転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第16回
2007.04.19

戦略転換で外資の日本支社長から失職。つぎなるキャリアの道は?

ある外資系ソフトウェア会社の日本支社長を務めてきましたが、昨年、本社サイドに戦略転換があり、職を失いました。その後一年間、いくつかの外資系エクゼクティブ・サーチに次のポジションを求めて相談をしましたが、ハイテク産業系のマネジメント職は、なかなか案件そのものがないと言われてしまいました。

本当に前職と同等の求人はないのでしょうか?また、業界にこだわらない場合、私の今までの経歴を活かせる道は何か他にあるでしょうか?

Answer

答えは簡単で、案件はあります。そして、それ以外にも今までのご経歴を活かせる道はあります。

ただ、「案件があります」というのは本質的な問題解決になっておらず、「どのようにアプローチをすれば、それが見つかるのか」という、労働市場におけるマーケティング的発想=戦略的キャリアデザインが必要になります。

外資系企業の日本支社長だった方が一年間就職活動をされながら、次の機会(ポジション)を得られないという事態から考えて、今までとは違う方策を考えなければ当然よい結果は出てきません。ハイテク産業の社長を務められていたということですが、年収は成果報酬も含めて2500万円程度だったのではないかと推察します。その年収についてもある程度柔軟に対応され、その上でポジションが決まらなかったと仮定して、いくつか方策をお答えします。

1)“ハイテク外資の日本支社長”というタイトルだけに捕らわれない

小規模な外資系企業の日本支社立ち上げなど、内容は支社長と変わらない業務ながら、タイトルは「セールスマネージャー」というポジションもあります。事務所もなく、日本法人格もないところからのスタートになります。しかし、例えばこのセールスマネージャーとして参加し、5年間で150名の会社に育てればご相談者のキャリアはどう展開するでしょうか?

まさに日本の代表として創業者のように采配をふるうことができ、名実ともに日本支社長になることができるでしょう。実際に、このようなキャリアの道を実現された方がいます。タイトル、年収が既に用意された社長職を探しているかぎり、見つけられるチャンスは狭まるでしょう。

2)意外と有効な、ネット活用

若い方と異なり、一定の地位にある年配者は、古典的なサーチのみを就職の有効な手段としてイメージしがちです。これは正解でもあり、不正解の面もあります。例えば、在職中には不可能ですが、ご相談者の場合は既にフリーなのですから、インターネットを活用してご自分から企業にアプローチすることもできます。

以前、45歳のある方が、アメリカのアーリーステージのハイテクベンチャー企業に「日本に参入するなら、資本政策の立案と資金調達などの資金面、顧客チャンネル獲得まで広くコンサルティングいたします。その契約期間を一年あるいは二年とし、日本支社におけるマネジメント人材の採用も担当いたします」という趣旨のメールを出しました。約40社に向けて同様のメールを送ったところ、そのうちの10社が返信してきたのです。

そもそもマネジメントには一定の任期があるわけで、このようなコンサルタントの仕事もその後のリスクは同じです。このようなアプローチ方法があることも是非知っておいてください。

3)「ハイテクにこだわらず」「外資にこだわらず」「過去にこだわらず」

ご相談者の年齢がわからないので何ともいえませんが、経営能力をお持ちであればその能力を他業界でも活かせるはずです。マネジメント力、セールス力、マーケティング力、業界知識などをアピールして、日本のベンチャー企業に転職することもできます。

40代後半になって初めて転職活動をし、日系大手電機メーカーのITソリューション・セールスマネージャーに、単年度契約2000万円で転身した方もいます。ご自分が知っているだけの過去のパターンにこだわらず、ご自身のコンピテンスを活かしてくれる採用側の需要をよく考えてみましょう。そして、需要のある領域にご自分で応募するとか、その領域に明るいサーチ会社を選びチャンネルを広げることなどが、新しいキャリアを見つける有効な方策になると思います。

「案件がありません」とだけ回答するキャリアコンサルタントは、プロではありません。すくなくとも「自社の持っているチャンネルでは見つけられなかった」と説明するのが合理的というものです。社会全体に案件が存在しないのではなく、単にそのサーチ会社に、その方の希望と合致する求人がないというだけなのです。

最後に、ご本人の今後のキャリアに関する『希望』が現実的な需要に合致しているかどうか、まずご自身で吟味してみる必要があるでしょう。その上でもし、ご自身に柔軟性があるにも関わらず「案件がない」「紹介先がない」紹介先が見つからない場合の「助言もない」と回答するようなキャリアコンサルタントがいるサーチ会社には、期待しないほうがいいでしょう。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)