転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第28回
2007.10.25

国際機関・NPOなどで働きたい。転職を叶える近道とは?

現在、ある外資系事業会社の日本法人に勤める27歳です。小学生時代をアメリカで過ごした、いわゆる帰国子女であり、大学院もアメリカで卒業しました。

いったん今の会社に就職したものの、海外体験を重ねるうちに抱いていた「より国際社会の中で社会的意義のある仕事をしたい」との思いを捨て切れずにいます。

今から国際機関、NPOなどへの転職が叶う可能性はあるでしょうか? また、可能性がある場合には、その手段や方法、求められる能力や人材像をお教えいただければ幸いです。

Answer

社会貢献を果たしたいというお考えを持つことは、非常に素晴らしいことです。まず、第一ステップとして「誰のためにしたいのか」ということを整理しましょう。

「国際社会の中で、社会的意義のある仕事をしたい」とおしゃっていますが、その社会的意義の中身、いったい国際社会の”誰に”貢献したいのかが明確になれば、具体的な実行プランを立てていくことができます。

漠然と国際社会のためとおしゃっていたのでは、時間がどんどん過ぎるばかりです。

第二ステップでは、貢献したい対象の分野を手がけているNGO/NPO等が、どんな人材を求めているかを調べましょう。いまやインターネットで世界中の求人が検索できる時代です。灯台下暗しで、各機関のホームページ等で求人情報も開示されていますので、情報収集をしましょう。

World Bank で働きたいなら「World Bank Career」という単語で検索をすれば、その求人情報がヒットします。IFCの求人も出てきます。アメリカで幼少期を過ごされたということで英語力は十分にお持ちでしょうから、益々インターネットを利用して世界中の情報を収集されることをお勧めします。

その際、各団体によって求める要件がかなり異なりますので、しっかり内容を読み込んでください。バイリンガルだとすれば語学の問題はクリアですから、職歴や資格・学位など不足している要件を補うように努力し、あとはタイミングよくポジションが空席になることを待つばかりです。

アメリカであれば、NPO等専門のサーチファーム会社もあるほどですが、日本ではまだまだ採用コストをかけて求人をしている機関が少なく、残念ながらアクシアムでも約750社の顧客企業の中で、たった3団体しか求人を受託していません。国際機関からの求人を広く受託しているわけではありませんので、どのような人材が求められているのか厳密にはお答えできる立場にありませんが、その3団体からの要請をうけて強く感じるのは以下の点です。

日本でも、社会貢献をしたいという気持ちを持つ方が増えてきました。それ自体はとても良いことですが、この流れは若者とシニアの方ばかりに目立つように感じています。つまり、スキルを持ったミドル層の人材は極めて少数ということです。

求人側のNGO/NPO等は、じつはスキルとして非常に高いもの持ち、即戦力としてバリバリ働ける方を往々にして求めています。しかし応募者は、「20代で経験・スキル・知識が不十分」「60歳でリタイヤし、その後の人生の過ごし方として」あるいは「志とやる気だけはある」「とにかく海外勤務がしたい」という方が多数のようです。

NGO/NPO等の現場では、財務・会計・経営・マーケティング・事業プロデュース・プロジェクトマネジメントなどの領域で、しっかり実務経験や実績のある方が求められていると思います。民間企業であれば高額の年収を貰えるスキルを備えつつ、たとえ年収が半減しても”社会貢献がしたい”という高い志を持った人材層の登場が望まれています。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)