転職コラム転職市場の明日をよめ

四半期ごとにお届けする転職市場動向。アクシアム代表・キャリアコンサルタントの渡邊光章が、日々感じる潮流を独自の視点で分析しています。

2014年1月~3月 
2014.01.06

グローバルキャリアと成功につながる5つのポイント

年の初めに2つのメッセージをお伝えしたいと思います。1つ目は「グローバルキャリア」と呼ばれる得体の知れないブームについて。2つ目は「求人ニーズに合致した人」と「合致しない人」との分かれ目についてです。

まず、1つ目の「グローバルキャリア」と呼ばれる得体の知れないブームに関してですが、グローバルキャリアを目指す人が多くなっていることについては、全体として日本の国益にプラスとなるはずです。問題はその中身だと思っています。

海外留学を目指す人が増えて欲しいと思いますが、ただ単に海外勤務を目指す人が多い事には苦言を呈したいとも思います。海外に挑戦すると言うのは夢があって良いでしょう。確かに海外で苦労して成功した人の話は美談でしょう。

しかし、徒手空拳で海外に挑んだ人が不動産で大成功したとか日本ブームに乗って成功したというのは、万に一つの成功例でしかありません。自分の能力も磨かず、日本の事も語れない、単に海外旅行のように、未知の世界に行く事だけが目的化した人や、ただブームに乗っている人が増えていることが大きな問題だと感じています。欧米を目指すと英語力での劣等感が生じ、また、円安の影響もあるためか、アジアを目指す人が増えています。アジア市場に挑戦することには肯定的ですが、それでもやはりしっかりとしたスキルや英語力、そして日本人として最低知っておくべき見識や歴史観は持っておかないと、ビジネス上でも、現地の人達とのコミュニティーを築く上でも不足や不都合が生じます。

未熟な状態で、安易に海外を目指すことには反対です。そしてなにより、ブームにのった「グローバルキャリア」を目指す人へ苦言を呈したいと思います。日本の労働市場ではいつも一過性のブームが生じます。M&Aが流行ればM&A熱、金融バブルや不動産バブルの時期には不動産ビジネス熱、他にもITビジネス熱や再生ファンド熱、ソーシャルビジネス熱、などなど、数年に一度起こるこれらのブームに乗っただけのキャリアを志向する人達は、一時的には成功を収めても、その後ブームが去ってしまうと自分のコアや中核となる強みを見失うだけではなく、次の目的すら見失ってしまいます。

やっかいなことにブームの渦中にいると、どうしても客観的に自分のキャリアを分析する事ができなくなってしまうように思います。結果に関わらず、チャレンジすることも起業家精神旺盛なことも結構なことなのですが、ブームが去った後、自分を見失うことや後悔がないように、自分の力を客観的に見ずに闇雲に飛び込むのではなく、後先の事も考えてみましょう。

単に海外で過ごしたというだけでは、数年後、日本に戻ってきて再就職できるだけの力を備えているとは見なされません。周りが反対しても決断や決心ができることは、日本人には少ない貴重な資質ですが、その資質を無駄にするような、成長のない単なる海外勤務は自己満足でしかなく、誰のためにもならないどころか、自分のためにもなりません。情熱だけではなく、冷静な自己分析をすれば、ブームに乗っているだけの自分に気付けると思います。

失敗しても挑戦しろという意見もあるでしょうが、今一度、グローバルキャリアとは何なのか考え、自分がなぜそのグローバルキャリアを目指すのか、自問自答してみてください。それに答えがないのであれば、それは単にブームに乗っているだけです。単に未体験の海外に挑戦したい。それだけでは理由、動機として不十分です。

2つ目の「求人ニーズに合致した人」と「合致しない人」との分かれ目に関しては、労働市場に出た場合に、「インタビューの機会を得ることも多く、その中からオファーを複数もらえる人」と、「インタビューの機会もほとんどなく、オファーを全くもらえない人」が二極化しているというお話です。

もちろん全体として若い人の求人は多く、年配者を対象とした求人は少ないのですが、若い人でも年配者でも、二極化はしています。50歳以上の求人が激減していることは一昨年あたりからお伝えしているとおりなので、ここでは言及しませんが、50代以上の人については以前ならオファーを沢山もらえたような人までが、インタビューの機会すらなかなか得られないようになってしまいました。しかし、それでも極少数の人は50代でもオファーが得られる人は必ずと言っていいほど、複数社からオファーを得られるような傾向があります。

ここでは、オファーを沢山もらえる人の傾向を次のようにまとめておきたいと思います。「マーケットバリュー(市場価値)のある人とはどのような人なのか?」ということです。前述のブームに乗っただけの人はそのブームの時には市場価値があるかに見えますが、ブームが去ると市場価値を失ってしまいます。人生は長くもあり短くもあるので、くれぐれもそのようなことがないようにしたいですね。以下、今年転職活動を開始する人も、将来の展望を考えている人にも参考にしていただければ幸いです。

  1. 自分を知る
    1. 自分が本当に好きなことを知っているし、自己評価のみならず他者評価もあわせて正当に自己分析ができている。性格、能力、強み・弱み、価値観など、現状を過不足なく理解している。現状の自分と将来やりとげたい事が分かっているので、人生を集中できる。一見無駄に思える経験ですら、成功につながる人もいますが、それは本当に好きなことに時間を集中できるからだと思います。
  2. 長期の人生プランよりも数年程度の現実性
    1. 人生設計があればそれも良いが、非現実的な単なる願望でも幻想でもなく、現実直視の考え方をもっている。なぜそれをやりたいか、やれるか合理的な説明が可能。周りも納得できるキャリアプラン、志望動機は、周りも応援、支援しやすい。ゆえに成果を生み出しやすいのです。
  3. 社会の流れを巧みに見抜いている
    1. 自分の業界、職種だけから、社会の流れを見ないで、異業種、異職種の目や、大局的な視座をもって社会の流れを見つめている。そのため自分の立っている業界、職種、職責の土台が盤石なのか、揺らいでいるのか、崩れる可能性があるのか、あるいは地割れが起きているのか、隆起し始めているのか判断できるし、万が一の場合に、不確実性に対して対応策を講じている。また、ブームを追いかけているのとブームよりも先を走っているのとの違いも大きいです。
  4. 学校、会社、役職、年収を自己表現に使わない
    1. 何ができる人なのか、何を成し遂げた人なのか、例えそれが失敗でも成功でも自分の言葉で説明が可能。ほとんどの人は学校、会社、役職、年収をもって自分の経歴を説明します。しかし成功者はそれを使わずとも、自分を表現することができます。
      例えば、ビジネスで成功したという説明は、学校を出たからそれができるなどでは説明できません。もちろん、学校や職歴から学び得た知識やスキルもあるでしょうが、実践で何を成し遂げたと言う事を伝えることができれば、知識、スキルを持っていることがより証明できます。最近、自分のブランド化ということが良く論じられるようになりました。ブランドとはユーザーにとってのインサイト、信頼であり、期待です。労働市場でのブランド化とは、会社、組織に埋没しないで自分の価値、正味成分を分かりやすくすること、必ずやってくれそうと思えることです。パッケージだけ良くすることではありません。中身が機能してくれるかどうか、その機能に期待できるかどうかが判断基準となります。労働市場でブランド化するというのは簡単なことではありません。
      採用者は、パッケージを見破ります。高学歴でも失業する時代というのは、学校名がただのパッケージとなってしまったことを意味します。
  5. 人的なネットーク
    1. 重要な判断の際に成功者にあわせた助言ができる機会を提供することができるメンターや真の友人を持っている人達。 利害関係者を沢山知っている人が人脈のある人ではありません。また、このSNS時代に沢山つながっているというだけではありません。生産性のある助言は、時として苦言であり、苦しい時には心の支えであるかも知れませんが、普遍的な法則とも限りません。成功者には、人生の重要な選択に際して、その人の人生のページを開いてくれるメンターや友人が数人程度いるようです。

このたった5つのポイントが、私達が転職市場で成功している人達に見出した共通点です。ここでいう人生の成功者とはその人にとって、人生が苦しい事があっても楽しい事があっても幸福だという意味です。就職に人生の幸福論をもちこむ必要がないのかもしれませんが、人は誰でも幸福になろうとして人生や職業選択をするはずなのに、選択で後悔する人もいます。私達は、常に、その選択で不幸にならないようにしてほしいと願っています。

成功した人は、よく「たまたま運が良かった」と言います。それは選択がたまたま良かったと言っているわけですが、選択が成功につながるには必ず5つのポイントがあったと言うことになります。

コンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)