開発部長やメンバーの募集になります。

そのようなベンチャー企業の求人の増加を受け、今回、シリコンバレーへと飛ぶことにしました。数日前に現地入りして様々な方からお話を伺い、いま当地でこの原稿を書いています。

現在シリコンバレーでは、多くの日本人が活躍しており、その中には50名以上のMBAもいるのだとか。かつては大企業の駐在チームだけだったのが、いまやシリコンバレーで起業を果たしたMBA、さらに何度も創業している起業家、日本で上場し世界市場を目指してシリコンバレーに在住しているベンチャー経営者、こちらに根差して活躍するベンチャーキャピタリスト…などその顔ぶれはじつに多彩。彼らとの対話の中で、印象に残った言葉やコメントを記しておきます。

日本の大企業にせよ、ベンチャーにせよ、世界に通じる製品やサービスの提供を目指し挑戦をする企業は多いが、撤退を与儀なくされる企業がほとんど。この地は本当に弱肉強食だと思う。

生まれる企業もあれば、消えてゆく企業もある。そのサイクルが見えてくると、次の戦略やデザインの方向性を感じたり、考えたりすることができる。

世界を目指すのであれば、部下を海外に派遣するのではなく、経営者自身が海外に身を置いて企業価値を高めることが大事。そうすればトップができる仕事が格段に増える。

人的ネットワークが重要なのは日本でもアメリカでも同じだが、ここではそれをさらに強く思い知る。トップとトップが会合する機会がとても多い。本社にお伺いしている場合ではないほど、その機会は頻繁。したがって、会ったその場が勝負所であり、商談の大いなるチャンス。

普段からの人脈はもちろん、信頼や信用がなければ仕事にならない。リファレンスやレピュテーションが良くなければ、商談が止まってしまう。

長く当地のビジネスコミュニティに根を下ろしている人たちは、2~3年で日本に戻ってしまう日本人ではなく、こちらに居を構える人を信用する。少なくとも10年ほどは留まる覚悟がないと、この人的ネットワークに入り込んだり、信頼されたりすることは難しい。

今回ご覧になったことだけで“シリコンバレー”を判断するのは良くない。“シリコンバレー”とはこうだという紋切型の見立ては通用しない。本当に千差万別。

今回、パロアルト在住の二人の起業家にお招きいただき、ご自宅で開催されたBBQや夕食会におじゃまして家族ぐるみの温かいおもてなしを受けました。前述のとおり、そこに集まった人たちの多彩さに目を見張るとともに、彼らの会話に出てきた「iD Tech Camps」というイベントに大変感銘を受けました。

スタンフォード大学のキャンパスで毎年行われているこのサマーテクノロジーキャンプに参加するため、夏のこの時期、シリコンバレーには世界中から子供たちが集まってくるのだとか。現地の多くの日本人も、子女をこの約2週間のプログラムに参加させるそうです。ちょうど日本から、このプログラムためにお子さんを連れて来られている方もおられました。

ただ英語がネックになるのか、日本からの参加は珍しいようで、その点はじつに残念です。幼い頃からスタンフォードという最高学府の空気を感じ、学ぶことそのものの大切さや楽しさ、また“世界中の子供の中の自分”を認識することは、大きな教育的意義があると思います。何を学ぶかではなく、なぜ学ぶのか…きっとスタンフォードをはじめとするパロアルトの環境が教えてくれるでしょう。

子供でも、大学院生でも、博士でも、経営者でも、起業家でも、投資家でも、誰であろうと意欲と能力があるなら歓迎する。責任が果たせる人には自由を与えよう。そんな雰囲気がこの地には溢れています。このような自由な環境では、誰かが進む方向を示してくれるわけではなく、自分ですべての判断を下し、進む道を決めなければなりません。自分には「何ができて」「何がやりたいのか」を見極めることが、さらに重要になります。できることも、やりたいこともない者は、この自由な社会では去るしかありません。とても厳しい社会ではあるものの、だからこそ、その厳しい環境を乗り越えようという気概を持つ人たちのコミュニティはより強固になり、情報の交換や共有、共闘をしながら成功を目指しているのだと思いました。(ちなみに当地では家族や友人を大事にしようというムーブメントも非常に強いと感じました。これも、自由で厳しい社会だからこその特徴かもしれません。)

日本では、何十年も前からいわゆる“シリコンバレーモデル”が賞賛され、産業政策においてもそれらを真似ようという動きがありました。それゆえ“リコンバレー詣で”と呼ばれるツアーが多数企画され、それは今も続いています。中には意味のあるツアーや研修もあるのでしょうが、あいかわらず観光気分で現地を表敬訪問し、うわべだけを見て帰国していくものが絶えないようです。(かく言う筆者にも「おまえもじゃないか!」とご批判がありそうで、大きなことは言えませんが。)

日本がシリコンバレーのようになる、つまり“シリコンバレーモデル”が日本で根付くことは、きっとまだまだないでしょう。なぜなら日本では、他人に合わせよう、誰かについていこうという人の方がまだ圧倒的多数だと思うからです。盲目的にシリコンバレーを礼賛するわけではありませんが、自分自身の価値観をしっかりと持つこと、そして他者の価値観を感じ取ること、それらの能力の重要性を改めて感じました。

関連情報

渡邊 光章
株式会社アクシアム
 代表取締役社長・キャリアコンサルタント
渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)

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