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2018年1月

STARTUP(スタートアップ) 起業家のリアル
村山 恵一(著)

本書は、今や各業界で注目の起業家5人の起業に至るまでの葛藤や苦労、迷いなどを赤裸々に、そしてストーリー建てて紹介しています。副題に<「普通」の私が挑戦した理由>とありますが、凡人の私から見れば十分エッジが効いたモノをもっている方々です。その「普通の人」が起業に至るまで、どのように考え、悩み、不安と闘いながら乗り越えてきたのか。なるほどと感心しながら、時には驚きなら読み進め、五者五様のリアルに引き込まれました。

“こと”を成すときの節目の判断が正しいかは、誰も確約できないものです。その不確定なものをどのように受け止め判断してきたのか。それぞれ全く違う5人のリアルな言葉から様々な工夫を紹介します。

5人に共通しているのは「社会にインパクトを与えたい=イノベーションを起こしたい」、そして「グローバルで勝負したい」という想いが起点にあることです。その想いを持って突き進み、結果的には業界はIoT、フィンテック、バイオ、働き方、ロボットと異なりますが、社会にイノベーションを生み出しました。

スポットコンサルサービスを展開するビザスク(端羽氏)は約30カ国でマッチング実績があり、約4万5千人の登録アドバイザーのうち2000人が海外の人材です。資産管理・家計管理ツールを提供するマネーフォワード(辻氏)は、国内でサービスを提供していますが、「いずれはグローバルに通用する日本を代表する会社を作りたい」と世界を見据えています。革新的でユニークな家電を開発・販売するCerevo(岩佐氏)は、既に世界中でマニアなユーザーを獲得しています。

量子力学を駆使した革新的DNAシークエンサーを開発中のクオンタムバイオシステムズ(本蔵氏)は、米国と日本に開発拠点を置き、本蔵氏自らも米国に拠点を移して両国を行き来しています。「家庭にロボットが普及しないとマーケットは広がらない」という信念のもと、日常生活に溶け込むロボットを開発するユカイ工学(青木氏)は、かつてのロボット大国・日本の地位をこれからも維持するため「シリコンバレーがロボットの分野でも試行錯誤している。沢山の資金も注ぎ込まれている。でもシリコンバレーには負けられない」と奮闘しています。

起業するかにかかわらず、「社会にインパクトを与えたい」と思っていても「どうやって?」「どんな仕事で?」「どの業界で?」と悩む方は多いのではないでしょうか。本書で紹介している五者五様の在り方は、そのような悩みや躊躇に何かしら気づきを与えてくれるはずです。

最初から起業を考えていた人(岩佐氏、青木氏)もいれば、そうでない人(辻氏、本蔵氏、端羽氏)もいらっしゃいます。特に端羽氏はプロ志向が強いですが、当初は何のプロを目指すか見えておらず、いわば高速で失敗しながらそれをみつけました。

今年こそは何か新しいことを自分の中に生み出したい、行動したいと思っている方の〝STARTUP〟の起爆剤になることを願って、年始にこの一冊をお薦めしたいと思います。以下に、各章で心に残ったエピソード、フレーズ等を列記しておきます。

「インターネット×ハードウェア(IoT)」で「グローバルニッチを狙う」
株式会社Cerevo 代表取締役 岩佐琢磨 氏

中学から大学時代までパソコンゲームとインターネットにひたすらはまっていた。インターネットの技術で世の中を面白くしたいという思いで「インターネット×家電(IoT)が発展途上(当時)」 のパナソニックに入社し並行して始めたブログ(インターネットや家電に関する話題を独自の視点で切っていく)がきっかけで起業へ。「IoTを使い、ゼロからイチにするような、ネット家電で面白いことをやりたい。世の中を便利にしたい」と起業するも、スタートはちょっと変わっていた。

1.プロトタイプを持ち、それをローンチする段階の会社の社長をやって欲しいと声がかかった岩佐氏。「最短で成し遂げるにはどうするか。自分は経営学を学んだこともないしも資金調達も経験がない。だが、既に強力なチームの土台ができている同社ならいけるのでは」と思い、引き受け起業した。

2.しかし、リーマンショックでVCはハードウェア系スタートアップへの投資を一気に引いた。ようやく資金調達に目処ができたのは創業から1年が過ぎてから。しかし「あきらめたら負け」と自ら捻出した出資金でしのいだ。

3.パナソニックを辞め、自ら出資もしての起業家生活には、当然家族の反対も想定された。が、以前から「パナソニックを辞めること、起業する可能性があること、海外に住む可能性があること」の3つを家族には話していた。そうした事前告知で、反対されるリスクを回避した。

4.デジカメ(セレボカム)にライブ配信機能を搭載したところ、マニアックなニーズをつかみ成功。ニッチでも売れる手ごたえをつかむ。「ニッチも突き詰めれば面白い。ニッチ製品を世界のいろんな国に売ろう。多品種少量生産のグローバルニッチを展開しよう」が会社の軸に。製品の品質には徹底的にこだわり、マニアと言われる顧客層の期待を超えるものを提供する、という強いこだわりの姿勢を貫いている。

「インターネット×金融」で日常的なお金の悩みを解決するサービスを提供
株式会社マネーフォワード 代表取締役社長 CEO 辻庸介 氏

1.新卒で全く想定外の「経理」に配属され、地味な仕事に憤りを感じながらも3年間、手を抜かずやり切ったことが今の血肉になっている。「後々にならないと気づかないが、いつどこで点と点がつながり自分を助けてくれるかわからない」。

2.起業の際に重視したのは仲間集め。「こいつがミスしたのなら仕方がないと思える信頼できる人材を集めた。こういう優秀なメンバーが揃うならなんとかなるかもしれない、お互い力量がわかっていたからベースの信頼関係ができていた」。「ITを駆使すれば利用者が便利と思ってくれるサービスがきっと作れる。そういう想いがあってもこうすれば成功するという“正解”はない。自分たちが目指す方向が正しいのか悩みながら製品開発に挑む日々。きつかった。継続して使ってもらえるサービスを作らなければ明日はない。そういう恐怖感があった」。その中でも先の信頼関係ができていたため、チームの人間関係はうまくいった。みな役割が明確で、意見が分かれて迷うときは辻氏が決断するというルールも作っていたことで乗り切れた。

3.2012年に自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」を市場に導入。新サービスや会社の認知を上げるため、起業に関するイベントやコンテンストに片端から出て取材にも積極的に応じた。(認知を高めることで)次第に利用者が増え、2013年3月に資金調達にこぎつけた。

4.その後は「家計簿サービスという専門性」がカギになり2017年9月東証マザーズ上場を果たす。
「テクノロジーとUX顧客体験にこだわり、誰もがおカネの心配をしなくて済む世界を作りたい」。

「わくわくする生き方をしたい」ゲノムの研究者から日本発DNAシークエンサーを作る
クオンタムバイオシステムズ株式会社 代表取締役社長 兼 最高経営責任者(CEO) 本蔵俊彦 氏

1.バイオとビジネスをつなぐことに興味を持ち証券会社へ。その後マッキンンゼーにバイオベンチャーの経営を学ぶ目的で入社、社費でMBAを取得。さらにINCJ(産業革新機構)でバイオベンチャーの投資判断(DD)と企業価値向上の支援を実施。次第に自分でシークエンサー事業を立ち上げたいと思うようになる。ゲノム研究者として異色の経歴を持つが、一貫してバイオ分野に軸足を置いてきた。

2.アメフト経験で培った戦略思考と目標に向けて行動する力。「高校、大学とアメリカンフットボールを続けてきました。アメフトは戦略的なスポーツですが、戦略だけでは勝てない。用意周到に戦略を立て最後は目の前の相手に一対一で勝たなければならない。単に頭で考えるだけではなく最後は体力勝負へ持ち込み、そこでも勝つ」。勝つことへのこだわりがある。たとえ困難な目標でもやり方を工夫しながら目標に向かって走っていくこと以外に充実感を持てないと言い切る。

3.INCJ在籍中にバイオ関連の展示会でシークエンサー技術と出会い、R&D研究者の谷口氏、川合氏と共に創業。「ぐずぐずしていたら陳腐化してしまう。この道を一気に駆け抜けねば道が塞がれてしまう、やるなら今だ」。判断力と行動力がここでも活きている。

4.苦戦したのは人集めだった。「作ろうとしているシークエンサーには半導体技術が重要だが、大企業を辞めて飛び込んでくれる方はなかなかいなかった」。一流の人材を求めて渡ったのがシリコンバレー。相手に面白いと思ってもらわないと良い人材は集まらない。一生懸命ビジョンを語り、徐々に仲間が集まり始めた。

5.「自分にスタートアップのリーダーが務まるのか。グローバルな競争の世界で通用するのかすごく不安だった。成功することではなく成長することに自信をもてれば一歩踏み出せる。周到に準備して誰よりも深く考え強い意欲を持つこと。問題が起きたらチームをまとめ、時には周囲のサポートを受けながら解決する。そのためにはリーダーシップが求められる。それを通じて自分が成長していく。人間はリスクを取ってチャレンジする環境に身を置かなければ成長できない。最も成長スピードが速いのは起業家とも言える」。

「社会にインパクトを与えたい」働き方改革、1時間のスポットコンサル事業を展開
株式会社ビザスク 取締役 CEO 端羽英子 氏

端羽氏の起業に至るまでの人生は、まるでジェットコースター のごとく高速(短期間)で変わる。

1.「プロになりたい」という意識が人一倍強く、プロを目指せるゴールドマン・サックス証券に入社したものの妊娠がわかり1年足らずで退職。専業主婦として子育てしながらUSCPAを取得。復職先として外資系メーカーの経営管理の職に就くが夫の留学のため 1年半で退職。自身もMITでMBAを取得。離婚を経てユニゾンキャピタルへ入社。最初から5年と決め起業の準備に乗りだす。

閃き型ではなくボトムアップ型と自らを分析。身の回りのこと、困っていることから起業のアイデアを100個書き出すことから始めた。インターネットを使って仕事の受発注ができるクラウドソーシングに興味を持ち、ビジネスアイデアの相談者としてビズリーチのビジネスを成功させた南壮一郎氏を紹介される。氏の苦言と高い熱量に驚くが「私の熱量は南さんによって高く設定されたように思う」とどこまでもポジティブ。さらに同じくビズリーチの永田氏からも厳しい指摘を受けたが、それを大きなビジネスヒントに変えた。

「私、この1時間にお金を払えるわ」。必要な時に必要なアドバイスが手軽に受けられれば便利だ。従来型のコンサルティングや研修のサービスに払いきれていない、ピンポイントの相談事や調査へのニーズはあるはず。いろいろな知見を持っている人たちがコンサルの担い手として働くことができるようにと、ビザスクを創業。

2.とにかく前向きな人。資金調達でVC回りをしても「リーダーシップが足りない」と言われ惨敗。経済産業省が毎年いくつかの事業者を選び人材サービスの普及を後押ししている取り組みに応募し、見事に13年度の事業の1つに選ばれ2000万円を得た。これをきっかけにエンジニアを採用、ビザスクの正式版をスタート。再度資金調達に乗り出し成功する。

3.「高速で失敗する」…「起業しようと人生をプランニングしてきたわけではない、いろんなことをしてきました。振り返るといろんなものが線でつながっています。それが今に至っています。やっているときはどこに向かうのだろうと、先のことを考えてすべて決断してきたわけではない。なぜもっと早くビザスクを思いつかなかったのかと思う。転んでもただでは起きないタイプ。たとえ失敗してもゼロよりマイナスになることはなかった」。決断するときは失敗しても何とかなる、とどこまでもポジティブに考えられるところが道をつくる突破力だ。

東大在学中に起業 家庭用ロボットを開発する
ユカイ工学株式会社 代表 青木俊介 氏

1.大学に入ったらインターネットについて学びたいと考え、東大に入学後、ホームページの制作やプログラミングにどっぷりつかった生活をスタートする。

2.インターネットで世の中が変わる、国境がなくなる。そんな熱狂の時代が到来しているが大学の生活はそれとは無縁。このままでいいのかと焦りがあった。しかしアルバイトで覚えた程度の知識でインターネットの高度な技術があるわけではなかった。「(なにかを立ち上げたい、起業したいが)どうしたらいいのか、暗黒の時代だった」。

3.大学2年で出会った同じくベンチャー志向の猪子氏と一つのアイデアを思いつく。青木氏は開発を、猪子氏は営業をという役割分担をし、それぞれベンチャー企業へもぐりこみ経験を積んだ。それと並行して自分達でもプロダクト開発に取り組んだ。

4.チームラボを立ち上げ、目の前にきた仕事をやっていくと次第に実績が出ていった。「結構仕事があるなという手ごたえが出て来た」と、02年に株式会社へ。チームラボでの仕事は技術的に面白くやりがいがあったが、反面物足りなさを感じた。ソフトウェアだけではパソコン画面の外へ影響を与えない。AIやロボットを作りたいという想いに駆られた。ハードウェアを作るハードルが下がったこともありロボットを作ることが小さなブームになっていた。「自分にも可能ではないか。今やらないと乗り遅れるぞ」そんな思いを強くし、チームラボを退職、ロボットと密接な関係があるAIを学ぶため上海へ留学。1年はAIの授業に集中したが、後半は独立行政法人の情報処理推進機構が実施する「未踏事業」で採択されたロボット開発のため、日本と中国を行き来する。個人事業としてユカイ工学をスタート。ロボットを作りたいという人は多い。しかしそれをビジネスにしたい人はほぼ皆無。ならば自分でやると。

5.2年連続で「未踏事業」に採択され、開発費として得た出資金600万円を元手にロボットを作る週末プロジェクトからスタート。2回目の未踏事業で「人とコミュニケーションが取れるのがロボットの本質」と知り、青木氏はそこに強く影響を受けた。そして今は、ロボットが単体ではなくネットワーク、クラウドにつながるのが前提になった。「日常生活に溶け込むロボットを作りたい。人の状態を予測して必要なサポートをする、空気が読めるロボットを作りたい」。それが青木氏の軸になっている。

「マイペースで、起業家としてがつがつしていない」青木氏が起業を目指す人へおくるアドバイスは、
「未踏事業の開発プロジェクトはPMの権限と責任が明確。面白いと思えば相当とんがったプロジェクトも進めることができる。テクノロジーをもとに起業したいエンジニアには勧めたい」。「仲間がすごく重要である。仲間と一緒に起業することが大事。何かビジネスアイデアを思い付いたら、まずは身近な人を説得するのが最初のステッップ。身近な人を説得できずに投資家からお金を集めることはできない。仲間がついてきていることが起業家の信用になりアイデアの価値になる。ひとりじゃ無理だから」。

STARTUP(スタートアップ) 起業家のリアル 出版社:日本経済新聞出版社
村山 恵一(著)
大石 順子
株式会社アクシアム
 エグゼクティブ・コンサルタント
大石 順子

大学卒業後、日系消費財メーカーに14年間在籍。その後、マーケティング・コンサルティングファーム、人材育成コンサルティング会社にて、顧客視点のマーケティング(リサーチ&商品開発)、新規事業戦略立案や新商品開発、CS調査・課題解決に携わる。2005年、アクシアムに参画。自らの展望を叶え、現職へ「展職」を果たした。“転々とする転職ではなく展望ある転職=「展職」を”という理念のもと、約10年間、キャリアコンサルタントとしてハイエンド人材のキャリア形成をサポート。キャンディデートひとりひとりの展望を実現すべく、その思いに寄り添った丁寧かつ的確なコンサルティングを提供中。

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