転職コラム注目企業インタビュー

Corporate Value Associates (CVA)2014.01.14

個人的な話からの取材となり大変、恐縮ですが、1980年代初頭、今から30年以上前、社会人になったばかりの私は「日本人でグローバルに海外で評価されている日本人は誰だろう?」と懸命に調べたことがあります。1985年のプラザ合意以前は、日本にはまだ戦略コンサルや投資銀行が本格参入していませんでしたので、戦略コンサルも投資銀行についてもほとんど誰も知らないと言う状態でした。ですから当時から海外に通じるプロフェッショナルという人はほとんど見つけられませんでした。そんな当時、すでにスイス バッテル記念研究所研究員としてプロフェッショナルとして活躍されていた今北純一氏を知り大変驚きました。グローバル・スタンダード、プリンシプルをもった日本人として心から今北氏を当時から尊敬しておりました。

今北様は今もパリと東京の両方を拠点にコンサルティングを行っておられ、大変ご多忙な毎日を過ごしておられますが、そのような中、今北様にお話を伺うことができ、大変光栄に思っております。よろしくお願いします。いくつかご質問をさせていただきますのでお答いただければ幸いです。

[掲載日:2014/10/23]

Corporate Value Associates (CVA)

渡邊

CVAの日本代表として1999年から15年に渡り、日本の大手企業や政府機関等を顧客として、グローバルなマネジメント戦略に特化したコンサルティングを提供してこられていますが、今北様のご経験や見識から見た、日本の産業社会、企業、あるいは政府が考えなければならない課題はどのようなものがあるとお考えでしょうか?

Corporate Value Associates (CVA)

今北氏

昔は「国際化」といい、いまは「グローバル化」という具合に、使う言葉は違いますが、本質的に変わっていないことは、いずれも日本という窓を通して世界を見る、という視座です。また、日本では「欧米」というようにひとくくりで表現しますが、実際にはこれまでは米国偏重で、「欧」と「米」との有意差を理解している人は少ないですね。「グローバル」というのであれば、欧州という重要な座標を視野に入れること、その上で、欧・米・アジアといった窓を通して日本を客観的に見る視座が不可欠です。それから、これまで、日本は世界に冠たるモノづくりをベースに海外市場を開拓してきましたが、“単品カタログ販売“ 的なアプローチだけでは新興勢力に追い上げられ、いずれはコモディティー化による熾烈な価格競争にさらされてしまいます。これまでになかった新しい価値を付加したパッケージ型のソリューションを提供していくことが重要ですが、このコンセプト自体、なんとなく理解することはできても、具体的にどのような成長戦略を設計したらよいかという課題に対しては、模範解答が見当たらないというのが現在の状況でしょう。

渡邊

そのような課題にどのような解決法が考えられるのでしょうか?特にCVAとしての役割や活動を中心に教えてください。

今北氏

「定量的な解析と裏づけ」、「定性的な仮説の設定」、そして「定性的なシナリオの検証」の組み合わせが必須です。たとえば、新しいビジネスモデルを設計する、といったときに、現存する事業に関する徹底的な分析がまずはベースになります。この分析を通してキーポイントを俯瞰する。この俯瞰図に対して、感性と構想力をもって新しいビジネスモデルのコンセプトを仮説として設定する。この仮説に対して、あらゆる側面からデータを集め、想定したビジネスモデルの事業化ポテンシャルの定量的な裏づけをする。そして、さらに、そのビジネスモデルに対しての着手点と、5年先・10年先のゴール地点とを決め、着手点とゴール地点との間のロードマップを時間軸に沿ってデザインする。CVAとしては、このようなプロセスにおいて必要な定性的な方法論と定量的な方法論を提供することはもちろんですが、より重要なのは、日本に知見が欠落しているヨーロッパに関して、欧州オフィスのメンバーを巻き込んだ、クロスボーダーのプロジェクトチームを構成するひとり一人のコンサルタントたちの独自の知見の総合力です。

渡邊

今北様の著書でも、「ミッション」「ビジョン」「パッション」が重要と述べておられますが、あらためて、CVAの日本代表として、どのようなミッション、ビジョン、パッションをお持ちでしょうか?

Corporate Value Associates (CVA)

今北氏

パッションのほうからお答えしますと、模範解答のない経営課題に対してブレークスルーとなるようなアイデアを生み出し、新しいビジネスモデルのコンセプトを考えること。ミッションのほうは、日本企業がグローバル市場においてベンチマークされる対象となるための実践的なサポートをすること。また、その結果として、日本の産業構造におけるパラダイムシフトを進化させる一助となること。そして、ビジョンとしては、具体的なコンサルティング・プロジェクトの蓄積を介して、日本企業にとっての新たな試みを支援し、また欧州勢を含めた海外の有力企業との間での提携戦略などを演出していくことです。

渡邊

「Global Strategy Boutique」というCVA創業時のコンセプトは、今もCVAを特徴づけている概念だと思えます。CVAでは、グローバルなプロジェクトを日本のメンバーに限らず海外のメンバーとも一緒に遂行する機会が多いことや、大規模なコンサルティング会社ではみられないような企業文化や強みがあるように思われますが、たとえば、どのような仕事が最近多くなってきているかも含めて、CVAらしい特徴的なプロジェクトを教えてください。できれば、Case Managerがどのようにそのプロジェクトをリードしているか具体的に教えていただければ幸いです。

今北氏

Corporate Value Associates (CVA)いくら優秀でも、日本人だけのチームで、日本企業にとってのブレークスルーとなるようなアイデアやビジネスモデルの提案をするというのには限界があります。同じ経営課題に対しても、国や文化やビジネス経験などの背景が異なる個人たちによる混成チームを介して、自由闊達なアイデアジェネレーションをするといったプロセスから、斬新なコンセプトを生み出すといったことによって付加価値を提供できると思っています。 プロジェクトのタイプは大きくは二通りに分けられます。一つは、既存の事業ポートフォリオをベースに、どこを強化し、あるいはどのような新規事業を仕掛けることで国内にとどまらず、グローバルな市場において成長機会を獲得していけるか、といった目的のもの。もう一つは、これまで存在していなかった全く新たな複合的なビジネスモデルを設計し、このビジネスモデルの事業化計画を策定する、といったものです。たとえば、いくつかの再生エネルギーを分散電源として組み合わせたビジネスモデルを設計するなどは、その一例です。CVAらしさ、ということでいえば、プロジェクトチームが、ヨーロッパ・アジアを含めた混成部隊であること、また、いわゆるデータマイニングをグローバルに実行し、定量的な検証を徹底させること、などです。

Case Managerは、正に文字通り、混成チームを国境の枠を超えたレベルで、指揮し、連日のプロジェクト管理をし、最終成果物のコンテンツに対しての統括責任を持つということになります。

渡邊

本来、CVAは少数精鋭ということで滅多に求人をオープンされないはずが、今回は、Case ManagerやAssociateの募集を若干名されるとのことですが、CVAの考えるプロフェショナルの定義を教えてください。どのような資質のある方が、その定義に合致するのでしょうか?どのような方であれば、長くCVAの仲間として活躍できるのか、どんなキャリアビジョンを持った人が候補者として好ましいのか教えていただければ幸いです。

Corporate Value Associates (CVA)

今北氏

自主性と当事者責任をもって仕事に接する、ということが基本的に重要だと考えています。 少数精鋭ということを裏返すと、評論家や指示待ち症候群といった人たちは戦力にはならないということです。また、模範解答がないからこそ、自分にとって考える意味がある、という具合に、知的好奇心をドライビングフォースにする人たちこそプロフェッショナルであるという感覚を持っています。

どんな職場も、完全無欠というところはありません。このことからいえば、「隣の芝生はより緑に見える」という考えに引っ張られる人は長続きしません。また、どんな仕事でも楽なことばかりということはありません。壁にぶつかったら、逃げることなく、自らの力で乗り越える、そういったメンタリティーの人が好ましいですね。

渡邊

最後に戦略コンサルティングファームの中でも、CVAの特筆すべき点があれば、幾つか教えていただけますか。

今北氏

すでに述べている点よりも、踏み込んで具体的にお話しますと、5つぐらいの特徴があります。

  1. 「コンサルティング・ブティーク」であることを標榜するように、ピラミッド型の組織の歯車としてではなく、それぞれの個人が自らのイニシアティブを駆使してチームに貢献しています。
  2. 年齢が若くても有力企業のトップマネジメントとの直接的なインタラクションの機会があります。(アクシアム注:CVAのコンサルタントのキャリアは、コンサルタント/シニア・コンサルタント/アソシエイト/ケース・マネジャー/マネジャー/シニア・マネジャー/パートナーとなっているため、たとえば、日本を代表する大企業で代表権を持つトップへのプレゼンテーションや戦略プランの打合せなどに、ケース・マネジャーはもちろんのこと、シニア・コンサルタントのレベルでも直接参加させるようにしている。別の言い方をすれば、作業は若手にさせ、プレゼンテーションはパートナーがする、といったやり方とは一線を画しています。これは、若いうちから、有能な経営者との面談の機会を数多く得ることができる点で、個人にとってはメリットと言えます)。
  3. 国ごとに作業を分担して、それぞれのレポートを足し合わせ、これを日本語にしてクライアントに渡す、というのではなく、はじめから、クロスボーダーでプロジェクトチームを組み、相互に密接なコミュニケーションを取りつつ、所期の目的を達するという共通の目的意識をもって一丸となって仕事をしています。
  4. 「グローバル」という言葉は日常語になりましたが、日本においてはヨーロッパに関しての知見が欠落しています。日本企業にとって重要な、欧州市場における事業展開という課題についても、また、有力な欧州企業とのパートナーシップといったスキームについても、ヨーロッパで設立され、グローバル・リーチを持つCVAはその蓄積されたプロジェクト実績と、主要ステークホルダーとの幅広いネットワークなどを介して、ヨーロッパの知見を提供することができます。
  5. 定性的なアセスメントの手法と、定量的な解析手法とを有機的に組み合わせて複層的な経営課題に対するソリューションを提供し、また、全く新しいビジネスモデルの設計から実行までの支援をしています。

渡邊

本日は大変、ありがとうございました。CVAのことだけではなく、グローバルに通じるプロフェショナル・コンサルタントの定義についてお話を伺い、私自身、大変参考になりました。

アクシアム渡邊、インタビュー後の所感

これまでグローバルビジネスの前線で数多くの修羅場をくぐって蓄積してきた「実践的な経験知」を備えた今北様のお話を、直接聞くことができる機会に恵まれました。今北氏の著著を読んだことがある同氏のファンであれば、きっと氏のお人柄やお考えをすでにご存じだと思います。素晴らしい経験と実績があっても、一切偉ぶらず、個として私に正面から対峙していただけます。日本の経営者や偉い人とは全く異なる感覚です。グローバルに評価される人というのは今北氏のような個として尊敬される人なのだと思います。CVAに勤務するということは、今北氏が今まで、社名や肩書きに一切頼らず(頼れず)、個人の力でビジネスの修羅場や成果を出し続け、人生の数多くの葛藤を克服してきた経験知を共有することができるという、非常に恵まれたキャリアの選択といえます。今北氏はその30年以上にも渡る経験知を全て惜しげもなく伝えようとされています。関心を持っていただけた方は、ぜひ一度、今北氏とお話をされることをお勧めします。インタビューを通じて私の心に残った今北氏のメッセージを、最後にご紹介します。

今北氏からのメッセージ:「私の実戦的な経験知を、知的好奇心が強く、また自らの成長に対して高いモチベーションを持っている若い世代の人たちに、いろいろなコンサルティング・プロジェクトを介して、できるだけ伝達しシェアしたいと考えています。」

※当記事でご紹介している内容は、ご登場頂きました方の所属・役職を含め、掲載当時のものです。

Profile

今北 純一 氏

マネージング・ディレクター

略歴
1968 年 東京大学工学部応用物理学科卒業
1970 年 東京大学大学院化学工学科修士課程修了
1970-74 年 旭硝子中央研究所研究員
1970-71 年 スカラーシップを得て、米国ニューヨーク州立大学 応用数学科留学
1974-77 年 英オックスフォード大学招聘教官
1977-81 年 スイス バッテル記念研究所研究員
1981-85 年 仏ルノー公団未来商品開発室長
1985-99 年 多国籍企業エア・リキード・グループ85-86 年 パリ本社
86-88 年 米国法人エレクトロニクス事業本部ジェネラルマネージャー
88-92 年 エア・リキード・パシフィック(株)代表取締役
92-99 年 パリ本社シニア・エグゼクティブ
1999 年-現在 経営戦略に特化した欧州系コンサルティング会社CVAパートナー兼日本関連プロジェクト統括マネージングディレクター

著書(一部)
『孤高の挑戦者たち』 (日本経済新聞社/1983 年)
『国際ビジネスの作法』 (プレジデント社/1995 年)
『交渉力をつける』 (日本経済新聞社/1997 年)

『能力主義はこわくない』 (日本経済新聞社/1999 年)
『西洋の着想 東洋の着想』 (文春新書/1999 年)
『ミッション』 (新潮社/2002 年)
『仕事で成長したい5%の日本人へ』 (新潮新書/2010 年)
『自分力を高める』 (岩波ジュニア新書/2011 年)
また、グローバルビジネスの実践という見地から、日経ビジネスオンラインに記事を連載(2010-2011 年)

受勲
1995 年 フランス政府より「国家功績勲章」を受章