転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第26回
2007.09.27

元ITコンサルタントでMBAホルダー…マネジメントへ至る道は?

今年37歳をむかえる男性です。大学卒業時から34歳まで、某IT系のコンサルティング会社に勤務していました。

その際、戦略策定から実行まで携われるものの、この先、事業そのものを運営する機会はない(そして自分自身の能力も身につかない)と考え、1年間、ある欧州MBAスクールへ私費留学をしました。

卒業後、外資系事業会社の日本法人に就職し、その後、運営の責任者として日本法人を任される立場になったのですが、本国・本社主導の部分が大きく、戦略決定や財務管理等には、依然としてタッチできない状況が続いています。

本社と戦いながらも現職に止まり、運営能力を磨くことを考えるべきでしょうか? それとも、意思決定やPL責任を負えるようなポジションへ早々に転職すべきでしょうか?

Answer

まず、今回のご質問の趣旨は、日本の産業社会を考える上でも複数の課題が含まれた内容であることから、若干、個人的な主観も交えた回答になることをお許しください。

IT系戦略コンサルタントという職種は1990年代から登場し、大学を卒業して「ITコンサルタント」になる方がその頃から急激に増加しました。(それ以前の80年代は、いわゆるSE職のみでした。)そのような新しいキャリアを歩んでこられた方が、プロジェクトマネジメントや部門のマネジメントではなく、企業の経営を目指すときに直面される問題が、今回のご質問に多分に含まれています。

ITをコアとしている方が、セールス・マーケティング・財務会計などをコアとしてきた方のように、現実として大手企業の経営を担っているでしょうか? またIT担当の役員になっているでしょうか? CFOやCOO、CEOの求人は多数あっても、残念ながらまだCIOの求人・需要は少ないといわざるをえません。

この点は、日本の産業社会の課題かもしれません。もっと社会全般がIT戦略を経営上の課題として重視するようになれば、ITコンサルタント経験者が経営のボードメンバーとして活躍することも起こってくるでしょう。

しかしながら上記のような状況から、現在では、どうしても株主がITを経営のコアとして考える=ITベンチャー企業、あるいはITコンサルタント会社の2種類だけが、現実に存在するマネジメントの需要、チャンスということができます。

外資系企業でも日系企業でも『IT業界の経営』という道が、目指すべきキャリア/実現の可能性の高いキャリアプランと申せます。

もうひとつのご質問である、「現職にとどまり、本社と戦いながら運営能力やリーダーシップを磨くべきか、PL責任や意思決定を担うポジションにすぐに転職すべきか」というご質問ですが、外資系企業でも大きな意思決定は難しくとも、基本的にはPL責任をもつことができるはずです。現在の職責・お立場がこのご質問内容のみでは不明ですが、PL責任のない運営責任者というのが不可解に思います。そのあたりの職責とタイトルがミスマッチである点に、問題が生じている可能性を感じます。

まずは、現職でPL責任をきちんと負って日本法人の本来的な運営責任者の立場となられることをお勧めします。運営責任者といいつつも、PL責任を負っていないとなると、さらに上の意志決定をするポジションの候補者とはなり得ません。マネジメントクラスの人材マーケットでは、運営責任者という呼称にはあまり意味がないことだけは認識しておいてください。

厳しいようですが、本国・本社主導の部分が大きく戦略決定や財務管理等に関われないというよりは、経営陣の下で「本部長といわれつつ課長の仕事をさせられている」というのが実態なのではないでしょうか。本当に企業経営を目指すのであれば、そのためのキャリアには、もうひとつステップを登ることが必要になってきます。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)