転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第164回
2016.10.06

名刺やレジュメ上のタイトルが転職の邪魔をする!?

大学卒業後、ある日系の製造業に勤務する者です。会社は中堅企業(売上規模900億円程度)で未上場企業ながら、グローバルに仕事ができそうな環境で、二代目のオーナー経営者はMBAを取得しており、合理的な経営を標ぼうしていたため入社を決意。入社後は国内外でセールス・マーケティングを担当し、これまで15年間、しっかりとスキルを磨いてきました。20代から海外市場開拓のチャンスを与えてもらい、30代に入るとシンガポールの現地支社長として、製造と販売を統括することもできました。

この経験を活かし、今後はさらに大きな規模の経営や、自分の気付かなかった新しい挑戦などをしたいと考えています。ところが、日系の同規模の企業や大手企業に数社応募したところ、書類選考の段階で「海外支社長だった方を受け入れるポジションが見当たらない」という意味の回答がきてしまいました。私自身はタイトル、年収などにこだわっていません。それよりも自分がさらに成長したいと思っているのですが、転職の際に「海外支社長」といったタイトルは邪魔になるのでしょうか?

Answer

「転職にタイトルは邪魔になる」などという考えは、どうか持たないでください。

海外支社長というタイトルが問題なのではなく、応募先企業にご相談者のようなスキルを活かせるポジションがない、あるいは活かせる会社ではないと正直に言っている、と考えてみてください。

これまで、キャリアに対する素晴らしい考え方を持って20代・30代を過ごしてこられ、きっと強みも実績もある方だとお察しします。セールスやマーケティング、事業開発や市場開拓、さらに生産管理までカバーしてこられたのであれば、その強みや実績を活かしていただけるキャリア機会はたくさんあります。さらにリーダーとしての資質、異文化間のビジネスコミュニケーションスキルなど、次のキャリアにつながる要素・接点を多数お持ちだと思います。

今回のような回答が数社からあったとしても、たまたま運悪く当たってしまったということでしょう。あえて辛口のご助言をさせていただければ、数社応募されたぐらいで、キャリア市場全体のご自身への評価とみなさないことです。きっと30社以上に応募されたなら、様々な回答が得られたはず。仕事をしながらの転職活動で、そんなに多数の企業にコンタクトする時間がないのなら、まずはキャリアコンサルタントに相談することです。よりあなたが活躍できる可能性の高いところを挙げてもらい、効率的・効果的に、もっと多数の企業を紹介してもらえるでしょう。ご質問内容から、ご相談者は30代の方とお見受けしますが、30代であれば20社以上は応募先があるはず。そして複数社とは必ず面談ができるでしょう。

ちなみに、今回のご応募先というは、すべて日系企業ではないですか? ちょっと考えてみてください。あなたに似た経歴の方が、もしあなたの会社に応募してきたら、あなたの会社は採用するでしょうか? 体裁よくお断りなさるのではないですか? もし今の会社が40代や50代でも有能な人材を社外から登用する経営方針なのであれば、逆に転職をされないで現職に残られるほうが良いかもしれません。30代後半から社内に機会がないから、転職されたいのではないですか? それが日系企業の大きな課題です。

しかしながら、社会には30代・40代の人材を外から登用したいという会社も増えてきています。日系企業の中では、ベンチャーでも中堅でも大企業でも規模は関係なく、新規事業、再生や改革、海外進出というテーマの領域です。外資系企業の場合は、日本支社にそのニーズはあり、セールス・マーケティングをコアとしたご経歴であれば、ゼネラル・マネージャー(日本支社長)、事業単位のディレクターなどの機会があります。実際、ご相談者のようなご経歴の方を、これらのポジションにご紹介したことが過去に多数あります。そのご紹介時には、名刺やレジュメのタイトルが邪魔になったということは、一度もありませんでした。

自信をもって、次のキャリアを見つけてください。少し考え方を修正するだけです。

余談ですが、過去にこんなケースがありました。2名しか在籍していない現地事務所に勤務し、タイトルだけは「現地法人社長」になっていた25歳の方がおられました。転職を試みたところ、採用側にとって「社長」というタイトルが謎めいたものになってしまい、うまく書類選考が進まず弊社にご相談にこられたのです。そこでレジュメ上は社長という表現をさけ、現地マネージャーと表記を変えたところ、急に面談へ進めるようになりました。これはタイトルが実態を表していないことが問題で、そのようなタイトルを与える会社で育ったことがマイナス評価につながる恐れもあるケースでした。今回のご相談者の場合は、そのような状況とはまったく違いますので、ぜひ前向きにチャンスを探し、素晴らしいキャリアを創っていただければと思います。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)