転職コラム転職市場の明日をよめ

四半期ごとにお届けする転職市場動向。アクシアム代表・キャリアコンサルタントの渡邊光章が、日々感じる潮流を独自の視点で分析しています。

2016年10月~12月 
2016.10.06

景気が良いときに転職すべきか? 悪いときに転職すべきか?

有効求人倍率は引き続き1.37倍と、2009年以降上昇を続けたままで極めて高く、完全失業率も3.1%と先進国の中でとりわけ低く、21年ぶりの低水準となりました。現在、日本の労働市場は非常に恵まれているように統計上は見えます。ただ就労の内容を見てみると、前年同月対比で正規の職員・従業員は0.7%しか増加しておらず、3353万人。一方で非正規は2028万人(2.8%増)、パート985万人(4.6%増)、アルバイト407万人(1.9%増)と、それぞれ正規の職員よりも顕著な増加を示しています。

全体の雇用指数は概ね好調を示しているものの、決して正社員の失業、キャリアの失速というアクシデントが解消されたわけではありません。一人一人が自分のキャリアについて、しっかりと考えなければならない時代といえます。

社会全体に目を転じると、個人消費は相変わらず伸び悩んでおり、景気が回復してきたと感じられる人はあまり多くない状況です。金融関係者の中では、CRB指標が昨年からリーマンショック時よりも下回っていることについて、危惧する声が聞かれます。

転職市場では、金融機関から離職する人たちが見受けられ、採用を控える金融大手機関が出てきました。それと対照的なのは、コンサルティング業界。求人の多さでは、バブル期を彷彿とさせるほど過熱気味の印象です。事業会社については、業界の枠を越えて人材の争奪戦が始まっているようです。ITに関する技術・知識をコアとする優秀な人材を、通信や家電業界はもちろん、ヘルスケア、自動車、新産業(ロボット、メディカル、エネルギー)などすべての業界が必要としている感があります。この種の人材については、コンサルティング業界もしかり。業界毎に将来性云々を語るという見方そのものが、今後はナンセンスになるのかもしれません。

景気が良いときに、転職したほうがよいのか?
景気が悪いときに、転職したほうがよいのか?

いま多くの人から、このような質問を受けます。これらの質問からは、将来への不安がぬぐえない閉塞感が見て取れます。このような思いは、日本の経営者から社員、老若男女に蔓延しているようです。一日も早く、政府が景気刺激のための助成金やばらまき施策だけではなく、将来の日本の産業イメージ、日本の在り方そのものに対するビジョンを提示することを願ってやみません。識者の中には、同一労働・同一賃金を提唱する人が出てきましたが、筆者もこれには賛同します。同じ仕事をしていても年齢とともに賃金が上がっていく日本の賃金モデルは、人口増加に伴う実働人口が豊富で、GDPが成長基軸に乗っている場合だけのモデルだからです。

さて、少し脱線しましたが、「景気が良いときに、転職したほうがよいのか?」「景気が悪いときに、転職したほうがよいのか?」というご質問に対する答えは、過去3回の経済的なクラッシュをみてきた筆者としては、以下のとおりです。

これまで転職したことがない人であれば、景気の良いときに転職活動をすべきです。転職しろとは言いません。実際に転職活動を始めてもオファーをもらえないこともあるでしょう。オファーを得られれば、その時に本気で全身全霊をかけ、現職を続けるか転職するか、考えてみるやり方もあります。これは年齢に関係なくとれる方法です。

転職経験があるのであれば、景気の良し悪しより先に、重視すべきことが出てきます。それは年齢です。32歳以下の方なら、景気が良くても悪くてもチャンスは必ず多数存在しますので、将来にわたるキャリア資産(スキル・知識・実績など)が得られる機会を色々と探ることをお勧めします。32歳から38歳までの方は、ご自身がやりたいこともやれることも定まってきているはずですから、ご自分の展望に合致するなら、たとえ景気が悪くとも、臆することなくチャンスをとらえるべきでしょう。しかし38歳以上の場合は、「景気が良いから」「求人があるから」というだけでは、転職すべきでないことが多く見受けられます。ご自身の会社の状況、これまでの経験職種、年齢を合わせてよく考え、慎重に答えを出すべきです。

景気の先読みができれば、転職は遥かに楽です。しかしながら、景気とは不確実なもの。景気が良いから転職が成功するというものでもありません。景気が良い時期が長く続くと、リスクに鈍感になる人もおられます。好景気に大手に転職できたとしても、その大手企業が買収されてしまうこともあります。好景気に外資系企業で役職を約束されたが、経済的なクラッシュが起き、日本を撤退することになって職を失ったというケースもあります。一方で、景気が良いときに大胆に職種チェンジを行い、見事に新しい職能を得る人や、ベンチャーに転職して大企業では得られない管理者経験を積んでスキルアップをし、経営者になっていく人もいます。

肝心なのは、自分の足元をしっかり見据え、政府の方針や会社の方針だけに依存せず、自分なりの人生の脚本を描くこと。そのような人こそ、他人に人生を操られることなく、自信をもって自らの人生を歩んでいけるのだと思います。

コンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)