転職コラムキャリアに効く一冊

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2011年4月

戦略的国家・企業・個人を求めて パワー・トゥ・ザ・ピープル
米倉 誠一郎(著)

本書が発行されたのは1994年3月。それは私がアクシアムを創業し間もない頃であった。金融の規制緩和が行われるまだ5年も前のことである。当時は日本企業や社会の閉塞感を否応なく感じていた。

そんな中、書店でめぐり合った本書は、当時漠然と考えていたことが見事に言語化されていて、大げさながら人生の中でもっとも感動した書となった。後書きには「経営史研究の合間に書いた」とあるが、とてもそうは思えない。米倉先生が「何よりも勇気が出る書を書きたかった。」というとおり、私はこの書からまさに元気と勇気を得ることができた。

あれから17年。振り返ってみると、残念ながら今でもさしたるイノベーションは起こっていないことがわかる。米倉先生の論旨はまったく古臭くなっていないどころか、今も日本企業や社会、個人のキャリアのいずれにおいてもパラダイムは変わっていないという現実を突きつけてくる。

20年が失われたままになっている。

「過去のビジネス・ヒストリーが明らかにしてきたことは、歴史的な方向性を明確にしたビジョンを揚げ、人間が生み出すイノベーションを継続させた発想の展開、すなわちパラダイム・チェンジだけが、いついかなる時でも起業社会の健全性を保持してきた事実である。」

冒頭で述べられたこの一文だけでも、この書の先駆性が理解できる。米倉先生のその後の書の多くに通じる精神性が色濃くでている書だと思う。

ジョンレノンの名曲、パワー・トゥ・ザ・ピープルの調べが頭の中で聞こえてくる。今、私はこの書を再読し、社会のプロセスイノベーションに挑戦するような構築的革新を目指す起業家でありたいと改めて思う。

戦略的国家・企業・個人を求めて パワー・トゥ・ザ・ピープル 出版社:創元社
著者:米倉 誠一郎(著)