転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第157回
2016.03.01

今後のキャリアへの漠然とした不安…払拭するには何をすべき?

外資系Eコマースの会社に勤める31歳です。前職では日系のインターネットビジネス企業に3年間勤務。現在の会社に転職して6年目になるのですが、最近、初めて管理職として3名の部下を持ちました。現在は管理者としての心得を学びながら、マーケティングマネージャーとしての役割を果たすべく努力しています。年収は800万円程度いただいており、会社にも仕事にもそれなりに満足しています。

将来、特に経営を目指しているわけではありませんが、プロフェッショナルなビジネスリーダーといわれるようにはなりたいと思っていますし、また、その程度には十分なれると自負しています。しかし、それ以上の具体的な目標等はなく、漠然とですが不安を感じています。この不安の原因は自分でもよくわかりません。さらに大きな組織の長になることへの不安、あるいは経済不況によってリストラされる可能性もあるとの不安があるのかもしれません。このような思いを取り払うには、30代のいま、何を考えて何をしておくべきでしょうか?

Answer

ご相談内容は日系でも外資系でも、業界や職種にかかわらず、管理職になった方々が通過する共通の悩みですね。ある調査によると、会社や仕事に満足している日本のビジネスパーソンは3割強だとか。逆にいえば、会社か仕事のどちらかに不満を感じている人が6割以上おり、彼らはその不満や不遇を解消する手段として転職を選ぶことも多いわけです。

ご相談者のように現状に不満がない場合には、ことさら転職をする必要はないのですが、将来のキャリアについて考えることは無駄ではありません。そのことこそ、将来のキャリア・リスクを低減することにつながるからです。

不確実な未来について論理的に考え、そこに発生するリスクについて検討し、リスクをマネージしようとする能力は、ビジネスリーダーに必須のものです。31歳のいま、ご自身のキャリアのリスクについて問題意識を持たれたことは、決して悪いことではなく、企業経営を担う経営者の資質の片鱗ともとれます。

不安を感じること自体は極めて良質なことです。会社や仕事などの「現状」にある程度満足されているとすれば、その「将来」について不安の原因があるのでしょう。簡単に図解するとこうです。


過去から現在にかけてのキャリア → 満足
現在からしばらく先のキャリア → 満足できそう
40歳位のキャリア → リーダーになるイメージはできる
40代以降のキャリア → イメージしていなかった、不安

残念ながら、その不安を完全に取り除くことはできません。ですが、不安の対象をなくす努力をすることで、それを和らげることはできます。具体的な回答としては、3つあります。

(1)40歳以降のキャリアプランとキャリアゴールを設定してみる。その上で、現在の会社と仕事の延長線上にそのゴールが存在するのか、そこに到達し実現できるかを考える。
“STRETCH”という言葉があるように、ご自分のイメージよりも少し上の目標(ゴール)を立てるほうがベターです。「経営を目指す」というのもひとつの“STRETCH”になります。現職でも“STRETCH”を意識することで、間違いなく将来のキャリアにはプラスになります。いま何をすべきかは、将来のゴールを明確にしないと定めることはできません。不安をなくすには、ごく小さな目標でもいいのです。例えば、今の仕事に役立つ資格を取るため学校に通うなど。何かに集中できれば、不安はおのずと減っていきます。

(2)過去から現在までのキャリアを分解し、ご自身の強み知る。それを生かせる選択肢として社外の可能性を考えてみる。ご自分が社外で価値があるのか確認してみる。
これまでご自分が見てこなかったキャリアの可能性は、世の中に多数存在します。意外なキャリア機会が、人生の新たな展開を生み出すこともあります。一度社外の可能性について思いを巡らせてみるとよいでしょう。他の環境や機会と比較して現職がベストと確認でき、またご自身の市場価値も確認できれば、それは安心の材料になります。

(3)過去と現在、そして未来にあえて脈絡をつけず、まったく違う世界に飛び込むことを想像してみる。
“OUT REACH”という言葉があります。2の回答に近い意味合いもありますが、異なる点は、今までとはまったく違う世界に飛び込む手法であること。理由は見つからないが、その人だけが面白いと思えるチャレンジをしてみることです。高学歴者がいきなり漫才師になる、サラリーマンが政治家になる、世界一周をする、NPOでインターンを行う、農業や水産業に従事する、など。起業するというのも含まれますね。一見リスクは増加し不安が増すように思えますが、行動することで拓く未来もあります。一般的に30歳前後までなら、無謀なチャレンジに1年を費やしそれが失敗したとしても、キャリア上の致命的なマイナスにはなりません。まったく違う世界に飛び込む自分を想像してみることで、視野が広がり、案外と不安が和らぐかもしれません。

いかがですか。繰り返しになりますが、将来のキャリアについて考えることは、その行為自体が将来のキャリア・リスクを低減することになります。ぜひ真剣にご自身のキャリアと向き合い、主体的にキャリアを構築していただければ幸いです。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)