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四半期ごとにお届けする転職市場動向。アクシアム代表・キャリアコンサルタントの渡邊光章が、日々感じる潮流を独自の視点で分析しています。

2018年1月~3月 
Published:2018-01-04

求人倍率、好景気の実感なき“過去最高値”

厚生労働省が毎月発表している『一般職業紹介状況』の調査。昨年12月公表の最新の有効求人倍率(2017年11月分)は1.56倍となり、高度経済成長期であった1974年2月の1.53倍以来、じつに43年10カ月ぶりの高水準となりました。

この数値はバブル景気のさなかにあった1990年7月の1.46倍をも超えています。バブル以降で有効求人倍率が比較的高かった時期を振り返ると、リーマンショック前の2006年から2007年あたりが思い起こされます。当時の有効求人倍率は0.92~0.94倍でしたから、この数値がいかに高い水準であるかをご理解いただけるでしょう。

その後、2007~2008年に起こった金融破綻により、2009年8月の有効求人倍率は0.42倍に。急激に下がって半減して長い低迷の時期を過ごしました。そしてその時期から反転し、現在へ。8年連続で求人数は増加し、ついに2009年の3倍以上という最高値をたたき出しました。

業界別の対前年同月比をみると、製造業(+12.8%)、情報通信業(+9.3%)、サービス業(+8.3%)、医療・福祉(+7.9%)、運輸業・郵便業(+7.3%)、卸売業・小売業(+6.6%)などでのきなみ増え、教育・学習支援業(-0.9%)は微減となっています。製造業などで求人が戻ってきている一方、教育関連の求人が減ってしまったのは個人的に気になります。都道府県別(就業地別)では、最高は福井県の2.08倍、最低は北海道の1.19倍であり、地方の雇用も改善されてきているように見えます。

2017年は、300万人を超える人が転職をするという予測もあったほどで、つまりそれは全就業者(正規の職員・従業員)・約3000万人の中で10人に1人が転職することを意味します。昨年は新規求人が増加(35歳以上のミドル層の求人も)し、売手市場一色となった年でした。前述の厚生労働省の調査と同日に総務省が公表した、2017年11月期の『完全失業率』は2.7%。職種や勤務地などの条件で折り合わずに起きる「ミスマッチ失業率」も3%程度とされ、マクロ経済学でいうところの“完全雇用”状態にあるといえそうです。このように、数字上の雇用環境としては、過去にないほど恵まれた状態であることを示しています。

一方、日本の債務に目を転じてみると、国債などの総額はとうとう1000兆円を超えました。税収入が57兆円程度でマイナス金利政策をとる中、成長戦略の実現に向け、国としては失敗が許されない危機的状態にあります。加えて世界の政情も、極めて不安定です。そんな環境の中、個々人のキャリアだけが活況で、危機的状態とは無縁である…私には、なぜかこの空前の売手市場という状態が、異常にさえ感じられてしまうのです。

40代後半以上の皆さんなら、高度経済成長期やバブル期の記憶がおありだと思いますが、当時と比べて産業が活性化され、経済が成長し、雇用が拡大している実感をお持ちでしょうか? もちろん年齢や職業等によって景気が良いと感じるか悪いと感じるかは異なるでしょうが、私には現在の高い有効求人倍率の主な要因が、前向きなもの=経済成長による新規雇用の増加だけとは思えず、手放しに喜ぶことができません。

後ろ向きの要因として少子化による人手不足の深刻化はすぐに浮かばれると思いますが、実際に人材マーケットに接していて感じるのは、単純な人材の量というより雇用者(採用企業)が求めるスキルを満たす人の質、ならびに量が決定的に不足していることです。特に事業や組織を牽引するリーダー人材の不足は深刻で、そのような人材を求める声は強く聞かれ、個人にとってキャリアチャンスが多いとも見える一方で、日本の社会全体としては危機感を持たざるをえないのです。(弊社ではホワイトカラー、エンジニア、ミドルマネジメントやマネジメント層の求人・求職を主に扱っていますので、全国統計等とは少し異なる現場といえるのかもしれませんが。)

もちろん弊社においても、2017年は確かに新規求人・新規求職者とも増加した一年でした。この傾向は大きな経済破綻などが起こらなければ、2018年も単純に継続すると思います。

2017年、アクシアムではキャリア相談を通じて、多くの方の年収アップやキャリアアップをご支援することができました。MBA留学前に比べ卒業時に年収が倍増した方。ベンチャーに転職してストックオプションを大量に得ることができたことで、将来にやりがいを感じることができた方。想定よりも早く30代で役員のオファーを得た方、等々。しかし何より嬉しかったことは、30代のみならず、40代の方のマッチアップをたくさんお手伝いできたことです。

これまでも折に触れてお話しているように、50代の雇用環境は依然として厳しく、ご支援は本当に苦戦の連続。優秀な50代の方々と新しいチャンスを探せども機会は少なく、その点は苦痛の一年でした。30代、40代の人材を求める企業のニーズは多数寄せられますが、50代のそれはなかなかありません。まだまだ私たちがリーチし、開発しなくてはならないところだと身が引き締まる思いがしています。

最後に、新たな2018年を迎え、自らのキャリアに真剣に向き合っておられる読者の皆さんに向けて、3つの提言をさせて頂きたいと思います。

1)ご自分の5年後のキャリアをシミュレーションしてください
10年先でなくて構いません。現実的な向こう5年の像で結構です。大きな経済破綻等が起きればリストラが待ったなしに起こりますが、そのような不可避な変化が起きたとき、現職は大丈夫ですか? 万一、現職から離れてマーケットに出なければならないとすれば、あなたは転職できますか? 次のキャリアは作れますか?

2)転職のタイミングは、ご自身の時間軸で
転職を考える際、「友人が魅力的な転職をしたから」「年収アップしたのが羨ましいから」など、表層的なことで影響を受けていませんか? 他人は他人です。ご自分の時間軸で考えてください。転職をするのではなく、現職でキャリアを継続されるのが好ましい方もいます。逆に、できるだけ早く転職したほうが良い方もおられます。あえて転職について考えてみるべきタイミングがあるとすれば、人材マーケットでのニーズに変化が起きる「28歳」「34歳」「38歳」。それらの年齢にさしかかったとき、今後のキャリアについて練り直すことは重要ですが、あくまで転職はご自身のタイミングでとお考えください。

3)変化への強さ、柔軟性が求められる
これからは、マルチタスクが求められます。業界・職種・資格・学位といったスペックだけで、転職ができる時代は終わりました。標準的なエリートには受難の時代が訪れています。今後は様々な教養、つまり課外活動やテーマをもったキャリアならびに人生を歩んでいるような人が、活躍するように思います。また、修羅場を超えてきた経験知をもった人が求められていくのだと思います。(修羅場とは、必ずしも失敗を続けてきたとの意味ではありません。成功にも失敗にも努力にも、それぞれどのような意味がその人にとってあったのか。合理的で血の通ったストーリーを語れるような経験という意味です。)そのような経験から、マルチタスク、急激な変化に柔軟に対応できる判断力、決断力が身につけられるのでしょう。そして、そのような人材こそ、これからのリーダーになりえる資質だと思います。

関連情報

渡邊 光章
株式会社アクシアム
 代表取締役社長・キャリアコンサルタント
渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)

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