転職コラム転職市場の明日をよめ

四半期ごとにお届けする転職市場動向。アクシアム代表・キャリアコンサルタントの渡邊光章が、日々感じる潮流を独自の視点で分析しています。

2001年 7月~9月 
2001.07.01

キャリアに時間の概念が必要か

いきなり手前味噌な話になりますが、アクシアムの新しいキャリアマネジメントサイト新展地がオープンしました。このサイトは企業からスカウトが来るということが一つの主な機能になっています。今回はこの話題(スカウト)に絡めて考えたいと思います。

スカウトが来る人ってどのような人か皆さんは考えたことがありますか。いつもスカウトをもらう人、昨年はたくさんもらっていたが、最近スカウトの話が来なくなった人、今まで縁がなかったが急に最近その手の話が多くなってきた人、様々なタイプが現在のジョブ・マーケットにはいそうです。

この“スカウトが来る”というのは偶然なのでしょうか。意識してスカウトを来るように自分の環境を統制している人がいるのでしょうか。この点についてはおそらく正解は一つではないでしょう。一度スカウトの話を持ってきた人と定期的に連絡をとるようにしている人などは、後者でしょうし、他の場合、スカウトする側には理由があっても個人の側からは偶発的に思えるような状態があると思われます。

あたり前の話ですが、スカウトが発生するにはその裏に企業にある需要があります。簡単な例では、システムなどでは最新技術を駆使する人へのスカウトはその技術が注目されると急激に増え、それまでの技術についての需要は急激に減り、スカウトの対象も変わってきます。つまり、“時”という時間の概念がスカウトという行為自体を決定する重要な構成要素と考えられます。

ジョブマーケットにおいて企業では“買い時”、個人では“売り時”という事も出来ますが、それではキャリアを展開するにはお互いの売り時を見極めて一番良い値段で売れる(買える)ようにしましょうというような安直な考えに陥ります。これが、所謂“転職者= Job Hopper”を生み出してしまうことになる源泉でもあると考えます。

キャリアディベロップメントでは「展望」、「職務に根ざした能力」、「経験と実績」、「知識やその他の資格要件」のバランスが必要です。自分が今中長期的な人生の中でどのようなステージにいるのかという“個人の時間”という概念と経済・産業の環境と雇用の需給バランスという“社会・会社の時間”という二つの軸の間でバランスをとり、選択をすることが要求されてきます。

この時間のうち、自分がコントロールできる統制可能要因と自分ではその流れをコントロールすることが極めて困難である統制不可能要因にわかれてきます。もちろん個人がコントロール可能なのは個人の時間です。では“スカウトをされるタイミングをコントロールする”ことは出来るのでしょうか。これが出来れば、自分のキャリアをほぼコントロール出来るといっても過言ではないでしょう。果たして、どうやってやるのか。そもそも出来るのか。その一つの答えが6月11日にアクシアムが主催しましたキャリアフォーラム「展職ノススメ」にありました。

7人のパネラーは各々の分野で“展職”を実践し、成功を重ねている我々の“展職”とういコンセプトを体現する方たちですが、その展職の体験を語ってもらう中でおもしろい発見が共通して見ることが出来ました。

彼らの多くが“展職”はほとんど偶然ともいう事が出来、決して何年も前から用意周到に準備して、そのシナリオ通りに事を運ばせていないという発見がありました。しかし、唯の偶然“たまたま”ではないことが話の中で判明してきました。

確かに彼ら・彼女らに起こったことは偶然性が高いものですが、よくよく思い起こすとその偶然を生み出すための、布石となるような“行動”を必ず起こしており、その行動があって初めて生まれた“偶然”であることが共通していたのです。

改めて行動をすることの大切さが確認された場でした。スカウトのタイミングをコントロールすることは難しいかもしれませんが、将来スカウトをうけて然るべき状態にしておくこと、常に自分のキャリア開発を心がけ“実際に行動すること”は今からでも出来ます。将来の適時を逃さないために、今から意味ある行動をする。それを心がけて行動を起こしてみませんか。

関連情報

コンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)