転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第198回
2019.09.05

10年ぶりの転職活動。責任者ポジションを目指す際、「職務経歴書」でアピールすべきポイントは?

これまで、大手と言われる日系/外資企業2社でマーケティング領域(商品企画、プロモーション、デジタルマーケティングなど)でキャリアを作ってきました。ここ数年はチームリーダーとして、チームマネジメントと部下の育成も任され、それなりに実績を作っています。今後はこれまでの経験を活かし、小規模な企業(ベンチャー企業を含めて)でマーケティング責任者の立場になってチャレンジをしたく、思い切って転職活動を始めたところです。

約10年ぶりの活動となりますが、まずは書類の作成にとりかかり、自分がこれまで取り組んできたこと、その成果を時系列に記載して職務経歴書を作り込みました。それをある転職エージェントに見てもらったところ、これでいいと言われ、様々な案件を紹介してもらいました。

しかし、いざ応募する前に職務経歴書を読み返してみると、やってきたことや実績は全体的に網羅できているとは思うものの、「本当にこれでよいのか?」と何か物足りなく感じています。このまま応募しても書類選考をパスできるのか不安です。

基本的な質問で恐縮ですが、企業へよりインパクトを与える職務経歴書を作成するためのポイントについて、ご助言いただけますか?

Answer

職務経歴書は、その方の商品企画書と言われます。

ご自身のできることをアピールするため、やってきたことを時系列にすべて記載している書類をよく見かけます。A4用紙2~3枚に「やってきたこと(職務経歴)」「成果/実績」「自己PR」「得意なこと」「学歴」まで満遍なく記載されているので、全体はわかりますが、その方の“強み”や“得意なこと”の内容が薄まってしまっている場合が多いです。

さて、文面から、ご相談者は恐らく30代半ば以上の方と推察いたします。そして、これまで培ったキャリア(マーケティング領域)の次のステップとして「責任者」のポジションを目指していらっしゃるので、ご自身でも懸念されているとおり、「得意なことと実績」の記載だけでは弱いと思います。

採用する企業の視点で考えてみましょう。特に小規模の企業やベンチャー企業では、「候補者が持つスキルは即戦力となるか」、「組織運営力やリーダーシップはあるか」を重要なファクターとして、以下のような視点で書類から読み取ろうとします。

【採用企業の視点】
(1)求める領域での経験と実績がどのくらいあるか?

期間と取り組んだ深さ、結果に繋げる実務力などがチェックされます。

(2)大手企業2社での経験だが、中小企業やベンチャー企業でやれるだろうか?
ここでのチェックポイントは2つあります。1つは、組織や制度がかっちり固まっていない流動性がある状況での対応力。2つめはスピード感。特にベンチャー企業では、つねにトライアンドエラーで走りながら考え、修正していくスピード感が求められます。それに対応できるかが見極められます。このあたりは面接を通して確認されることが多いのですが、これまでの業務の中でスピード感を持って対応してきたご経験があれば、それを書類にも盛り込むとベターです。

(3)責任者としての期間と、チームリード力
「チームメンバーをどのようにリードし、より良いチーム作りをしてきたのか?」など、リーダーとしての経験・実績、そしてチームとして目標を達成した経験とその成果も重視されます。

いかがでしょうか。また、記載されている内容そのものだけではなく、もちろん全体の構成(わかりやすさ、読みやすさ)、語彙力、表現力からも、ビジネスパーソンとしての能力が判断されます。

例えば、自己PRの書き方を例にとると、採用側が求める要件によりハイライトの当て方が変わり、インパクトも異なってきます。

(A)スピードと結果を求められる外資系企業で、チームリーダーとして、経営メンバーをサポートし、多岐に渡るマーケティング業務を経験してきた。チームの効率化を改善、他部署との連携を仕組化し、情報の発信の効率を向上した。その結果、社内におけるマーケティングチームの価値の向上にもつながった。

(B) 日系/外資系大企業における多岐に渡るマーケティング業務で、業務遂行力、チーム運営力と自身のタフネスさを身に着けた。日系企業ではチームワークと理論の応用、外資系企業ではスピード感、柔軟性と自身のメンタル面を強化でき、どのような環境下でもやれる自信がある。

採用企業が優先しているのが、仮に「責任者としてチームリードし、より良いマーケティングチームを創り上げる」ということであれば、外資系企業でのリーダー経験にハイライトを当てた(A)がよりインパクトを与えることになります。仮に「メンタルが強いリーダー」をより重視する場合では、(B)がよりアピールできる記述といえます。

上記のように、特に直近3~5年間の取り組みと結果について、プロセスと成果(実績)を丁寧に振り返り、応募しようとしている企業・ポジション・要件にフィットする、もしくは親和性がある内容にフォーカスし、経歴の中でメリハリをつけて作成してみてください。

また「責任者」ポジションであれば、部下なしでスタートしてもいずれは部下を持ち、チームとして創り上げていくことになります。チームビルディング、マネジメント力は必須要件になりますので、スキル・能力と合わせてリーダーとしての経験と「どのように力を発揮したのか」はフォーカスしてまとめてみてください。

できればより信頼のおけるエージェントとディスカッションをし、作成した職務経歴書をレビューされるといいですね。

ちなみに、大手企業から小規模な組織やベンチャー企業へ転職するには、もちろん求人要件と経歴との合致、カルチャーフィットは大事です。しかし実際に転職を実現させるには、年収も大きな要素になります。タイトルは「責任者」でも年収が現職より下がることも想定されます。年収を下げてでもやりたいと思えるかも含め、しっかり考えて転職活動を進めてください。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

大石 順子

株式会社アクシアム 
エグゼクティブ・コンサルタント

大石 順子

大学卒業後、日系消費財メーカーに14年間在籍。その後、マーケティング・コンサルティングファーム、人材育成コンサルティング会社にて、顧客視点のマーケティング(リサーチ&商品開発)、新規事業戦略立案や新商品開発、CS調査・課題解決に携わる。2005年、アクシアムに参画。自らの展望を叶え、現職へ「展職」を果たした。“転々とする転職ではなく展望ある転職=「展職」を”という理念のもと、約10年間、キャリアコンサルタントとしてハイエンド人材のキャリア形成をサポート。キャンディデートひとりひとりの展望を実現すべく、その思いに寄り添った丁寧かつ的確なコンサルティングを提供中。