転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第9回
2006.12.26

30歳で初めての転職。業界をチェンジできますか?

30歳で、初めての転職を考えている者です。私の年齢で初めて転職をする際の注意点などありますか?

また、今まで8年間いたメーカーの営業部門ではそれなりに実績もあるのですが、今までとは違う業界に挑戦したいと考えています。どうすれば業界、経験の壁を越えて転職することができるでしょうか?アドバイスをお願いします。

Answer

私のキャリアコンサルタントとしての経験から申し上げると、初めての転職の場合、28歳までなら業界・職種を変っても成功の可能性は高いと思います。それ以上の年齢(28~32歳程度)の方の場合は、業界・職種のどちらか片方を変えるなら、まだ成功の可能性は高いといえます。しかし、それ以降になると、しっかりと「実績」を作る時期にさしかかりますので、業界・職種を定めた上でキャリアを作られる方がよいでしょう。

33~37歳あたりになると、日系などの大企業内ではまだまだ若手といわれる一方で、ベンチャー企業では既にマネジメントを手がける方も現れはじめる年齢層になります。投資銀行やコンサルタント業界では、一人前のプロフェショナルとして独自の判断・助言ができる知識や見識が求められはじめます。

したがって、ご希望のように業界を変えて転職されるにせよ、30歳という現在の年齢のフェーズを意識して「どの業界を選ぶのか」「採用側の需要(求めているスキル・経験)とは何か」「業界の構造」などをきちんと押さえておくことが成功の秘訣になります。一般論で語るのは極めて危険といえます。

そして、ぜひご自身の「スキルセット」「コアコンピテンス」「能力」「意思要件」を一度きちんとチェックなさってください。つまり、過去の学歴や職業経歴から、「誰に何をどのように出来るか」というご自身の能力を見つけ出し、同時に「将来何をしたいか」を設定して、既に十分備えているところと不足しているところを判定していただきたいのです。

ただ、転職する先の求める要件が「スキル」よりも「意欲」である場合もありますし、当然「意欲」よりも「スキル」重視の場合もあります。またその会社の採用決定者の価値観によって変化することもありますので、募集用件を詳しく聞くとか、私のようなキャリアコンサルタントを利用するなどして、理解を深めておかれることもお勧めします。

長い職業人生、このあと約30年もあるわけですから、壁を越えること自体が目的ではなく、壁を越えた後にどこに向かって歩いていくのかをしっかり見据えておくことが重要です。

目の前の壁だけを見ている人は、壁のこちら側しか見えていません。壁の本当の高さやそれを越えた所の、さらにその先にどのような喜びと苦しみがあるのか…知っている人(知ろう、見ようと努める人)なら、壁を簡単に越えられます。転職に際しては、長期視点をぜひ持ってください。

壁の向こう側を見ないで「とりあえず飛んでしまった」というのでは、壁を越えられずに墜落するか、越えたはいいが向こうの穴に落ちてしまうことになります。あるいは壁を越えて転職したいと考えていたものの、いざとなると行動に移せない、オファーをもらっても足が竦んで結局転職できないことになります。(決して安易に転職を勧めているのではなく、このようにチャンスを逃す方が意外に多いのです。)

キャリアコンサルタントというのは、壁の向こう側がどうなっているのかを御案内する仕事だと考えています。穴が多いのか、茨の道か、じつは海になっているので水着を用意したほうがいいのか、など。以上のようなご自身の棚卸し、情報収集、業界研究がお一人では難しいなら、キャリアコンサルタントをナビゲーターとして上手くご活用いただくのもひとつだと思います。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)