転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第192回
2019.02.07

転職先への入社直前に、希望と異なる部署へ配属変更。このまま入社か、辞退して活動を再開か?

ある企業から内定をいただき、オファーレターにサインしました。既に会社には退職届を提出し、現在有給消化中の身です。未知ではあるものの、やりたいと思い続けていた業務へ挑戦するラストチャンスだと思ったことが、最後の決断の理由でした。

入社を心待ちしていたところ、配属予定の部署ではなく別部署からスタートしてもらうことになった、との連絡がきてしまいました。急遽、部署の上司となる予定の部長と対面し、「組織再編があったため違う仕事からスタートしてほしい、いずれはもともと配属予定だった部署へ異動してもらう」との説明を受けました。どうもその部署の立ちあげが急務となり、少なからずその領域に経験をもつ私に白羽の矢が立ったようです。

これまでの経験から対応できる業務ではありますが、新天地で取り組みたいと思う内容ではなく、正直なところ魅力を感じません。現在35歳で家族もいますので、とりあえず入社して取り組むことも必要とは思うものの、入社目前になって突然の部署異動が起きたことや、必ず当初の部署へ異動できるという確信はなく、同社への信頼や熱意が冷めてしまいました。

仕事内容に魅力を感じないまま入社し、またすぐに転職活動を開始することになるなら、いま辞退をして一から活動を再開する方がよいのではと思うのですが、プロのご意見・アドバイスをお願いします。

Answer

念願の仕事に就けるという意欲と、未知な業務へのワクワク感に満ちた入社目前に突然梯子を外され、さぞがっかりされたことでしょう。お気持ち、お察しいたします。「今になって何故?」というお気持ちは、当然であると思います。

そして、今後の対応については、既にあなたのお気持ちは固まっているようにお見受けしますが、少し視点を変えて考えてみましょう。

■会社があなたに期待するところは、何ですか?
組織再編の背景はわかりませんが、その業務が必要になったのは事実であり、恐らく社内でその業務を遂行できる方がいないので「経験があるあなたに任せたい」「あなたなら期待に応えてくれる」と思われたのだと思います。

でもそれ以上に、中途採用で入社するあなただからこそ、期待されていることが何らかあるのかもしれません。やりたいと思えない仕事かもしれませんが、その業務を通し、会社側が『あなたに真に期待するもの』、それを一度考えてみてはいかがでしょうか。
 
■キャリアを形成する上で、大事にしている軸は何ですか?
当初と異なる業務(仕事)というのは、あなたが大事にしている軸/大事にしていることと大きくずれていますか? そして、その仕事では大事にしている軸/コトは本当に実現できませんか? 実現したいことは、その仕事では本当に達成できませんか?

「A.やりたいこと=希望する仕事」と「B.やれること=これまでの経験・スキル・能力」、「C.やってほしい=会社からの要請・期待」の関係を、図で表してみましょう。2つ、あるいは3つの重なるところがキャリアチャンス(実際に手がけられる仕事=キャリア機会)ということになります。

理想の形は、図1であるかもしれません。一方、あなたのお気持ちは図2のような状況ですね。ですがここで「A.やりたいこと」の線引きを頑なに守るのではなく、少し柔軟にしてその範囲を広げ、「やりたいことではないが、やってみる」としたら…3つの重なりは大きくなり、やがてはBとCそのものも大きくなる。つまりご自身の今後のキャリアチャンスがもっと広がりませんか?

【図1:理想の形】
【図2:現状のお気持ち】
【図3:「やりたい」を広げ、「やりたいことではないが、やってみる」と・・・】

ですからまずは、会社が求めている職務に取り組み、できるだけ早期に結果を出すことを目指してはいかがでしょうか。何かしら結果を出した後、それ以上どうしてもコミットできない、アスピレーション(軸)とずれると思われたなら、その時点で転職活動を再開されてもよいのではと考えます。(短期間で転職することになりますが、結果を出していますので、キャリアのアセットは増えているはずです。)

そのためにも上司となる部長と、あなたの役割や業務の詳細、バックアップ体制など、取り組むとしたら必要になるだろうことをイメージして、再度しっかりと話し合う機会を持つことをお薦めします。その後で結論を出しても遅くはありません。入社のタイミングまで時間があまりないのかもしれませんが、感情(やりたい/やりたくない)で決めるのではなく、この仕事を任された意味と、あなたにとっての意義を考えてみていただきたいのです。

その上で、新たな職務が「キャリアで大事にしている軸とずれている」「キャリアが潰れる」ということでしたら、一から転職活動を再開すべきと思います。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

大石 順子

株式会社アクシアム 
エグゼクティブ・コンサルタント

大石 順子

大学卒業後、日系消費財メーカーに14年間在籍。その後、マーケティング・コンサルティングファーム、人材育成コンサルティング会社にて、顧客視点のマーケティング(リサーチ&商品開発)、新規事業戦略立案や新商品開発、CS調査・課題解決に携わる。2005年、アクシアムに参画。自らの展望を叶え、現職へ「展職」を果たした。“転々とする転職ではなく展望ある転職=「展職」を”という理念のもと、約10年間、キャリアコンサルタントとしてハイエンド人材のキャリア形成をサポート。キャンディデートひとりひとりの展望を実現すべく、その思いに寄り添った丁寧かつ的確なコンサルティングを提供中。