転職コラム転職市場の明日をよめ

四半期ごとにお届けする転職市場動向。アクシアム代表・キャリアコンサルタントの渡邊光章が、日々感じる潮流を独自の視点で分析しています。

2001年 10月~12月 
2001.10.01

Firing&Hiring
激動する労働市場で勝ち抜くためには

日系企業のリストラが急速に進んでいます。9月にはほぼ一週間の内に日本を代表する企業が次々に前例のない規模で雇用の整理を発表しました。延べ10数万人の雇用の整理です。しかし、これに対して、地元の会社や関連企業からの受け入れ要請が殺到したのも事実です。景気の下降局面においては企業の規模を絞り込む企業が多いのが常ですが、ここを人材強化のチャンスと捕らえて、流出した優秀な人材(流出した人材を優秀と見るか?についての議論はやめておきます。)を確保する企業もいます。そして、その雇用を整理すると発表した企業でさえ、Eビジネス等のIT系新規事業では人材不足で積極的に採用しています。ファイアリング&ハイアリングはリストラクチャリングと密接な関係があります。この種は企業を縮小するのでなく、健全化・適正化することを意図しているために「良いリストラ」と呼ばれたりします。

景気の下降局面では、世の中職が少ないと考えがちですが、新聞の日曜版は就職欄だけ活況で、アクシアムには例年にも増して新しい性質の職の募集が相次いでいます。一体どっちなのでしょう。少なくとも求人ニーズは(金融機関を除いて)冷え込んではいません。これは企業が次の活力を求めている証拠かもしれません。

企業は生まれ変わろうとしていても、肝心の人材はどうでしょうか?自己変革のセミナーが活況とも聞きますが、新たなスキルや分野に挑戦する“意欲”だけでなく“能力”を持っている人はどれくらいいるのでしょうか。

思うのは簡単ですが行動が伴うかどうか、これが受け入れる企業にとっては大事です。言葉だけでなく、きちんと新しい仕事が出来る、このような“自己変革力”“達成能力”がかつて無いほど要求されています。この変化の激しい時代、柔軟に自己を環境に適応させて、変革していける人材は何かコアを持っている人材と同様に重要になってきていると思われます。しかし、この柔軟さを勘違いしてはいけません。組織になじむというのを仲間意識や、事なかれ主義などの従来の甘えの構造を作り出すような組織への柔軟性でなく、指摘するべきところは360度評価で部下からも指摘され、それを真摯に受け止め、自己の成長とし、個々とチームのパフォーマンスを最大化させるようなそんな懐の深さが要求されています。

あなたは自己変革派、コアスキル派、それともゼネラリスト派、そのように考えると次はそれをどう活かすかにつきあたります。ここでもキャリアデザインとマネジメントの重要性が浮かび上がってきます。

キャリアをデザインした事ってありますか?デザインにも流行の一過性のものや普遍的な骨太のものなど色々です。同時にデザインをするにも構図やデッサンのような基礎技術が重要です。

キャリアをデザインし、それを実現に向けてマネジメントしていく。そんな姿勢があれば、ファイアリング・グループではなく、ハイアリングのグループに自然と入っていくのではないでしょうか。

関連情報

コンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)